【医療業界動向コラム】第22回 かかりつけ医機能は認定・登録よりも、地域住民への情報提供から~中小規模病院にも求められる5つのかかりつけ医機能を確認する~

2022.12.06

かねてより議論されてきた「かかりつけ医機能」について、令和4年11月28日に開催された第93回社会保障審議会医療部会にて、厚生労働省からの提案が示された(図1)。

図1:かかりつけ医機能に関する制度の骨格案

財務省などが強く主張してきた、認定・登録制については今回は見送り、まずは地域住民に対するかかりつけ医機能を有する医療機関情報の提供を充実させる方針となった。なお、11月29日に公表された「令和5年度予算の編成等に関する建議(通称・秋の建議)」においても、かかりつけ医機能の認定・登録制については掲載が見送られたところ。今後は、社会保障審議会医療部会において、制度整備の基本的な考えを年内にとりまとめ令和5年の通常国会に医療法改正案を提出、令和6年度から医療情報提供制度(医療情報ネット)のフォーマットを見直すと共に、各地域の協議の場(地域医療構想調整会議など)で各医療機関から報告を受け、医療情報ネットを通じて地域に発信していく、という流れとなる。ここで重要なのは、協議の場。多くは地域医療構想調整会議になると思われるが、近年の診療報酬では総合入院体制加算において地域医療構想調整会議の合意の文字が入るなど、そのプレゼンスが高まっていることに改めて注目したい。これまでは、入院医療の話し合いの色合いが強かったが、外来機能報告制度の開始もあり、医療提供体制全般についての話し合いの場として重要な意味を持つ。また、医療費適正化計画では地域別診療報酬を作ることも法律上可能となっていることから、今後、その地域の実状にあった診療報酬の設定などできる環境整備が進められているようにも思える。

今回示されたかかりつけ医機能の考え方のポイントとしては、その定義付けと地域住民へのわかりやすい情報提供の在り方の2つ(図2)。

図2:かかりつけ医機能の現状と今後の考え方

前者については、地域医包括診療料/地域包括診療加算や機能強化加算がイメージされたものとなっているが、協議の場を通じて地域の実状にあわせて、不足する医療などを補完するための方策についても触れられている。これは、外来医療計画との連動を意識しているといえる。

後者については、医療情報ネットを国民・地域住民視点でもっと友好的に活用してもらい、かかりつけ医機能を有する医療機関探しと選択に使えるものとしようということ。

協議の場となる地域医療構想調整会議などでのかかりつけ医機能に関するどういった話し合いが行われるのか、そのモデルも提示されている(図3)。

図3:5つのかかりつけ医機能の役割

5つのかかりつけ医機能である「外来医療の提供」「休日・夜間の対応」「入退院時の支援」「在宅医療の提供」「介護サービス等と連携」を星取表のように整理されている。ここでわかるように、現在想定されているかかりつけ医機能とは、単独ですべてを担うものではなく、地域の複数の医療機関で機能を相互補完しあうというコンセプトとなっていることに注目したい。

かかりつけ医、ではなく、かかりつけ医機能であることを改めて知っておきたい。そして、かかりつけ医機能を有する医療機関の5つの役割からもわかるように、それは診療所だけではなく、一般病床200床未満の病院で機能強化加算の届出を行っている病院であったり、療養病床でも地域包括ケア病床を有する病院や、訪問診療・訪問看護の機能を有する病院などもかかりつけ医機能が求められていることが分かる。地域を俯瞰してみて、不足する機能を5つの項目から確認し、対応していくことが病院にも求められ、それにこたえていくことが地域で必要とされ続けることとなる。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

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