【名南経営の人事労務コラム】第8回 問題職員の解雇

2022.10.25

問題職員を解雇したい、そんな声は現場の管理者からしばしば出ることがあります。こうした場合の問題とは、言動や素行を指すことが一般的で、その内容は看過できないようなケースもあります。

例えば、利用者(患者)に対して暴言とも受け止められる言葉遣いをしていたり、組織秩序を崩壊させるような言動をしたり、毎日のように遅刻を繰り返したり等、様々なケースがあります。

管理者の立場に立てば、我慢の限界とのことでその職員に辞めてもらうことが組織のためにもなるとのことで解雇を考えることがありますが、問題はその内容や程度です。

通常、職員の解雇を考える段階では、感情が高まっており解雇前提で物事を考えることが少なくありません。そのため、なぜ解雇をしたいと考えるのかという点を紐解くと、些細な内容まで挙げることがあり、その時点で冷静さを欠いていることがわかることがあります。また、中には疑心暗鬼になって「〇〇をやったのはA(氏名)しかいない」等、証拠もなく推測で語っていることもあります。もちろん、複数の背景の1つ1つにおいて些細なことがあってはいけないということではありませんが、労働契約法では、第16条において「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定めています。従って、その背景にある理由には、具体的な理由や根拠は当然必要であり、可能な限り主観を排除して考えていかなければなりません。

一方で、実際に解雇をされるようなケースの当事者から話を聞いてみると、「根耳に水であり、急にそんなことを言われても困惑しかない」といったことを言われることがあります。要は、何も注意や指導もされないので、やってきたやり方は組織において許容されているものだと思っていた、とのことで、なぜおかしいのであれば注意をしてくれなかったのか、と一気に不信が生まれ、意見の食い違いの水掛け論が始まるわけです。

そういった意味では、問題と思われる言動や素行があれば基本的にはその都度注意することが必要であり、かつその指導をした記録についてもしっかりと残しておくことが重要です。もちろん、相手にも言い分があるでしょうから、指導にあたっては相手の言い分も確認しなければならないことは当然ですが、こうした指導の積み重ねは、先の労働契約法第16条において用いられている「客観的かつ合理的な理由」になるものと考えられます。

もっとも、職員の解雇は一緒に働いている職員にとっても辛いものです。問題を抱えている職員といえども仕事を離れれば普通の人であることが多く、いくらその職員に問題があったとはいえ解雇ということで職場の空気感が一気に冷えることがあります。そういった意味では、予めどのような言動等が解雇の対象となるのかということを職員に周知をすることが重要です。特にそれらは就業規則において定めるものですが、採用時のガイダンスにおいて具体的に説明すると同時に、職員としての行動ガイドラインのようなものを策定して職員がお互いに注意をし合えるような環境を構築すると職場内で職員を解雇する事案が生じ難くなることがありますので、採り入れていってもよいでしょう。

服部 英治氏

社会保険労務士法人名南経営 ゼネラルマネージャー

株式会社名南経営コンサルティング 取締役
保有資格:社会保険労務士

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