【斉藤正行のはなまる介護~介護現場での円滑なコミュニケーションの秘訣~】②「矢印を自分に向ける」
今回も引き続き、介護現場でのコミュニケーションをテーマとした寄稿にしたいと思います。前回、現場での円滑なコミュニケーションの秘訣として『美点凝視』の考え方をお伝えしました。今回は『矢印を自分に向ける』という考え方をお伝えしたいと思います。この考え方も私が常日頃から意識し、実践し続けていることです。
この考え方は、物事の発生する事由に100%なことは無いという考え方に基づいています。何らかのトラブルが生じてしまった場合に理由が1つであるということは無いということです。誰かとのいさかいが生じてしまった場合にも、どちらかに100%の非があるということは無いということです。人は一般的に「他人に厳しく自分に甘く」なりがちです。私も例外ではありません。ふとした時に「自分への甘さ」が出てしまうことは良くあります。そうすると、ついつい物事がうまくいかなかった時にも自分の責任や非を認めずに、誰かのせいや周りの環境のせいにしてしまうことになりがちです。皆さんにもそういう経験が過去に少なからずあったのではないでしょうか?誰かとのいさかいが生じた場合も同様に、ついつい自分の非を認めずに、相手に責任を求めてしまいがちです。『矢印を自分に向ける』という考え方は、そのような際に、常に矢印を自分に向けて、自分の責任、自分の落ち度、自分のミスに意識を振り向けるということです。
単純なことのように感じますが、実は以外と難しいことです。そして、特に重要なポイントは『常に』矢印を自分に向けるということです。どんな事態が生じた場合にも、どのようないさかいやトラブルが生じた場合でも必ず自分に矢印を向けるということが大切です。たとえ、だれがどう客観的に見ても相手に問題や原因があるケースの場合でも自分に矢印を向けることが大切なのです。なぜなら100%が相手の非ではないからです。自分の非は20%や10%程度のわずかなものかもしれません。その時でも、自分に矢印を向けることが大切です。
職場での人間関係のトラブルは得てして、こういった客観的に見れば明らかにどちらに非があるか明らかなような時に起こるものです。自分の非がわずかしかなかった場合に、そのわずかの非を認めずに一方的に相手の非を鳴らすような対応をとれば、相手は「自分に甘く他人に厳しく」なりがちですから、流石に自分に非が多いとは思っていながらも相手の非も気になっている状況であり、一方的に非難されると反発してしまうことになりがちです。その時に、たとえ非がほとんどない立場だったとしても少しの自分の非を認めて、謝罪の思いを相手に伝えれば、流石に相手も非があることは感じているはずであり、そこから必ず円満解決に繋がります。
この『矢印を自分に向ける』という考え方は、簡単なようで奥が深いのです。そして、これが円滑なコミュニケーションの秘訣でもあると同時に、実は自己成長にも大変重要な考え方となります。さきほどのようなケースも含めて、普通の人であれば見落としがちな自分の過ちやミスを見つめることが出来て、反省し、次からその点を改めるように意識することが出来るかどうかで人の成長スピードが大きく変わってくることになります。場合によっては、本来であればこちらには何のミスも落ち度もないトラブルの場合であっても、非はなかったとしてもトラブルを「自分が防ぐ方法はなかったのか?」「自分に出来ることが何かなかったのか?」このような考え方に基づき、日々のあらゆる出来事に対して『矢印を自分に向ける』ことが徹底できれば、物凄い自己成長へと繋がることにもなるのです。是非、皆さんも日頃より意識してみてはいかがでしょうか。
斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
- 一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
- 株式会社日本介護ベンチャーコンサルティンググループ 代表取締役
- 一般社団法人日本デイサービス協会 名誉顧問
- 一般社団法人日本在宅介護協会東京支部 監査
- 一般社団法人全日本業界活性化団体連合会 専務理事
- その他、介護関連企業・団体の要職を歴任
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