【医療業界動向コラム】第11回 後発医薬品の使用促進策の今を確認する
2022.09.20
令和4年度診療報酬改定が行われ、半年が経過しようとしている。少子高齢社会の進展に伴い増える医療費の抑制に向け、大規模病院における受診時定額負担の拡充やリフィル処方箋の導入、そしてバイオシミラーを含めた後発医薬品の使用促進に対する評価を盛り込んだ内容となっていた。そして、改定後の6月に閣議決定され公表された骨太方針2022を見てみると、外来機能の見直しやリフィル処方箋に関する記載から改定を受けてさらに推進していこうという姿勢がうかがえる。その一方で、これまでの骨太方針では毎回のように記載されていた後発医薬品の使用促進については、バイオシミラーに関する目標設定を今年度中に明らかにすること以外には見当たらなかった。現在(令和4年9月12日時点)に至るまで続く出荷調整等供給不安が主たる要因ともいえる。しかしながら、少子高齢社会の時代は間近に迫っており、一部の地域ではすでに突入していることから、医療費抑制に対する取組である後発医薬品の使用促進を止めるわけにはいかない。なお、後発医薬品の使用促進に関する現在の目標は全都道府県で使用数量割合80%以上となっており、令和6年度から新たに設定される医療費適正化計画において都道府県毎にジェネリックカルテを作成・可視化し、より取組を強化していくことなど検討されている。
本年4月の診療報酬改定では後発医薬品に関する診療報酬の内容が改められている。その内容は、「後発医薬品使用体制加算」と「外来後発医薬品使用体制加算」では、診療報酬点数は据え置かれ、使用数量割合が引き上げられたところ。改定後の変化はどうだったのだろうか。病院を対象とする後発医薬品使用体制加算(図1)の現況をみてみよう。(図2-4)。
使用数量割合の見直しの影響を受け、加算1の届出が減少し、加算2・加算3が受け皿となっているかのように増加していることが分かる。先にも述べたが、出荷調整の影響もあることだが、点数が下がるということは医療機関としては収入が下がることとなる。医療費適正化への取組に少なからず影響を与える事ともなる。また今後注意しておきたいのは、これまでの診療報酬改定の歴史の中で、加算を算定する医療機関数が全体の7割を超えるなど増えてくれば、加算ではなく、減算となることがあるということだ。例えば、栄養管理や褥瘡対策などはかつては加算評価であったが、今では入院基本料の要件の一つとなっている。
なお、後発医薬品使用体制加算は入院基本料に対する加算であるが、外来も含めた病院全体での使用数量割合となる。また、インスリン療法が適応となる糖尿病患者や透析施行中の腎性貧血などで使用されることが多いバイオシミラーも後発医薬品の使用数量割合の計算対象となる。
物価高の影響もあり、光熱水費や食材料費なども高騰し、患者のみならず医療機関も固定費が重しとなってきている。また、本年10月からは一部の後期高齢者の自己負担割合が2割に引き上げられることとなっている。医薬品の仕入れや診療報酬上のメリット、患者にとっての経済的負担軽減を考えても、後発医薬品の使用促進はこうした状況だからこそ絶えず推進し続けていくことが必要だといえる。
山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員