【小濱道博の介護戦略塾】介護保険部会意見の検証(3)
【第2回】自信をもって利益を追求しよう
1.日本独自の利益の考え方
介護福祉に関わる人には、利益に対する嫌悪感が多かれ少なかれ存在します。これは日本独特の価値観の存在です。その価値観を形成したのは、主に第二次世界大戦のプロパガンダ。「贅沢は敵だ」「足りぬ足りぬは工夫が足りぬ」「欲しがりません、勝つまでは」。これらは戦時中の物資不足の生活に対する不満を抑制するために当時の政府が世論操作のために作り出した標語でした。そして、殆どの当時の国民がこの言葉に洗脳されました。その洗脳が戦後に解き放たれたかと言うと疑問です。戦後になってTVで放送されたり、映画となった時代劇に、この考え方が見て取れます。それは、時代劇での悪人は、決まって代官と商人ですよね。そして、代官と商人が夜にロウソクの灯りの下で酒を飲みながらこのセリフを言う。「ふっふっふっ・・越後屋、お主も悪よのう」「いえいえ、お代官様こそ」。役所と企業が儲け話に花を咲かせている感じですね。それに対して、善人である主人公は、決まって長屋住まいで、貧乏であるが心は清らかで、正義感に溢れている。これが日本人の美徳とされてきたのです。それは戦後の復興期から高度成長期前半までは必要な考え方でもありました。特に団塊の世代以前の世代は、このような価値観の中で教育され、育ったのです。
2.利益の正体
利益を求めることは悪いことでしょうか。否です。利益の正体とは何か。それは地域から介護事業者への通知表なのです。小学生が学期末に学校の先生から渡されて自宅に持ち帰る、アレです。優・良・可、1・2・3・4・5などでその学期の学習成績を個人評価される通知表です。介護事業所が、その地域にとって必要で質の高いサービスを提供すると、どうなるでしょうか?当然、利用者は自然と口コミで増えるでしょう。新規の利用者が継続的に増えるとどうなりますか?それはサービス量が増加して、収入が増えて、好むと好まざるに関わらずに、結果として利益が増えます。逆の場合は、利用者が増えず、利益は出ないでしょう。このように、利益とは、その地域にとってニーズが高く、かつ、素晴らしいサービスを提供した結果に対する、地域からの評価です。言い換えると、利益とは、地域からの「ありがとう!」という言葉の集合体なのです。利益が出る事という事は、その地域から感謝された結果だと言うことが出来ます。これは存分に誇りに思って良いことです。自慢して良いことです。介護事業所の経営者と職員は、いかに新規の利用者を増やして、収入を増やすことが出来るかを真剣に考えるべきです。それは、利用者のニーズに応えて、職員のレベルアップを常に行って、事業所全体のサービスの質と満足度を上げることとイコールです。そして、そのような事業所には、不思議と良い職員が集まるものです。
3.自分が使いたいサービスを考える
経営者側の人は、もしも自分が利用者だったら、自分の事業所のサービスを他の何処よりも使いたいか。を考えてみるべきです。同じように、もしも自分が介護事業所に就職を望んでいたとして、果たして、自分の事業所に履歴書を送るか。と考えて見ると良いです。ここのところは、とても重要です。是非、職員の皆さんで、自分たちの事業所を使いたいか、使いたくないか。その理由はなにか。使いたくなるにはどうすれば良いかを、ざっくばらんに話し合ってみてください。出た意見をどんどん、紙に書いて行きましょう。この時に、人の意見に、そうだ!、いや違う!と、意見を言ってはいけません。順番にどんどん意見を言っていきましょう。それを、出来ればポストイットなどに書き込んで行きます。ある程度、意見が出尽くしたら、そのポストイットを、似ている意見毎に重ねて貼って行きます。一番多く貼られたところが、今の事業所の状態です。何が強みで、何が足りないかが、そこに表されています。今度は、その事業所の状態をどうしていけば良いかを、同じように意見を出し合っていきます。自ずと、これから何をすべきか、何を今から出来るか。という答えが導き出され、参加した皆さんがその場で理解出来ます。これは簡単な自己分析方法なので、是非やってみてください。
小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表 株式会社ベストワン 取締役 一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事 C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。
全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。