【医療業界動向コラム】第5回 院内掲示物について見直しを
2022.08.09
病院内を改めて歩くと、多くの掲示物があることに気づく。中には同じ掲示物が複数個所に掲示されているものもあったり、かなり近寄らないと読めない大きさの文字のものなどまで、さまざまある。
こうした院内の掲示物については、大きく2つの種類がある。まず一つは、掲示することが義務になっていたり、診療報酬上の要件になっているもの。例えば、入院基本料に関する届出内容の概要などがそれにあたる。また、近年の診療報酬においても院内掲示やホームページでの掲示など増えている。例えば以下の項目に掲示に関する記載があり、厚生局による適時調査等においてチェックの対象となるので注意が必要だ。
- 機能強化加算
- 時間外対応加算
- 地域包括診療加算
- 地域包括診療料
- 後発医薬品使用体制加算
- 外来緩和ケア管理料
- 地域連携小児夜間・休日診療料 等
そして、掲示物に関する二つ目の種類、それは患者への情報発信だ。掲示物でよく感じる課題には以下のものがある。
- 作る側の主観になっていて、患者に伝わりづらい内容になっている。
例)専門用語が多用されている。 - 大事な情報がどこにあるかわからない。
例)高すぎる、または低すぎるところに掲示している。
掲示するということは伝えるという目的を実現するということで、相手に理解してもらえるようにすることが必要だ。しかし、中には掲示すること自体が目的になってしまい、結果、伝えるべきことが伝わっていない、ということが起こりがちだ。そこで、今回は掲示物について改めて考えてみたい。
確認のポイント① 掲示物の内容について
意識したいポイント
- 誰に、何を訴えたいかが明確か
- 主語、述語、目的語(SVO)で構成されているか
- 来院する対象者に合わせた文字の大きさやイラストになっているか
一言で言えば、ロジカルシンキングになっているか、ということだ。ロジカルシンキングとは、物事を筋道立てて整理して、矛盾のない思考をするもので「論理的思考」と訳される。ロジカルシンキングの発想とは、SVOになっているかどうか、ということだろう。伝わりにくい文章表現の多くは主語が明確ではないものが多い。誰が、誰に対して、どうしてほしいのか、そうした構造になっているのかを改めて作った文章を確認してみよう。
そして、自院の患者層に合わせて、文字の大きさであったり、イラストを利用するなどの工夫をしよう。ところで、注意いただきたいのだが、イラストを利用する際は、アニメのキャラクターなどを利用することには著作権の問題もあるため注意が必要だ。フリー素材集などを利用しよう。また、著作権の関連で言えば、待合室でDVDなどを流している場面を目にすることがあるがこちらも注意が必要だ。
確認のポイント② 掲示の方法
意識したいポイント
- 患者層に合わせて、目の高さに大事な情報が目に入るようになっているか
- 掲示物同士の間隔は適度に開いているか
- 期日など過ぎている掲示物が貼りっぱなしになっていないか
インストアマーチャンダイジングという言葉がある。あまり聞きなれない言葉だと思うが、マーケティングの専門用語で商品やサービスの陳列の最適化を図って、売上を最大化する考え方のことをいう。例えば、ゴールデンゾーン(ゴールデンライン)とよばれるものをもっとも見やすく、手に取りやすい高さに売りたい商品を陳列する、という考えだ。これは掲示物においても同じ。また人の視線の動きは左上からZの文字を描くように見る傾向にあることなども知られている。こうした考え方を活かした掲示物の効果的な貼り方など検討したい。
また、ホームページなどでもよく見かけることがあるが、期日が過ぎたものをいつまでもそのまま掲示したままになっていることなども注意したい。患者に誤解を招きかねない。掲示物やホームページの担当責任者を明確にするようにしたい。
山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員