【医療業界動向コラム】第18回 地域医療連携推進法人に新類型を検討へ。横の連携に対する評価の新設の可能性も意識した対応を。

2022.11.08

2025年の必要病床数を目標に進む地域医療構想。人口減少が進む地方都市を中心に、その構想の多くは病床のダウンサイジングや機能転換が求められている。とはいえ、地域住民にとってみれば、これまで利用していた医療機関の機能が変化したり、統廃合に伴い受診先が遠方になってしまったりと不利益が大きくなってしまってはいけない。そこで、地域医療連携を通じた地域住民に対するフォローアップが必要になってくるのだが、もともと経営主体等も異なる医療機関同士、すぐにうまくいくわけでもない。「地域医療連携推進法人」とは、そうした地域医療を守るため、地域医療構想を実現するための手段の一つとして期待されている。令和4年9月末時点、全国に31か所の法人が設立されているところ(図1)。

地域医療連携推進法人の設立事例(設立順)
図1:地域医療連携推進法人の設立事例(設立順)

令和4年10月26日、「第9回地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」が開催され、その中で地域医療連携推進法人制度の見直しについて議論された。この議論は、本年6月に公表された骨太方針2022に記載されていた。今回の議論で明らかにされたのは、従来の地域医療連携推進法人よりもやや要求水準を緩和した新類型となる地域医療連携推進法人制度を創設し、運用の柔軟性を高めるもの。

その新類型についてだが、地域医療構想を実現するという目的には変わりはないため、従来通り都道府県知事の認可が必要となると共に、営利法人の参画は不可となっている(図2)。

新類型の地域医療連携推進法人のイメージ案(仮)
図2:新類型の地域医療連携推進法人のイメージ案(仮)

では新類型といわれるポイントはどこかというと、3つの経営資源と言われる「ヒト」「モノ」「カネ」のうち、「カネ(出資・貸付)」を除外したものであるということだ。具体的には、従来の地域医療連携推進法人では参画が不可だった個人立医療機関の参画が可能となり、外部監査が不要となる。さらに、本年6月に公表された地域医療連携推進法人に対するアンケート(図3)でも多くの意見のあった事務手続き等も緩和する方針とのことだ。

連携法人のデメリット・問題点
図3:連携法人のデメリット・問題点

地域医療構想の実現に向けて、様々な負担を排除し、地域住民の利益を最優先するための見直しともいえる。

ところで先述した骨太方針2022の前に公表されている春の建議(財務省)では、地域医療連携推進法人制度の見直しの方向性について、外来、入院、退院後の経過観察を一元的に地域で完結させていく横連携を包括評価とすることが記載されていた。令和4年度診療報酬改定では、骨粗鬆症を有する大腿骨近位部骨折患者に対する地域医療連携の評価「二次性骨折予防継続管理料」が新設されたが、その項目のイメージが想起される。今回の議論は新類型に関するものであったが、従来の地域医療連携推進法人の在り方についても、負担軽減や包括評価の導入などについて今後議論されることも容易に考えられる。計画的な入退院を含めた病床管理機能の徹底、退院後の経過観察と緊急時の対応などが地域医療連携推進法人に参画する個々の医療機関の経営にも深くかかわってくることとなる。 ただすでに「二次性骨折予防継続管理料」が創設されたように、地域医療連携推進法人の有無に関係なく、これからは緩やかに横の連携が評価されていく項目も増えてくることは考えられる。令和4年度診療報酬改定では、地域医包括ケア病棟入院料を算定する一部の医療機関に入退院支援加算の届出や二次救急機能か敷地内での訪問看護機能を有することが求められているが、横の連携を推進してく中で、回復期機能と同時に在宅復帰後の緊急対応やレスパイト機能が期待されていることが分かる。地域医療連携推進法人制度の議論とあわせて、横の連携に対する令和6年度同時改定での評価の新設を意識しながらより一層の連携強化を意識しておきたい。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

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