【医療業界動向コラム】第36回 5月8日以降の診療報酬の特例措置、そして同時改定に向けて期待される「地域包括ケア病棟」
2023.03.22
令和5年3月10日に開催された中医協総会にて、診療報酬改定の特例措置に関する見直し、点数等が明らかにされた。
基本的な考え方としては、緩やかに点数を引き下げつつ、当面は継続するという内容。一方で、3月1日の中医協で指摘されていた介護施設や在宅療養中の高齢者の入院(入棟)先について、急性期一般病棟への入院が集中しないように、リハビリテーション提供体制等が整備されており、感染発生時に地域の介護施設等との連携体制ができている医療機関への入院に対する新たな評価を設けることとなっている。すなわち、受け入れ先を急性期一般病棟から地域包括ケア病棟へと誘導するものだ。
〇従来の特例措置の今後について(図1)
外来の院内トリアージ料については、現行の取組をしている上に本年8月までに受け入れ患者の制限をしないことを要件に現状の点数を維持する。その一方で、受け入れ患者の制限をする場合は現行の感染対策をしていても147点と引き下げになる。
入院では、二類感染症患者入院診療加算等関連は現状のまま継続となるが、救急医療管理加算や特定集中治療室管理料の特例は引き下げられる。
〇新たな受け入れ先への誘導(図2)
地域包括ケア病棟を念頭に置いたとみられる新型コロナ感染者の入院に対する新たな加算が設けられている。
新型コロナ患者の多くが、急性期一般病棟へ入棟していたが、在宅や介護施設の高齢者も多く入棟していた。治療薬も出てきており、業務の効率化も進んでいることから、新型コロナが5類に移行することに合わせて、急性期本来の役割を発揮できる環境に戻していくことで、医療逼迫を防ぎたい考えだ。
ところで、同年3月15日に来年度の同時改定に向けた意見交換会が実施されたが、その中で話題の一つとなったのが地域包括ケア病棟の今後のあり方について。全人口に占める高齢者の割合が高まっていることもあり、新型コロナに関係なく、急性期一般病棟に高齢患者が入棟する割合は必然的に高まってきていたところ。病床機能分化を明確化する上でも、急性期病床に高齢患者に対応すべくセラピストを手厚く配置するよりも、急性期機能を高める方向に、その一方で回復期に二次救急機能とリハビリテーションの機能をより高める方向へと次回診療報酬改定ではさらに推進していくことが考えられる。地域包括ケア病棟をHUB(ハブ)とした連携体制の構築が、5月8日からの新たな特例措置下では求められ、それはそのまま平時の地域医療連携のあり方へとスムーズに移行していくことが期待されることとなる。
なお病床確保料については、9月末までに半分程度に減額(病床の種類に応じた交付額の単価も引き下げる)しながら、1年後の廃止を検討する。
5月8日以降、患者側では以下のような変更がある。
・外来・入院での検査や治療は、原則として患者の自己負担(季節性インフルエンザ並み)。
ただし、入院については高額になる場合のみ月最大2万円を軽減する(インフルエンザによる入院の費用に近づける目的)。
・高額な治療薬のみ本年9月末まで無料で提供を続ける。
・軽減措置は本年9月末まで。
緊急時から平時の医療提供体制へ、大きな転換点をむかえようとしている。
山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員