【医療業界動向コラム】第16回 新型コロナ・インフルンザ同時流行に備えた対応 ~医療逼迫時の対応方針の確認と日常業務の中でワクチン接種を推進する体制を~

2022.10.25

令和4年10月18日、厚生労働省にて「第2回新型コロナ・インフル同時流行対策タスクフォース」が開催され、新型コロナウイルスと季節性インフルエンザの同時流行に備えた対応について、感染状況に応じた対応を広く呼び掛けることが決まった。令和4年10月下旬、減少傾向にあった新型コロナ感染者数の下げ止まりからの横ばい傾向が見えるとともに、インフルエンザの流行の先行指標ともされるオーストラリアにおいては、流行が2カ月前倒しで生じていることを踏まえた対応とも言える。具体的な対応とは、新型コロナとインフルのワクチンについて接種対象者への接種を推進することと、外来受診・療養の流れを明確にすることだ。

外来受診・療養については、重症化リスクが高いとされる「小学生以下の子供、妊婦、基礎新患のある方、高齢者」が対象となるフローと重症化リスクが低いとされる若者を対象としたフローの2パターンがある。なお、ここで注意したいのはあくまでも同時流行の兆しが出てきた段階で呼びかけるもので、医療逼迫などが顕著になった段階で参照していくものである、ということ。同時流行の兆しがまだ見えない現状(令和4年10月21日時点)で利用するフローではないことに注意が必要だ。

重症化リスクが高いとされるパターン(図1)では、速やかな受診が推奨されている。受診先は、発熱外来のある医療機関、かかりつけ医、地域外来・検査センター。なお、ここでいうかかりつけ医とは、特段の定義はないようで、日常的に利用している医療機関を指すもの。

新型コロナ・インフルエンザの大規模な流行が同時期に起きた場合に備えた重症化リスクの高い方の外来受診・療養の流れ
図1:重症化リスクの高い方の外来受診・療養の流れ

一方で重症化リスクが低い若い方のパターン(図2)では、新型コロナの検査キットで自己検査をして、その結果に応じて対応が異なる。陰性となれば、電話もしくはオンライン診療、またはかかりつけ医への受診となる。陽性となった場合は、自宅療養者を支援する健康フォローアップセンターへ連絡となる(自治体及び厚生労働省のホームページに連絡先がある)。なお、自己検査をしなくとも、症状が重く感じたり受診を希望する場合は発熱外来やかかりつけ医への受診を勧めている。

新型コロナ・インフルエンザの大規模な流行が同時期に起きた場合に備えた重症化リスクの低い方の外来受診・療養の流れ
図2:重症化リスクが低い方の外来受診・療養の流れ

ところで、電話やオンライン診療でインフルエンザと診断された場合については、治療薬を処方し、自宅療養となっている。検査は行えないものの、当該地域の感染状況や患者の症状によって医師が判断して処方する、ということになる。繰り返しお伝えするが、この対応はあくまでも同時流行や医療逼迫が起きた段階での対応であることに注意したい。平時での対応ではない。基本は対面受診である。

当日は日本感染症学会から新型コロナ及びインフルエンザを想定した外来診療検査のフローチャートが資料として提示されているので、併せて紹介したい(図3)。

COVID-19およびインフルエンザを想定した外来診療検査のフローチャート(2020年)
図3:新型コロナおよびインフルエンザを想定した外来診療検査のフローチャート(2020年)

当然ながら、新型コロナ・インフルエンザ以外にも扁桃腺炎や肺炎などの発熱をともなう疾患もある。例えば、高齢者の肺炎であれば、病院からの退院時やインフルエンザワクチン接種時などの機会を利用して肺炎球菌ワクチンの有無を確認するために診療記録等にチェックリストを備えて、確認をするようにすることで予防に努めることもできる。在宅訪問においても同様に確認し、ワクチン接種を進めていくことは大事だ。こうしたワクチン接種の機会を日常診療の節目の中で機会を見つけて、提案していくことはこれからの地域医療においても重要であることに改めて気づかされる。疾病予防は、休日夜間の緊急対応減や入院患者の重症化予防にもつながり、それは医師をはじめとする医療従事者の負担軽減、働き方改革にもつながる。とりわけ、人口が少なく高齢者割合の高い地域ほど効果的だといえる。今回だけの対応ではなく、今後も継続した取り組みとしていくようにしたい。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

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