居宅介護支援事業所を立ち上げるには?条件や立ち上げまでの流れを解説
2023.02.13
居宅介護支援事業所を立ち上げるためにはいくつかの条件があり、申請書類も多岐にわたります。「立ち上げのための条件は?」「どういった流れで申請したら良いの?」などのお悩みがあるケースも多いのではないでしょうか。
この記事では、居宅介護支援事業所を立ち上げるための条件や申請の流れ、補助金・助成金、居宅介護支援事業所を立ち上げるメリットなどについて解説します。また、介護事業所の業務効率を上げるための方法についても解説していますので、これから居宅介護支援事業所の立ち上げを考える際にはぜひ参考にしてみてください。
目次
居宅介護支援事業所を立ち上げるための条件
居宅介護支援事業所を立ち上げるためには、以下の3つの条件を満たす必要があります。
- 法人格を取得していること
- 人員基準を満たしていること
- 設備基準を満たしていること
それぞれの条件について詳しく見ていきましょう。
なお、居宅介護支援の詳細については以下の記事で解説していますので、そちらもぜひ参考にしてみてください。
関連記事:「居宅介護支援とは?事業所の特徴や利用条件、サービス内容を解説」
法人格を取得していること
居宅介護支援事業所を立ち上げるためには、まずは法人格を取得することが必要です。法人格とは会社などの団体に法律上付与される人格のことで、法人格を取得することで法人が権利義務や取引の主体となることができます。
また、その法人の名義で登記や銀行口座の開設、売買契約などができるようになります。居宅介護支援事業所の立ち上げにおいても、申請者が法人格である必要があるのです。なお、法人格でない場合には会社設立の手続きが必要となります。
人員基準
居宅介護支援事業所の人員については以下のように定められています。
職種 | 主任介護支援専門員 |
---|---|
資格要件 | 専らその職務に従事する常勤の者1名 |
配置基準 | 介護支援専門員(管理者との兼務可能) 介護支援専門員 |
管理者 | 指定居宅介護支援の提供に当たる常勤の者1名以上 |
介護支援専門員は利用者35人あたり1人の配置が基準ですが、利用者数が35人またはその端数を増すごとにさらに1名の配置が必要になります。また、介護支援専門員の人数にかかわらず、1名は常勤の者であることが求められます。
設備基準
居宅介護支援事業所の設備基準については、以下のように定められています。
設備内容 | 事業運営に必要な広さの専用区画 |
---|---|
事務室 | 職員、設備備品が収容できる広さであること。 |
相談室 | 2名以上が利用可能であること。また、プライバシー保護の観点から、遮へい物の設置等により相談内容が外部に漏洩しないよう配慮がなされていること。 |
会議室 | 4名以上が利用可能であること。また、遮へい物の設置等で会議等の内容が外部に漏洩しないよう配慮がなされていること。相談室との兼用は可とする。 |
必要な設備や備品 | デスク・チェア・鍵付き書庫といったような居宅介護支援事業を実施するために必要とされる設備・備品 |
居宅介護支援事業所を立ち上げるまでの流れ
次に、居宅介護支援事業所を開業するまでの流れについて説明します。
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条件を満たしているか確認する
居宅介護支援事業所の開業にあたっては、前述した3つの要件を満たしているか確認しましょう。
①法人格を取得しているか
②人員基準を満たしているか
③設置基準を満たしているか
これらの要件をすべて満たすことで、事業者指定申請ができるようになります。
申請書類を準備する
次に申請の準備をします。申請には以下の書類が必要ですが、自治体によって必要な書類は異なりますので、詳細についてはあらかじめ申請先の自治体に確認しましょう。
チェックリストとしてもお使いください。
✓ | 書類名 |
指定申請書(第一号様式) | |
指定居宅介護支援事業者の指定に係る記載事項 | |
登記事項証明書 | |
従業者の勤務の体制及び勤務形態が分かる資料 | |
資格証の写し | |
雇用契約書等及び就業規則 | |
事業所の平面図 | |
事業所の外観及び内部の様子がわかる写真 | |
設備・備品等一覧表 | |
運営規程 (厚生労働省令に定められた事項等) | |
利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要 | |
事業計画書 | |
収支予算書 | |
資産状況を証明する書類 | |
事業を行う建物の賃貸借契約書 | |
損害保険証書 (損害賠償時の対応用) | |
法第70条第2項各号、法第79条第2項各号、法第115条の2第2項各号に該当しないことを誓約する書面 | |
介護給付費算定に係る体制等の必要添付書類 | |
社会保険及び労働保険への加入状況にかかる確認票 |
市町村に申請をする
申請書類が準備できたら市町村の担当窓口に提出します。書類の提出日は市町村の窓口と相談してあらかじめ決めておくのが一般的で、書類が受理されると審査が開始されます。
なお、書類に不備があると再提出を求められ、審査終了までさらに時間を要することになるため、提出前にしっかりと確認することが大切です。審査終了まではおおむね1ヵ月を見ておきましょう。
居宅介護支援事業所の立ち上げに使える補助金
居宅介護支援事業所の立ち上げにあたっては、まとまった資金も必要となります。ここでは、その際に使える補助金や助成金についてご紹介します。補助金や助成金を使うことで、立ち上げ当初から経費を抑えた運営ができます。
なお、これらの申請には膨大な量の書類作成が必要になるため、場合によっては社会保険労務士等の専門家に相談することも検討しましょう。
地域創造的起業補助金
地域創造的起業補助金は、新たな需要や雇用の創出促進を目的に新たに創業をする方に対して経費の一部を助成するものです。平成30年5月22日で公募が締め切られており現在は応募ができませんが、開業者向けの補助金については今後も新たに創設される可能性があるので、参考としてご紹介します。
1.平成30年4月27日以降に創業する者で、補助事業期間完了日までに個人開業または会社・企業組合・協業組合・特定非営利活動法人を設立し、その代表となる者
2.事業実施完了日までに、計画した補助事業遂行のために従業員を1名以上雇い入れる者
(※)引用:中小企業庁:平成30年度予算「地域創造的起業補助金」の公募を開始します
補助金額は、補助対象と認められる経費の1/2以内ですが、外部資金の調達の有無によって補助金額の範囲は以下のように異なります。
補助金額の範囲 | |
外部資金調達がない場合 | 50万円以上 100万円以内 |
外部資金調達がある場合 | 50万円以上 200万円以内 |
今後募集されるこうした補助金を見逃すことのないよう、各省庁のホームページはこまめにチェックするようにしましょう。
介護福祉機器助成コース
介護福祉機器助成コースは、介護現場における職員の身体的な負担軽減のために介護福祉器具を新たに導入し、その結果として職員の離職率が低下した事業主に対して助成されるものです。
具体的には、新たに介護福祉器具を導入・運用してから運用計画期間の終了1年後までの離職率が、運用計画を提出する前の1年間に比べて、以下の表の離職率以上になることが必要です。雇用保険被保険者数の規模によって、目標とする離職率低下は異なります。
対象事業所の雇用保険被保険者数 | 1〜9人 | 10〜29人 | 30〜99人 | 100〜299人 | 300人以上 |
低下させる離職率 | 15% | 10% | 7% | 5% | 3% |
目標とする離職率低下を達成できると、導入費用の20%(生産性要件を満たした場合には35%)の助成があります(上限金額は150万円)。
なお、こちらの機器導入助成も令和3年度から廃止されていますが、今後また新たな助成金が創設される可能性があるので、各省庁のホームページをこまめにチェックしてみましょう。
居宅介護支援事業所を立ち上げるメリット
ここでは、居宅介護支援事業所を立ち上げるメリットについて見ていきます。
設立費用が比較的安価
居宅介護支援事業所は、設置費用が比較的安価です。設立のための設置基準としては、事務室、相談室、会議室などを設けることです。会議室は相談室と兼用が可能です。ほかの介護事業所のように機能訓練室や共同生活室の設置は義務付けられていないため、初期費用のハードルが比較的低いといえるでしょう。
資格があれば一人でも開業することができる
居宅介護支援事業所は、主任ケアマネジャーの資格があれば一人でも開業できます。主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)はケアマネジャーの上級資格に位置付けられるもので、介護保険制度の改正で2006年に設けられた比較的新しい資格です。
ケアマネジャーは利用者の介護サービス計画書(ケアプラン)の作成や医療機関・市町村との連絡調整を行う橋渡し的役割などを担いますが、主任ケアマネジャーはケアマネジャーよりも豊富な知識と経験、広い視野が求められます。そのうえで、地域包括ケアシステム推進のために地域特有の課題に沿ったサービスを実践したり、ケアマネジャーに対する助言・指導を行なったりといった業務も担います。
主任ケアマネジャーになるためには、実務経験に加えて主任介護支援専門員研修の受講が必要です。主任介護支援専門員研修を受講するためには、以下の4つのうちのいずれかの条件を満たす必要があります。
① 専任の介護⽀援専⾨員として従事した期間が通算して5年(60ヶ⽉)以上である者(管理者との兼務期間も算定可能)
② ケアマネジメントリーダー養成研修修了者⼜は⽇本ケアマネジメント学会が認定する認定ケアマネジャーであって、専任の介護⽀援専⾨員として従事した期間が通算して3年(36ヶ⽉)以上である者(管理者との兼務期間も算定可能)
③ 主任介護⽀援専⾨員に準ずる者として、現に地域包括⽀援センターに配置されている者
④ その他、介護⽀援専⾨員の業務に関し⼗分な知識と経験を有する者であり、都道府県が適当と認める者
主任ケアマネジャーになるための主任介護支援専門員研修を受講するには、ケアマネジャーとしての職務実績(3〜5年程度)が求められます。しかし、一旦この資格を取得すれば、ケアマネジャーとしての長年のスキルを活かしながら一人で開業ができるため、居宅介護支援事業所立ち上げの大きなメリットといえるでしょう。
自宅で開業することができる
居宅介護支援事業所は、自宅でも開業ができます。そのため、新たに不動産契約を結ばなくても立ち上げが可能です。しかし、自宅開業の場合には居宅スペースと事業スペースがそれぞれ独立している必要があります。利用者のプライバシー保護の観点からも、営業時間内に事業に無関係の方が立ち入らないよう、明確な線引きをすることが大切です。
まとめ
居宅介護支援事業所は、ほかの介護事業に比べると設立費用が比較的安価で、一人でも開業できます。しかし、最初は一人で始めても、事業規模が大きくなるとさまざまな業務改善点や問題点が出てきて、業務に支障をきたす恐れがあります。そうならないためにも、立ち上げ当初から介護ソフトを導入し、業務の効率化を図ることが不可欠です。業務が効率化できれば、利用者としっかり向き合いながらサービスを提供でき、さらなる業務の好循環が生まれるでしょう。
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