【医療業界動向コラム】第21回 第4期医療費適正化計画の概要から見える、次回同時改定のポイント
2022.11.29
医療業界動向コラム第17回でもご紹介した、医療費適正化計画について、令和4年11月17日に開催された「第158回社会保障審議会医療保険部会」にて報告され、大筋で了承された。本コラム第17回では、後発医薬品の使用促進、入院から外来に移行できる医療の促進について紹介したが、病院経営に関連しては以下に列記したものが具体的に示されている。
- フォーミュラリを活用した後発医薬品の使用促進
- 重複投薬、多剤投与対策に電子処方箋を活用する。
- 医療資源の投入量に差がある医療の一つとしてリフィル処方箋も加え、分割調剤と合わせて地域差の実態を明らかにして、必要な取り組みを実施する。
改めて病院経営、今後の診療報酬に関する議論において重要なポイントを確認し、求められる対応策について考えてみたい。
〇後発医薬品の使用促進(図1)
全都道府県で数量割合80%以上を達成すべく、さらに取組を強化する。
新たな視点としては、フォーミュラリの策定、小児・高齢者・精神領域など使用割合が少ない領域での使用促進。
フォーミュラリとは院内もしくは地域での後発医薬品を第一推奨とする医薬品リストのこと。
近々国からフォーミュラリ策定の指針が公表される予定だ。
院内での策定・利用、外来/院外処方を通じて近隣の薬局等へも広げて、地域フォーミュラリをつくり、地域全体での医療費適正化につなげたい考えだ。
〇重複投薬・多剤投与の適正化(図2)
いわゆるポリファーマシーに関することだが、「高齢者の医薬品適正使用の指針(厚生労働省)」では多剤投与の定義を内服薬等6種類以下とし、 入院中の減薬(6種類以上服用している患者を対象)に関する取組を「薬剤総合評価調整管理料」として評価している。 しかしながら、これまで医療費適正化計画では多剤投与を同月内・15種類以上と定義してきた。指針もできていることから、多剤投与については6種類以上と一本化することになるだろう。 医療費適正化計画でポリファーマシーに対しての取組目標も設定されることから、次回の診療報酬改定での評価など注目すると共に、病院での薬剤師配置に対するインセンティブ向上に貢献するものと期待される。 また、電子処方箋を活用することで、処方段階での重複投薬の防止につなげられるであろうことが期待されている。 電子処方箋についてはオンライン資格確認とは異なり、義務化されるものではないため、次回の診療報酬・調剤報酬での評価も検討されることだろう。
〇リフィル処方箋の地域差を確認し、推進する(図3)
令和4年度診療報酬改定で導入された最大3回に分けて反復利用できるリフィル処方箋。病状が安定している患者にとっては、経済的・身体的負担が軽くなり、結果として医療費も下がることが期待されている。光熱水費や食材料費などの家計に影響がでている昨今においては患者としても喜ばれるものとなる。また、令和4年10月からは後期高齢者の一部は医療費の自己負担が1割から2割に引き上げられていることから、好意的に受け止められると期待されている。 最近は、大学病院等の急性期の大規模病院では外来医師の働き方改革の一環で意識的に取り組むケースも目立つようになってきた。とはいえ、受診回数が減ることは医療機関にとっては経営上、 また重症化予防の観点からも懸念されることは多く、積極的な利用につながりにくいことは確かだ。そこで、医療費適正化計画ではまずは実態把握に努め、取組を推進していく予定だ。 具体的には、健康保険組合や協会けんぽといった保険者を通じて、組合員である患者にダイレクトにリフィル処方箋の認知度と利用割合を高めるための広報活動など考えられる。 患者側からの要望が出てくることを前提にした対応を今から考えておくことが必要だ。また、薬局との連携強化を通じて、必要に応じた受診勧奨を促してもらうための情報共有もしておきたい。 なお、令和5年1月からはじまる電子処方箋では、当面はリフィル処方箋は対応しないこととなっている。
他にも、第17回でご紹介したように白内障手術や化学療法を入院治療から外来治療へと移行を促す施策も盛り込まれている。 医療費適正化計画とは、診療報酬とも密接にかかわるものである。令和6年度の同時改定にも大きく反映されるものであると考えられるので引き続き注目し、具体的な対応策を検討しておきたい。同時改定に関連しないことになったとしても、医療費適正化、すなわち患者の負担軽減につながり、治療の継続・重症化予防を一日でも長く続けられるように支援したい。
山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員