【医療業界動向コラム】第20回 全世代型社会保障構築会議で確認しておきたい2つのポイント
2022.11.22
これからの社会保障政策の方向性を検討する「全世代型社会保障構築会議」。年内のとりまとめに向け、議論が大詰めを迎えようとしている。社会保障というと、保険財政、医療提供体制、介護保険制度など多岐にわたるところだが、本稿では医療にかかわるところで、2つの議論に焦点を当てて現在地を確認してみたい。
やはり気になるのは、「かかりつけ医機能」に関する認定制度の行方。「かかりつけ医機能」の必要性は誰もが認めるところだが、それを認定制度にするかどうかは様々な立場からなかなか明確な方向性が定まらない。 有力な考えとしては、かかりつけ医機能に関する要求水準を決め、その要求水準を満たす医療機関の中から必要に応じて患者が任意で決める、というもの。11月末にも公表される財務省「秋の建議」なども踏まえ、今後の動向は引き続き注視しておきたいが、基本は診療報酬でいうところの「機能強化加算」の要件がかかりつけ医機能の要求水準と近くなると考えられる。結論はまだわからないが、かかりつけ医機能を志向していくのであれば、「機能強化加算」の届出を意識していくことが必要になるだろう。なお、機能強化加算とは、一般病床200床未満の病院と診療所が対象となるもので、地域包括診療料等の届出があることや在宅医療の実績が求められる(図1)。特に地域包括ケア病床を有する病院においては、病棟と外来の一元化・地域密着化を考えていく上で届出を目指していくことを前向きに考えていきたい項目だといえる。
そして、社会保険(厚生年金・健康保険)の適用者拡大についても注目しておきたい。従来の社会保険のルールでは、従業員数101人以上の事業者で、週20時間以上の労働、月収で88千円以上であれば社会保険に加入することとなる(これが106万円の壁といわれるもの)。なお、従業員数が100人以下であれば130万円の壁となる。これらの壁を下回ることで扶養の範囲に入る。上回ると、社会保険料の負担が発生するが、将来の年金受給額は増えることになる。事業主としては、社会保険料は負担を折半するため負担が増えることとなる。実は、この社会保険料については、令和6年10月に従業員数51人以上へと引き下げることがすでに決まっている。すなわち扶養を外れる方が増える、事業主の負担が増えるということだ。
そして、今回の会議では令和7年以降、従業員数の要件を撤廃し、週20時間未満の労働や複数の事業所で働く人でも労働時間を合算して20時間以上になる場合で年収55万円以上(給与所得控除額の最低保障額)までの引き下げを具体的に検討することを明らかにしている。新たに55万円の壁になる可能性が出てきたということだ(図2)。先述の通り、本年中には方向性が明らかにされるが、経営における負担の影響など意識しておきたい。
山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員