訪問看護とは?利用条件・費用、サービス内容を解説
2022.12.12
訪問看護とは看護職員が利用者の自宅に訪問し、健康悪化の防止や回復を目的とした援助や治療を行うことです。
看護職員の就業場所で過半数を占めているのは病院です。しかし、病院を退職して訪問看護の世界で働いている方もいます。一般的に訪問看護は病院より収入が低いといわれますが、病院にはない魅力があります。
この記事では、訪問看護を利用したい方や、訪問看護の仕事に関心がある方向けにその魅力を紹介します。
目次
訪問看護とは?
訪問看護とは、看護師や理学療法士、作業療法士などが居宅を訪問して病気や障害を持った方の健康悪化の防止・回復を目的とした援助・治療を行うことです。
訪問看護を利用することによって子どもから高齢者まで援助や治療が必要な方が、自宅に居ながら医療的ケアを受けられます。
訪問看護で受けられるサービス内容
訪問看護では、障害や病気に応じて以下のサービスが受けられます。
- 健康状態の観察
- 病状悪化の防止・回復
- 療養生活の相談とアドバイス
- リハビリテーション
- 点滴、注射などの医療処置
- 痛みの軽減や服薬管理
- 緊急時の対応
- 主自治・ケアマネジャー・薬剤師・歯科医との連携
など
訪問看護の回数
訪問看護の回数は、介護保険を利用する場合と医療保険を利用する場合とで異なります。
介護保険を利用する場合の回数は、ケアマネジャー作成のケアプランに基づいて決められます。なお、支給限度額超過分は全額自己負担となります。
医療保険を利用する場合の回数は、週3回までです。ただし、厚生労働省が定める疾病等や特別な管理を必要とする場合は、週4回以上の利用も可能です。
訪問看護の利用条件
訪問看護の利用条件も、介護保険と医療保険のいずれかによって異なります。
【介護保険】
- 65歳以上の要支援・要介護認定を受けている方(第1号被保険者)
- 40~64歳の方で介護保険上の「特定疾病※後述」による要支援・要介護認定を受けた方(第2号被保険者)
【医療保険】
- 医師が訪問看護の必要性を認めた方で、要支援・要介護に該当しない方
- 介護保険の対象者であっても厚生労働省が指定する難病を持つ方
いずれの場合も、主治医の「特別訪問看護指示書」が必要となります。なお、上記の保険を併用することは不可で、両方の条件を満たす場合は介護保険を優先して利用することになります。
訪問看護の利用にかかる費用
保健種別 | 要件 | 自己負担額 |
---|---|---|
介護保険 | 65歳以上の要支援・要介護認定を受けた方 | 月額の1割 (一定以上の所得者は2~3割) |
40~64歳で特定疾病による要支援・要介護認定を受けた方 | 月額の1割 (一定以上の所得者は2~3割) |
保険種別 | 要件 | 自己負担額 |
---|---|---|
医療保険 | 未就学児 | 月額の2割 |
義務教育就学児~70歳未満 | 月額の3割 | |
70歳以上75歳未満 | 月額の2割 (現役並み所得者は3割) | |
75歳以上 | 月額の1割 (現役並み所得者は3割) |
【自己負担例】
訪問看護ステーションからの訪問看護を週1回、1時間利用した場合
- 介護保険(1割負担)約823円/回
- 医療保険(3割負担)約3,000円/日
訪問看護の提供機関は5つ
訪問看護の提供機関は主に5つあります。
訪問看護ステーション
訪問看護ステーションとは、看護師や理学療法士、作業療法士が所属する事業所のことです。この事業所を起点とし、利用者宅を訪問します。
看護小規模多機能型居宅介護
地域密着型サービスの一つで、訪問看護に訪問介護、通所介護を一体化したサービスです。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
地域密着型サービスの一つです。訪問看護と訪問介護のサービスが一体化しており、要介護者に対し24時間体制で看護・介護サービスを提供します。
民間の訪問看護サービス
民間の企業が行う公的保険外のサービスのため各種保険は適用されませんが、訪問看護ステーションが提供する訪問看護と同じように、看護師による訪問看護が受けられます。
保険医療機関
病院やクリニックで訪問看護部門を設けることで、保健医療機関から訪問看護サービスを提供しています。
介護保険法のみなし指定訪問看護事業として扱われ、介護保険や医療保険の利用が可能です。
【利用者向け】訪問看護を利用するメリット
訪問介護を受けることによって以下のようなメリットが得られます。
専門的なケアを自宅で受けることができる
国家資格を持った医療職のサービスが自宅に居ながら受けられるメリットは、利用者にとっても家族にとっても大きいといえます。経験豊富なプロの力を借りることで利用者のQOL向上が期待できます。
家族の介護の負担が減る
専門知識を持たない家族が、適切な医療ケアを行うことは現実的ではありません。訪問看護サービスを利用することで、身体的・精神的負担が軽減されると同時に安心感を得ることができます。
【利用者向け】訪問看護を利用するときの注意点
利用者と訪問看護師との相性が合わず、利用者やその家族がストレスを感じる場合があります。そういった場合、訪問看護の提供元に看護師の交代を相談することをおすすめします。
また、病院と比較した際、医療機器など設備面で訪問看護が劣るのはやむを得ません。障害や疾病によっては、訪問看護では対応できないこともあることを認識しておきましょう。
訪問看護サービスの利用には、先述の提供機関を通す必要があり、提供機関との契約時間外に訪問看護サービスは原則的に利用できません。時間外の対応はどうするか、事前に決めておく必要があります。
なお、要介護認定が下りるまで1か月ほど要するため、訪問看護の利用を待たされることがあることにも注意しておきましょう。
【看護士向け】訪問看護師として働くメリット
訪問看護師として働くメリットは主に2つあります。
勤務時間の融通が効きやすい・柔軟に働ける
在宅の方向けの訪問看護は、直行直帰が可能で夜勤もありません。自分の都合の良い時間に合わせて働くことができる点がメリットです。
人間関係で悩むことが少ない
勤務時間中は一人の利用者に対してケアをするため、利用者や家族との信頼関係が築けていれば、人間関係の煩わしさは少ないです。複数の職種や職員、利用者を相手とする施設勤務とは大きく異なります。
【看護士向け】訪問看護師として働くときの注意点
訪問看護師は、勤務時間外のオンコール当番を交代制で担当しなければいけません。夜間帯でも電話が鳴ったら対応しなければならず、当番の日は休んだ気がしないという話をよく耳にします。オンコール対応の頻度や、何名で当番を回しているのかを気にしておくと良いでしょう。
また、複数の看護師がチームを組んでケアを行う病院とは異なり、訪問看護は自分一人で利用者のケアを担当するため責任が重いといえます。頼れる看護師が近くにいないため、緊急時の迅速な判断と対応力が求められます。
日本看護協会の「2020年病院看護・外来看護実態調査」(※)および厚生労働省の「令和2年度 介護事業経営実態調査結果」(※)によると、訪問看護ステーションの看護職員の平均給与は病院勤務の看護職員の平均給与に比べて約12万円高いことが明らかになっています。背景としては、訪問看護の仕事がハードで敬遠されやすいことが考えられます。なお、通所介護施設など夜勤がない施設の訪問看護職員の給与は夜勤手当が付かないため、提示金額を下回ります。
常勤看護職員(非管理職)平均給与の比較
平均基本給 | 平均給料 | |
---|---|---|
訪問看護ステーション | 269,811円 | 440,368円 |
病院 | 244,587円 | 318,916円 |
(※)参考:日本看護協会「2020年病院看護・外来看護実態調査」
(※)参考:厚生労働省「令和2年度 介護事業経営実態調査結果」
訪問看護とその他のサービスの違いとは?
訪問看護とよく比較されるその他のサービスとの違いを解説します。
訪問介護との違い
訪問看護職員は訪問介護職員と協力しながら、利用者のケアを担当します。最も大きな違いは、医療行為ができるかできないかです。
摘便や褥瘡(床ずれ)の処置など、医療行為に該当するものに関して訪問介護で行うことが禁止されています。
在宅介護との違い
在宅介護との違いは。ケアに関して知識や経験を持たない家族が介助者となる点です。不適切なケアによって、要介護者の状態を悪化させるだけでなく介助者も精神的ストレスを抱えやすくなります。
常に家族だけで見守り続けることは不可能なケースが多いため、介助者の不在時には訪問介護や訪問看護を利用するのが一般的です。
まとめ
超高齢社会に突入し高齢化が加速する中、在宅医療を推進する動きが報じられています。昨今の社会情勢を鑑みると、今後はますます訪問看護の重要性が増すことは明らかです。
訪問看護では介護保険と医療保険の利用が可能なため、月次請求処理に時間を取られる傾向があります。また、通常の業務に加え、急なキャンセルや予定変更などによるスケジュール変更、膨大な帳票作成や管理も必要です。
そのため、どうしても事務作業に時間がかかってしまい、自分が納得するようなケアができなかったり、残業が発生したりしている看護師の方もいらっしゃるでしょう。
例えば「ワイズマンの介護ソフト」を使うと、煩雑な請求処理や事務作業の負担を大幅に軽減するとともに、医療文書・記録の作成を簡単・スムーズに行うことができます。このような介護ソフトを導入することで、事務作業を効率化でき、これまで事務作業に使っていた時間をケアに使えるようになります。
働いている事業所に介護ソフトが導入されていないなら、業務効率化を図れるように担当者に導入を相談してみましょう。また、これから訪問看護師として働くのであれば、事業所に介護ソフトが導入されているかチェックすることをおすすめします。
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