【医療業界動向コラム】第23回 難病法改正のポイントとその目的を理解する

2022.12.13

障害者と難病患者の生活と就労を支援するための法律改正(障害者の日地上生活および社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律)について、今国会で成立の見通しだ。この法律は、障害者・難病の生活・就労支援の他、精神障害者の家族等の同意・不同意の意思表示がなくても市町村長の判断で医療保護入院を可能とするもの(入院期間を定めることや一定期間ごとの入院の要件の確認を行うにはなっている)を一括にまとめたもの。令和6年4月までに施行することとなるが、一部は令和5年4月からの施行となる(図1)。

図1:厚生労働省 障害者の日常生活および社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案

本稿では難病法の見直しのポイントについて確認したい。

難病法では国が定める「指定難病」の患者で「重症度分類等」に照らして病状の程度が一定程度以上の状態にある患者に対して難病医療費助成制度がある。現在指定難病は338疾患となっているが、法律ができた当初は56疾患だったので、大幅に増加している(図2)。

図2:指定難病の拡充について

ちなみに、身体障害者手帳で助成を受けている場合でも、難病医療費助成の認定基準を満たしていればどちらの助成も受けることが可能だ。

ところで、この難病医療費助成を受けるには、都道府県に対して受給証の申請が必要になるが、申請してから約2-3か月かかる。有効期間は申請日からとなるが、ここで問題になっていたのが、申請日以前の診断を受けた日から申請日までの期間は助成の対象にならないということだ。今回の法律改正では、原則1か月を上限として、診断された日に遡っての助成を認めるというもの。さらに、入院等の緊急治療の必要があったなどのケースでは最長で3か月前までさかのぼることを認めることとなっている。この見直しは、令和5年10月からの施行となる。

なお、難病医療費助成の対象外となった患者の場合は、介護保険の第二号被保険者で要介護認定を受けることで介護保険サービスを利用すること(介護保険サービスを利用している場合は障害者総合支援法による自立支援給付は受けられないケースがある)や、高額療養費制度を活用することで負担の軽減となる。

今回の見直しでは就労面でもサポートするべく、ハローワーク等で使える登録者証の発行も令和6年4月から開始される。これまでは、診断書の取得が必要で、そのために医療機関を受診するなどしていたので、その手間と負担が削減されることとなる。なお、この登録者証は指定難病患者に対して発行されるため、助成対象外である軽症者も取得可能となる。

障害の有無に関係なく社会生活を営むことを目的とした「共生社会」作りにおいては、お互いの人権と尊厳を理解し、公的な支援も含めて互いに支えてあっていくことが理想とされる。今回の障害者及び難病患者の生活・就労を支援する法改正はそうした目的を実現するためのものと言える。医療機関側からも情報発信と共に、可能なサポートの範囲などを明確にしながら、共生社会作りに貢献していくことが求められている。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

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