【名南経営の人事労務コラム】第17回 マイカー通勤の注意点

2023.03.09

 職員の通勤について、都市部以外の多くの地域ではマイカーを利用せざるを得ないことが一般的です。

ところが、マイカーによる通勤のトラブルは少なくないのが実態であり、様々な角度からの対策が必要です。実際、何も対策どころか管理もしていない施設は多く、トラブル発生によって嫌な思いをして職員が離職をするといったケースもあるようです。

 このマイカー管理にあたって、一番注意をしなければならないのが有効な運転免許証の所持とマイカー通勤時の事故対策です。有効な運転免許証を所持しているというのは当然であると誰もが疑う余地がないように思えますが、重大な交通違反によって免許停止処分を受けて無免許状態でマイカーにて通勤をするといったケースがあります。この場合、本人がプライベートで免許停止処分を受けたとしても申告がない限りは通常はわかりませんので、実際、無免許状態で通勤をする職員がいる可能性はゼロであないのではないでしょうか。

 また、事故対策という点では、任意保険の加入状況が十分ではないというのが特に若い職員で時折見られる傾向です。自分こそは安全運転を心がけるので事故など絶対に発生させないという理由で高い保険料の任意保険に加入をしないというわけです。しかし、例えばマイカーを使って業務に使用するモノを帰宅時にホームセンター等に寄って購入するような場合において、事故発生時に任意保険に加入していないと民法第715条の使用者責任によってその責任の追及先が勤務先になることがあり、勤務先が賠償責任を負わなければならない可能性が生じますので注意をしなければなりません。業務の一環とみなされることで使用者責任が問われるのですが、事故を発生させた本人と施設との間で責任転嫁の応酬が繰り広げられ、嫌気を指した本人が突然出勤をしてこなくなるといったようなケースもあるようです。

 そういった意味では、入職時のみならず1年に1回は運転免許証の写しや加入している任意保険の加入状況の確認は定期的に行っておきたいところです。その任意保険の加入状況も対人や対物に対して一定水準以上の保険加入を求めるような運用も行っておくとよいでしょう。

 更には、職員のマイカーを駐車する駐車場内の管理についても対策を講じておきたいところです。駐車場内にマイカーを停めていたものの車上荒らしの被害にあったというある法人の職員は、監視カメラを設置していなかったことに対して施設側にその責任追求を求めてきました。自分にも非があるとはわかっていながらも、怒りの矛先が勤務先になるというのは残念なことではあるものの、そのような気持ちはわからないでもありません。そういった意味では、駐車場内における事故を含めたトラブルについては、施設側は責任を負わないので自己でしっかりと対策を講じるようにといったような運用も検討すべきでしょう。同時に、駐車場内にタバコの吸い殻などのごみを捨てないことであったり、停車しながら窓を開けて音楽を大音量で聴いて近隣住民に迷惑を掛けないことなどのルール整備も必要です。

 以上のようなことは、誓約書を提出させたり、マイカー通勤管理規程のようなものでルールを整備するとよいでしょう。

服部 英治氏

社会保険労務士法人名南経営 ゼネラルマネージャー

株式会社名南経営コンサルティング 取締役
保有資格:社会保険労務士

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