【医療業界動向コラム】第34回 新型コロナ5類移行後に向け、診療報酬上の特例措置の在り方に関する審議が始まる。

2023.03.07

令和5年3月1日、中医協にて新型コロナの5類移行後を見据えた診療報酬上の特例の扱いについての審議が始まった。そして同日、政府として考える医療提供体制案が各メディアで報道されている。正式には、3月10日に決定する予定とのことだ。

報道されている内容を、患者側と医療機関側に分けて整理してみると以下のようになる。

【患者側】
・外来・入院での検査や治療は、原則として患者の自己負担(季節性インフルエンザ並み)。ただし、入院については高額になる場合のみ月最大2万円を軽減する(インフルエンザによる入院の費用に近づける目的)。
・高額な治療薬のみ無料で提供を続ける。
・軽減措置は本年9月末まで。

【医療機関側】
・診療報酬の特例加算は、段階的に縮小する。また「病床確保料」も減額へ。
・病床確保料については、病床の種類に応じた交付額の単価も引き下げる(休床については1床までに)。

なお、病床確保料に関する調査結果も間もなく公表される。不適切とされるケースについては返還も視野に入れた対応が検討されている。これから1週間で5類移行後の在り方が決まることになる。

国としての大まかな方針が見えてきている中、中医協では診療報酬上の特例措置の今後についての審議が始まったところ。改めて新型コロナ感染拡大に伴う診療報酬上の特例を確認しておこう(図1)。

図1_診療報酬上の特例措置

なお、中医協では、これら特例措置の算定状況についても明らかにしている(図2)。

図2_特例の算定状況

新規感染者数は増えている一方で、重症者数が減少しているなどの情報も明らかにされており、入院医療から外来医療での対応の在り方がポイントになってくることを感じさせる。そのため、特定集中治療室管理料や救急医療管理加算等については平時の評価に早期に戻されることが考えられるだろう。

なお、12病院、8診療所に対して行ったヒヤリング結果が公表されている(図3)。

図3_ヒヤリング結果のまとめ

外来診療については、今年度の診療報酬改定で新設された「外来感染対策向上加算」を算定する医療機関の役割の見直しや同加算を算定していない医療機関への支援の在り方がポイントになってくると思われる。なお、新型コロナの疑い患者に対する診療の特例となっている「院内トリアージ実施料」、「二類感染症患者入院診療加算」については、今月末までが期限となっているが、予定通りに終了するかどうか、注目されるところ。

入院医療に関しては、先に紹介した集中治療室等の評価について以外に、高齢患者の入院時と連携痔の対応に対する評価が話題に上がっている。また高齢患者の場合は看護師の負担は重い(食事介助など)ことも指摘されおり、入院先について考えることとなっているように感じる(図4、図5)。

図4_新型コロナ患者の入院状況①
図5_新型コロナ患者の入院状況②

重症化する患者も少なくなってきていることから、入棟先に対して、急性期一般病棟に集中するのではなく、他の病棟に行くように何らかの誘導策を講じることなど考えられる。感染対策向上加算2や3の病院の病床などになるだろうか。感染対策向上加算1の病院は本来の高度急性期の機能を改めて高めていくと共に、地域の感染対策に関する対応力を高めるための機能をさらに高めていくことが求められる。より一層、リーダーシップを発揮して連携を強化していくことが求められる。

新型コロナ禍の中、人々の受診行動には変化が起きている。とりわけオンライン診療については、一般社会でも話題に上がることが度々あって、その言葉も定着してきていると感じる。オンライン診療については、昨年指針が見直され、要件を満たせば初診からでも利用でき、診療報酬上でも評価されるようになった。現在の特例措置にある初診からのオンライン診療と電話診療は早い段階で見直される可能性が高いと思われる。あわせて、現在電子処方箋が本格稼働している。HPKIカードの申請・入手とオンライン資格確認体制の経過措置の多くが終了する9月以降からが本番ともいえるが、オンライン診療とセットに考えると、診療の場所にとらわれないアフターコロナ時代の診療スタイルの一つともいえる。患者の自宅・入所先までを診療の場と考えたあり方もこうした時期だからこそ対応を考えたい。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

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