【医療業界動向コラム】第6回 令和4年10月からの診療報酬改定、答申されるマイナ保険証の活用促進、看護職員等の処遇改善を評価
2022.08.17
令和4年8月10日、中医協総会にて、10月からの診療報酬改定について答申された。その内容は、「療担規則における2023年4月からのオンライン資格確認の原則義務化(紙レセプトでの診療報酬請求が認められている医療機関は例外)」「電子的保健医療情報活用加算を廃止し、医療情報・システム基盤整備体制充実加算を新設」「看護職員処遇改善評価料を新設」の3つとなっている。
「療担規則における2023年4月からのオンライン資格確認の原則義務化」と「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」について確認してみよう。
骨太方針2022では、2023年4月からのオンライン資格確認を原則導入を義務化し、2024年度中には保険証の原則廃止を目指すこととしている(希望者があれば保険証は発行できる選択制とする方針)。この原則義務化の方針は保険医療機関及び保険医療養担当規則で位置づけられるため、紙レセプトでの請求が現在認められている医療機関等においては、療担規則違反となってしまい保険医療機関の取消になってしまうことも考えられる。そこで今回、それらの対象施設についてはオンライン資格確認システム導⼊の原則義務化の例外とすることとなっている。
オンライン資格確認を評価する「電子的保健医療情報活用加算」は廃止となって「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」を新設したが、これまで同様に加算であることに変わりはなく、患者の負担となる。ただ、大きく違うのは、再診での負担が無くなったこととマイナ保険証を利用する患者の負担は軽減されている点。
なお、情報通信機器を用いた場合の初診の場面を想定してか、加算2では、他の医療機関からの情報提供を受けての診療も評価の対象となっている(図1)。
押さえておきたいポイントとしては、院内及びホームページに掲示すること、オンライン資格確認で得られた情報を活用して診療を行うこと、の2点。具体的には、受診時に健診情報と服薬(処方薬)情報について確認することが求められている。
なお、療担規則においてマイナ保険証が原則義務化されたことに伴い、導入をさらに後押しすべく補助の上限額を引き上げている(図2)。電子処方箋も令和5年1月よりスタートすることを考えての対応が求められる。
看護職員処遇改善評価料(図3)については、対象となる医療機関は以下のいづれかであることとなっている。
- 救急医療管理加算に係る届出を行っている保険医療機関であって、救急搬送件数が年間で200件以上であること
- 「救急医療対策事業実施要綱」(昭和52年7月6日医発第692号)に定める第3「救命救急センター」、第4「高度救命救急センター」又は第5「小児救命救急センター」を設置している保険医療機関であること
なお、施設基準(2)には救済措置が設けられている。救急搬送件数は病院側の努力でコントロールできるものではないことや現状のCOVID-19感染拡大という非常事態時の在り方ということも意識しておくことが必要だ。そうしなければ、職員の賃金に影響が出てしまう。そこで、「救急搬送件数が年間で200件以上の基準を満たさなくなった場合であっても、賃金改善実施年度の前年度のうち連続する6か月間において、救急搬送件数が100件以上である場合は、基準を満たすものとみなすこと」と記載された。
ところで、今回の看護職員処遇改善評価料に際して、注目されていたのが賃金改善措置の対象とすることができる職種に薬剤師は加えられるかどうか、という点。これまでの議論でも加えることを検討する姿勢は示されていたが、対象として明記されていない。しかし、「その他医療サービスを患者に直接提供している職種」は対象となる。チーム医療に関する評価で薬剤師が加わっているものや服薬指導管理業務など行っている場合などで対象となるか、注目しておきたい。
山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員