老健のターミナルケア加算とは?算定要件や注意点などを解説
2023.02.13
ターミナルケア加算は、施設での看取り対応を評価するものです。施設で働く人の中には「ターミナルケア加算の基準は?」「算定するにはどんなことに注意したらいい?」といった疑問を持っている人もいらっしゃるでしょう。
この記事では、老健におけるターミナルケア加算について、看取り介護加算と比較をしながら加算の算定要件や単位、注意点などについて解説します。算定要件について理解が深まることで加算を積極的に取得していけるようになり、施設運営に好循環が生まれるようになるでしょう。
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目次
ターミナルケア加算とは
ターミナルケアとは病気の治癒がこれ以上見込めないなど、余命がわずかな方が平穏に過ごせるよう行われる医療です。残された人生を少しでも平穏に過ごし、生活の質(QOL)を高めることを目的としています。
ターミナルケアは入所者やご家族の意思を尊重しつつ、医師、看護師、介護職員等が連携し対応することが求められます。
ターミナルケア加算とは、ターミナルケアを行った際に施設の看取り対応を評価し算定されるものです。
ターミナルケア加算の算定対象サービス
ターミナルケア加算を算定できる介護サービスは以下の4種類です。
- ターミナルケア加算の対象サービスとその概要
訪問看護 | 看護師等が利用者の居宅を訪問して療養上の世話または診療の補助を行う |
---|---|
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 定期巡回や随時通報を受けた介護福祉士等が利用者の居宅を訪問し、生活介助や身の回りの世話をすると同時に、看護師等が療養上の世話や診療の補助を行う |
看護小規模多機能型居宅介護 | 「通い」、「泊まり」、「訪問介護」、「訪問看護」の利用ができ看護と介護を一体的に提供している |
老健(介護老人保健施設) | 主に利用者の心身機能の維持回復を図り、自宅復帰を目指す療養施設 |
なお、それぞれのサービスに応じて加算の要件は異なります。
看取り介護加算との違い
看取り介護では、本人またはご家族の了承のうえで、余命のわずかな方に対しての積極的な延命治療は行いません。治療よりもご家族と家で過ごす時間を優先するなど、本人が理想とする最期を穏やかに迎えられるよう、身体的・精神的苦痛を緩和する生活支援を行います。
この看取り介護を行った事業者に対して加算されるのが「看取り介護加算」です。看取り介護加算とターミナルケア加算との違いは以下の通りとなります。
看取り介護加算 | ターミナルケア加算 | |
---|---|---|
サービス内容 | 食事、入浴、排泄などの日常生活のサポートが中心で医療ケアは行わない | 日常生活のサポートだけでなく、痛みや不快感をなくすための医療ケアも行う |
算定対象サービス | ・特別養護老人ホーム ・グループホーム ・特定施設入居者生活介護 | ・訪問看護 ・定期巡回、随時対応型訪問介護看護 ・看護小規模多機能型居宅介護 ・介護老人保健施設 |
また、1日あたりの看取り介護加算は以下のようになります。これは、後述するターミナルケア加算の単位数に比べると少なくなっています。
看取り介護加算Ⅰ | 看取り介護加算Ⅱ | |
---|---|---|
死亡日以前31日以上45日以下 | 72単位 | 72単位 |
死亡日以前4日以上30日以下 | 144単位 | 144単位 |
死亡日以前2日又は3日 | 680単位 | 780単位 |
死亡日 | 1,280単位 | 1,580単位 |
看取り介護加算にはⅠとⅡの2タイプがあり、看取り介護加算Ⅱは看取り介護加算Ⅰより条件が厳しくなっています。具体的には、看取り介護加算Ⅱでは以下のいずれかを満たす24時間対応可能な体制の確保が求められます。
- 複数名の医師が配置されていること
- 配置医師と協力医療機関の医師が連携していること
老健のターミナルケア加算の単位数
老健のターミナルケア加算の単位数は以下の通りです。
療養型介護老人保健施設以外 | 療養型介護老人保健施設 | |
---|---|---|
死亡日以前31日以上45日以下 | 80単位 | 80単位 |
死亡日以前4日以上30日以下 | 160単位 | 160単位 |
死亡日以前2日又は3日 | 820単位 | 850単位 |
死亡日 | 1,650単位 | 1,700単位 |
令和3年度の介護報酬改定では、中重度者や看取りへの対応の充実を図るため、新たに死亡日以前31日以上45日以下についても評価区分が設けられました。
また、介護療養型老人保健施設は、比較的重度の要介護者が対象となっています。そのため、死亡日〜死亡日以前の3日間の加算単位数が介護老人保健施設より高くなっているのが特徴です。
老健のターミナルケア加算の算定要件
老健におけるターミナルケア加算の算定要件には大きく以下の3つがあります。
入所者に回復の見込みがない
まず、一般に認められている医学的知見に基づき、入所者に回復の見込みがない状態であると医師によって判断されている必要があります。
「終末期ケア」とも呼ばれているターミナルケアは、回復の見込みのない疾患の末期に施される医療です。病気やけがを治し社会復帰を目的とする本来の医療とは方向性が異なり、疾患の末期の方の苦痛を軽減し、精神的な安らぎを与えることを目的としています。
入所者のターミナルケアに関する計画がされている
2つ目の算定要件として、入所者のターミナルケアに関する計画が作成されている必要があります。終末期の病状や精神状態は入所者によって異なります。そのため各入所者に合わせた計画立案が必要となり、医師、看護師、介護職員等が本人またはそのご家族に対して十分に説明し、同意を得る必要があります。
入所者の状態や希望に応じたターミナルケアがおこなわれている
3つ目の算定要件として、入所者の意思を尊重し、状態や希望に応じたターミナルケアが医師、生活相談員、看護職員などの職員によって適切に行われる必要があります。
例えば、入所者本人やご家族が個室でのケアを希望した場合、その意向にできる限り沿った対応を行います。入所者が個室に移行した場合には、一部屋に一つのシングルベッドが置かれた従来型個室の取り扱いとなる点にも注意が必要です。
終末期における入所者の状態は時々刻々と変化していきますが、入所者本人の意思を尊重するためには以下の点にも留意が必要です。
- これまでの本人の人生観や価値観
- 本人がどのような生き方を望んでいるか
- 本人の意思は変化しうるものであるということ
厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」では、本人意思の確認にあたってはインフォームド・コンセントを基本としています。
また、万が一本人が意思を伝えられない状態となった場合を想定し、前もって特定のご家族等を本人の意思を推定する者として定めておくなどの対処方法が示されています。その場合は、本人が望むことや何が最善であるかについて医療・ケアチームと話し合いの場を持ち、その内容を文書にまとめるなど、プロセスの記録が重要となります。
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老健のターミナル加算の注意点
老健におけるターミナルケア加算の注意点としては以下の3つが挙げられます。
死亡月にまとめて算定される
ターミナルケア加算は死亡月にまとめて算定されます。入所者が退所した月の翌月に亡くなった場合など、退所月と死亡月が異なる場合でも算定は可能です。
その場合は前月分のターミナルケア加算の費用が入所者に請求されるため、自己負担について文書で同意を得ておく必要があるでしょう。
退所後もアフターフォローを行なう
入所者が亡くなる前に老健を退所した場合であっても、そこでターミナルケアが終わりというわけではありません。退所後もアフターフォローを行う必要があります。
在宅では施設とは違いご家族の負担が発生します。定期的な電話連絡や自宅訪問等を通して、引き続き入所者とそのご家族に対する技術的指導や精神的フォローを行い関わりを継続します。
口頭で同意を得たときは記録する
ターミナルケアを行う際には施設内の複数の職種のスタッフが、入所者やそのご家族への説明をする場合もあります。多職種とは以下のような職種です。
- 医師
- 看護師
- 介護職員
- 支援相談員
- 管理栄養士
その際、入所者本人やご家族から口頭で同意を得た場合には、説明した日時・内容・同意を得た旨を記録しておく必要があります。
また、入所者本人が判断できる状態になく、かつご家族が来所できない場合には、以下の事項を記録しておきましょう。
- 本人の状態
- 職員間の相談日時・内容
- ご家族と連絡を取ったものの来所されなかった旨
関連記事:「老健(介護老人保健施設)の仕事がきついといわれる理由|仕事内容や職種、向いている人も解説」
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まとめ
ターミナルケア算定をするためには、入所者に回復の見込みがないことやターミナルケアに関する計画が作成されていること、入所者の状況や希望に沿ったケアが実施されていることなどの条件を満たす必要があります。
また、ターミナルケアは入所者だけでなく、そのご家族や医療・ケアチームで連携体制を作ることが重要です。ときには入所者本人の意思を推測することが求められ、話し合いも繰り返し行われる場合があります。
そうした場合に重要となるのが、話し合いの内容などを文書で記録しスタッフ間で情報共有することです。「ワイズマンの介護老人保健施設向け介護ソフト」は、ケア記録をリアルタイムに入力でき、職員と情報の共有・確認を即座に可能にする支援ツールです。
実際にソフトを導入された施設からは、「記録業務の負担が解消した」「情報共有によってサービスの質の均一化を図れた」「メンテナンスの煩わしさから解放され他の業務に専念できる」といった声をいただいています。
本来業務のサービスの質を高めるためにも、ワイズマンの介護老人保健施設向け介護ソフトの導入をぜひご検討ください。
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