【名南経営の人事労務コラム】第19回 守秘義務と職業倫理

2023.04.13

医療機関や福祉施設で働く職員は、守秘義務が課せられていることは理解をしているものの、残念ながらそれが徹底されているかといえば十分ではないケースが散見されます。

 守秘義務とは、職務上知り得た情報や機密情報等を外部に開示、漏えいさせてはならない義務ですが、医療機関や福祉施設の近くの飲食店等では、職員と思われる複数の客が患者や利用者のことを第三者でもわかるような具体的な話をしていることも多く、大変気になります。

 職員にとっては、患者や利用者の氏名や病歴等が記載された文書等を第三者に見せていないという意識かもしれませんが、口頭のやり取りであったとしても開示や漏えいには変わりなく、特に電話のやり取りでは周りの雑音に消されないように大きな声でのやり取りによって患者や利用者の情報が第三者に伝わってしまうこともあります。

 また、身近な人であれば絶対に漏えいさせないだろうということで、自分の同居家族であったり、同級生等に情報を勝手に伝えることもあります。例えば、近所のよく知った○○さんが△△といった病状で入院しているとか、中学校時代の校長先生がうちの施設に入所しているとか、といったようにです。

 中には、個人名こそは出さないもののイニシャルトークとして、「中学校時代の校長先生のKさん、わかるよね?Kとしかいえないけどあの人」といったような会話もあり、こうした容易に推測できる場合も当然守秘義務違反ということになります。

 以上のような守秘義務に関しては、職員が入職する際に誓約書として提出させることが一般的ですが、対象が正職員のみであることによってパートタイマーはその管理すら行っていないということも散見されます。もっとも、入職時には様々な緊張感を持っているものですが、仕事や職場の人間関係等に慣れてくると気の緩みから先の近くの飲食店のような言動が見られるようになることから、誓約書そのものは定期的に提出してもらうといったような管理を行いたいものです。

 更には、退職後にも「もうオレは関係がないから」という勝手な理由を出して勤務していた過去の様々な情報を外部に漏えいさせることもあり、在職中の定期的な誓約書提出のほか、退職時においても誓約書を提出させるといったような管理も必要ではないかと思います。  

なお、守秘義務違反となる根底には、職業倫理意識が希薄であることが少なくなく、部分的なことを気を付ければよいというわけではありません。例えば、近所の飲食店では患者や利用者のことを話すな、といえば話すことを控えてくれるでしょうが、本質的な点を理解してもわないと遠く離れた場所であればよいという間違った解釈をする可能性も否定できませんので、職業倫理について学んでもらう機会が必要です。こうした職業倫理を学ぶにあたっては、外部から講師を招いて研修をしてもらうという方法もありますが、高度な知識や情報を求めるわけでもありませんから、できれば、施設内で管理職が講師となって様々な角度から話をするという方法が現実的です。実際に施設内で管理職が講師となって開催してみると、受講者も質問がしやすくなり、質問内容によっては、講師側がハッとさせられて学ぶこともありますので効果的ではないかと思います。

服部 英治氏

社会保険労務士法人名南経営 ゼネラルマネージャー

株式会社名南経営コンサルティング 取締役
保有資格:社会保険労務士

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