【医療業界動向コラム】第2回 電子処方箋の概要と補助金が明らかに。 電子処方箋をきっかけにした医療機関との連携のあり方を確認する。

2022.07.12

令和5年1月よりスタートする電子処方箋について、その新たな概要説明(図1、2)と導入にあたっての補助金(図3)に関する情報が公表された。

電子処方箋について病院・診療所向け概要
図1:病院・診療所向け概要
電子処方箋について薬局向け概要
図2:薬局向け概要
医療機関・薬局が電子処方箋管理サービスを導入する場合の補助について
図3:補助について

電子処方箋とはオンライン資格確認の仕組みをベースに、電子化された処方箋を授受できるもの。処方情報が即時電子化されることでリアルタイムで服薬情報などを確認できるようになる。従来のシステムでは、電子処方箋と紐づけられていないことから、服薬情報の確認には約1ヶ月ほど時間がかかって反映されていた。それが、電子処方箋の運用がスタートすれば、重複投薬の確認などが処方の段階、または調剤の段階ですぐにできるようになる。

実際の医薬品の受け取りにおいては、患者はマイナンバーカードもしくは健康保険証を提示することでよいこととなる。従来では、紙の処方箋を持って、紛失しないように、医療機関の近くにあるいわゆる門前薬局で受け取り、帰宅する、というのが多かったが、電子処方箋となることで、紛失のリスクはなくなるとともに、そのまま自宅近くの薬局や、街中にあるドラッグストアを併設する薬局などで日用品を購入してから処方薬を受け取る、ということも行いやすくなる。医薬品を受け取るまでの待ち時間を、ただ待つのではなく、移動やショッピングの時間に変えることができるため、待ち時間という考え方自体もなくすことができるのは患者にとっての大きなメリットとなる。また、自宅近くでの受け取りを選択することで、身近なかかりつけ薬局を持つことにもつながりやすくなるだろう。

2021年8月より、認定薬局制度が始まり、がん等に特化した「専門医療機関連携薬局」と中学校区に1軒を目安に配置する「地域医療連携薬局」が各地で誕生している(図4)。

認定薬局制度
図4:認定薬局制度

また、令和4年度調剤報酬改定では、かかりつけ薬局を評価する「地域支援体制加算」も見直され、拡充している状況だ。こうした認定薬局やかかりつけ薬局には、近隣医療機関との連携や、在宅医療への取組み、地域ケア会議への参加などが求められている。リフィル処方箋の導入、オンライン診療の利便性向上などで、外来診療では非対面診療の機会が増える一方で、薬局との連携強化が重要になってきている。電子処方箋の導入・推進は、病院・診療所にとっても薬局との連携強化の機会にもなりうるものといえる。ただし、今回は電子処方箋の授受に関するものなので、調剤結果を処方元に提供は可能だが、服薬フォロー結果の連絡やトレーシングレポートの送信などは含まれない。

電子処方箋には在宅医療や遠隔診療などでもその効果を発揮することが期待される。その一方で、薬局側にも場合によっては24時間対応など求められることも考えられるとともに、そうした対応ができる薬局が患者からも、医療機関からも「選ばれる」こととなる。薬局においては、「選ばれる」ためにも、かかりつけ機能などの届出や在宅訪問などで医薬品ばかりではなく介護用品や日用品などもお届けできるように製品ラインナップを整備していくことなども選ばれるポイントになると考えられる。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

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