2019.09.01
トピックス

2019年9月1日「働き方改革の実践ポイント」

Q1中小企業でも働き方改革にすぐに取り組んでいく必要があるか?

2019年4月に施行された働き方改革では、「働き方改革の総合的かつ継続的な推進」、「長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現等」、「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」の3つを柱として、多岐に亘る施策が盛り込まれました。

医療機関や介護事業者等においては、下図のような中小企業を配慮した段階的な開始時期とその施策内容を確認し、適用された事項を中心に取り組んでいく必要があります。中小企業か否かの判定は、資本金(出資持分)と従業員数で判別し、企業単位で出資金・資本金が5,000万円以下、常用社員100人以下が中小企業の区分に該当します。

働き方改革において不明な点があれば自己判断は禁物です。各都道府県に設定された「働き方改革推進支援センター」による無料相談を積極的に活用しながら取り組みを加速していきましょう。

4月1日(中小企業の適用は2020年度)から、これまで時間外労働の上限が設定されていなかった点が改められて、上限が月45時間、年360時間とする改正が施行されました。これは長時間労働の是正が生産性の向上やワーク・ライフ・バランスの改善につながることが考慮された見直しですが、職種別の週60時間超労働の割合が最も高い医師に対しては、勤務医の長時間労働をすぐには是正できないと判断され、5年間の猶予を設けて2024年度から適用されることとなりました。中小企業は1年遅れの2020年度からの適用となったものの、労働時間や休暇の見直しは人員配置やシフトの見直しに直結するため、直前ではなく余裕を持って見直しを進めることが重要なポイントです。

また、今回の改正では、時間外労働の上限設定だけでなく、同時に労働時間の把握に関して厳格化され、「タイムカード」などの客観的な方法などの導入も必要とされました。使用者は労働時間を把握できる体制に改めつつ、業務の効率化や改善に向けた対応も検討していかなければなりません。

Q2職員に対する年5日の年次有給休暇の付与はどうしたらよいか?

年次有給休暇(以下、年休に略)は、労働者が取得を申請した日に与えるのが原則です。今回、2019年4月に中小企業も含めて、年10日以上の年休を与えられた労働者に対して年間最低5日を取得する(付与させる)ことが義務付けられました(下図)。取得義務のある労働者に対し、休暇を付与させなかった場合、罰則は1人あたり30万円以下の罰金が科せられるため、取得管理が不可欠です。

この対象者は、出勤率が8割以上の正社員やフルタイムの契約社員であり、年10日の休暇取得の権利は入社後6ヵ月たつ方が該当します。パート社員は勤務時間が週30時間以上であれば正社員と同様の取扱いとなるため、特にこの区分に該当する職員の確認が必要です。さらに、パート社員のうち、週所定労働日数が4日以下かつ勤務時間が週30時間未満の場合は出勤日数と勤続年数によって該当するか否かが異なるので、パート社員の取扱いに特に留意しなければなりません。

休暇取得は労働者の申し出が原則ですが、労働者の希望を踏まえた使用者による「時季指定」が今回新設され、事業の正常な運営を妨げる場合は「時季変更権」により、使用者が別の日にするよう変更を命じることができる形となりました。同時に、使用者は「年休管理簿」等により休暇取得の状況を把握する必要があり、労働者による計画的な休暇取得と使用者による管理が望まれています。

なお、介護事業所等における人員基準に係る常勤換算方法では、「非常勤」従業者の休暇や出張の時間は勤務延時間数には含められず(常勤は勤務扱いとなります)、特にパート社員の年休取得時の人員配置に対して注意しなければなりません。

入院・入所系の施設では夜間帯などの予期せぬ緊急出勤やシフト調整による連続出勤が伴う場合もあります。そういった場合に始業時間を調整する「インターバル休暇」と「時間単位の年休」を組み合わせた2つの制度を活用した改善策も有効な手立てとなります。「時間単位の年休」は管理が煩雑になりますが、1日休むほどではない私用がある場合にも活用でき、仕事と生活の調和を図ることができる仕組みとして注目されています。

Q3勤務間インターバルの導入において確認すべきポイントとは?

勤務間インターバル制度とは、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定の休息時間を確保する仕組みであり、労働者の十分な生活時間や睡眠時間を確保することを目的とした制度です(下図)。過重労働は健康を害するとともに、病院や介護施設ではサービス提供に支障をきたすことも多く、今回、2019年4月に制度導入が義務化されました。

法的には努力義務(罰則なし)であるものの、夜勤・交代制勤務体制の抜本的な見直しが迫られている点を理解し、労使の話し合いのもと組織としての勤務間インターバル方針(インターバル休暇を含む)を定めて実践していく必要があります。

医療分野における看護師の勤務間インターバルの現状としては、入院基本料において病棟の夜勤従事者の平均夜勤時間数を72時間以内とする制限しかなく、明確なルールがない中で業務に携わることは、医療安全への影響が危惧される深刻な事態だと指摘されています。日看協の調査によれば、3交代制(1勤務8時間)では勤務間インターバルは「4時間」程度しかなく、2交代制では8割超が「15時間以上17時間以内」の長時間夜勤となっている実態が報告されています。

他方、介護分野では、とりわけ慢性的な人手不足に陥っている中、苛酷な労働による過労死の問題だけでなく入所者等に対する虐待行為も大きな問題となっています。虐待行為に至った経緯はもちろん個人差があると思いますが、ハードな勤務体制による疲労やストレスが一因となっているケースも多く、今回の制度化を機会に、現行体制を見直して再構築していくことが大切です。

仮に、人員シフトの再調整により人手不足が懸念されれば人材確保が不可欠であり、人材が工面できなければ人員配置自体の見直し、あるいは人員配置に合わせた病床や居室の削減の検討が強いられる場合もあります。経営面では看護基準や病床数の変更に伴う入院収入などの増減分と、残業代や手当代などを含む人件費の増減分をシミュレーションし、現実的な落とし所を探っていく必要があり、労務管理面においては専門家による相談支援やアドバイスを参考にしていきましょう。

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ワイズマン編集部