【医療業界動向コラム】第12回 医療DXの推進に向けた初会合、電子カルテの導入促進など話し合われる
2022.09.27
令和4年6月に閣議決定・公表された経済財政運営と改革の基本方針2022(通称:骨太方針2022)に『「全国医療情報プラットフォームの創設」、「電子カルテ情報の標準化等」及び「診療報酬改定DX」の取組を行政と関係業界が一丸となって進める』ことが明記されている。これは令和4年5月に自民党が提言した「医療DX令和ビジョン2030」がベースとなったもの。改めて提言されていた内容のポイントを確認しよう。
全国医療情報プラットフォームの創設
- マイナンバーカードの利用をベースとした患者情報をネットワークを通じて閲覧共有することが目的。
- 自治体や介護事業者との情報共有できる仕組みを構築する。
電子カルテ情報の標準化
- HL7FHIR準拠の標準クラウドベースの電子カルテの開発。さらに、補助金等も利用して、2030年までに100%の導入を目指す。
診療報酬改定DX
- レセコンベンダーが共通で活用できる「共通算定モジュール」の開発・導入による事業者及び病院の負担軽減。
この「医療DX令和ビジョン2030」を推進するため、「政府に総理を本部長とし関係閣僚により構成される「医療DX推進本部(仮称)」を設置する」こととなっている。予定では今秋となっているところ。令和4年10月に第一回を、令和5年3月に第二回を開催する予定だ。一方で厚生労働省は、その推進本部と適宜連携しながら実務を進めていくこととなる。そこで、さる令和4年9月22日に『「医療DX令和ビジョン 2030」厚生労働省推進チーム』初会合が開催され、課題の整理と今後の進め方が主たる話題となった。具体的には、厚生労働省としてはデータヘルス改革推進本部内に「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チームを設置し、議論を進めていくこととなった(図1)。
厚生労働省推進チームは今回を一回目として、本年12月、令和5年3月と開催される予定だ。なお、厚生労働省推進チームは、2つのタスクフォースを設け、月に1-2回の会合を開き、厚生労働省推進チームと適宜連携することとなっている(図2)。その2つのタスクフォースとは「電子カルテ・医療情報基盤」タスクフォースと「診療報酬改定DX」タスクフォースの2つだ。
「電子カルテ・医療情報基盤」タスクフォースでは、電子カルテ情報の標準化(図3)と医療情報プラットフォーム(図4)に関する内容を扱う。この中で電子カルテの標準化については、8月の厚生労働省令和5年度予算概算要求の中に標準型電子カルテに関する調査研究事業などが盛り込まれていた。また、導入促進として本年1月7日の第3回医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループでは医療情報化支援基金の活用する方針について明らかにされたところでその具体的な内容の公表が待たれる。
医療情報プラットフォームについては、診療報酬の後押しもあり、医療機関・薬局におけるオンライン資格確認の導入が推進されていくことが期待される一方で、国民のマイナンバーカードの取得そのものの推進も重要だ。健診情報や薬剤情報、受診歴などもほぼリアルタイムで確認できることや、限度額適用認定証の交付が不要になるなどの事務経費・時間の負担軽減にもつながることなどをもっとアピールすることが医療機関側からも必要だろう。また、オンライン資格確認を利用することは、外部ネットワークへのアクセスともなることから、セキュリティ対策及びクライシスマネジメント(事故が起きた後の迅速な対応で二次被害を防ぐなど)への対応も医療機関側にも必要だ。先日公表された「中・長期的な医療機関におけるサイバーセキュリティ対策」など改めて確認しておきたい。
もう一つのタスクフォースである「診療報酬改定DX」では、診療報酬改定時のソフトウエアの改修、さらに4月診療分レセプトの初回請求までの対応(疑義解釈など)など事業者及び医療機関の負担が軽減できるようなベンダー共通で作業を効率化できるモジュールの導入や診療報酬改定の進め方の検討をすることとなっている。
令和6年度の改定は、診療報酬と介護報酬の同時改定でもある。DXの推進が次回改定でどのように対応されていくのか注目していきたい。
山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員