2022.12.23
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【斉藤正行のはなまる介護】「処遇改善関連加算の1本化に向けた検討が始まる」

令和4年12月16日に開催された全世代型社会保障構築本部において厚生労働省より、『介護職員の働く環境改善に向けた政策パッケージ(案)』が示され、処遇改善関連加算の1本化に向けた検討を進めることが表明されました。

これは、私が代表を務める全国介護事業者連盟において、この半年間ほど最も注力して要望活動を進めてきた内容であり、大変嬉しく思います。この処遇改善関連加算の1本化が実現されることとなれば、介護事業者および、現場で働く職員のほとんどが喜ぶであろうことと思います。皆さんご承知の通り、現在、処遇改善関連加算は「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」の3種類となっています。職員の処遇改善に大きく寄与している現場には大変有り難い加算であるものの、加算算定にあたり提出する計画書や実績報告書は膨大な手間が生じる上に3種類となっていることからも、現場の事務負担は大変多くなっています。更には、制度が複雑なため、現場の職員に、改善金額が正しく伝えることが難しくなっており、職員が改善の実感が乏しくなってしまっているなどの課題が長年指摘されていました。

今回示された『政策パッケージ案』においては、生産性向上に向けた処遇改善加算の見直しとして、「事務手続きや添付書類の簡素化を進めるとともに、加算制度の1本化について検討を進める」「取得要件である職場環境等の要件について、生産性の観点から見直しを検討する」「加算を未だ取得していない事業所も一定程度存在することから、こうした事業所における給与体系の構築等も含め、着実な取得率の向上を図る」と記されています。具体的な1本化に向けた検討は、来年に社会保障審議会介護給付費分科会において議論されることになります。

現場の誰しもが望んでいる想いであり、是非とも実現してもらいたいと思いますが、他方で加算の1本化を行うことは、非常に難しいことも想像に難くありません。介護職員処遇改善加算は10年以上の期間を経ており、職員の入退職が繰り返され、事業者においてもどのように配分を進めてきたのかが分からなくなっているケースもあるほど入り組んでいます。また、介護職員等特定処遇改善加算と介護職員等ベースアップ等支援加算は加算の目的も制度の立て付けも異なることから統合には様々な課題が生じています。

今後、議論が行われ、もし、1本化が実現することになれば、創設されることになる新たな加算の設計において重要なポイントを5点ほど指摘したいと思います。①本来の趣旨である職員の処遇改善についてベースアップを含めて確実に実現できるようにすること。②職員の専門性を考慮した処遇改善が行えるようになること。③加算の仕組みをシンプルにし、職員に処遇改善の実感の持てる分かり易い仕組みとすること。④介護現場の書類負担を軽減し、ケア時間を充実させること。⑤居宅介護支援のケアマネジャーや福祉用具専門相談員など加算の支給がさえていない職種にも配分できるようにすること。これらを踏まえた上で検討が進められることを切に望みますが、現実的に1本化が可能となるのか?2本化に留まるのか?現状のままなのか?これからの議論のゆくえを注視していきたいと思います。

斉藤 正行氏

一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長

  • 一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
  • 株式会社日本介護ベンチャーコンサルティンググループ 代表取締役
  • 一般社団法人日本デイサービス協会 名誉顧問
  • 一般社団法人日本在宅介護協会東京支部 監査
  • 一般社団法人全日本業界活性化団体連合会 専務理事
  • その他、介護関連企業・団体の要職を歴任

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