【医療業界動向コラム】第40回 後発医薬品の仕様促進の一環としてのフォーミュラリ、その現状と診療報酬での評価の可能性は?
2023.04.25
令和5年3月22日の中医協総会にて、令和4年度診療報酬改定に関するアンケート調査結果が公表されている。これまでの同調査では、後発医薬品の仕様促進の一環としてのフォーミュラリの策定状況について調査されて、今回も実施されたところ。フォーミュラリとは「医薬品の有効性・安全性など科学的根拠と経済性を総合的に評価して、医療機関や地域ごとに策定する医薬品の使用指針」のこと。病院内や地域における採用医薬品リスト、ともいえる。ポイントは、経済性ということが入っていること。すなわち、後発医薬品があるものについては、現況を踏まえて後発医薬品の優先順位を上げることだといえる。そのため、後発医薬品の使用促進策の一環ととらえている。また、フォーミュラリについては、令和6年度から始まる第四期医療費適正化計画の中でもその策定を推進することが盛り込まれる見通しであり(図1)、診療報酬上の評価が期待されるところだ。
今回の調査ではこれまで同様に、DPC対象病院と一般病院とを分けて調査している。前回に比べて回答件数が少ないものの、DPC対象病院等ではフォーミュラリがかなり推進していることがわかる。今後進める予定があるを含めてみると、約半数でフォーミュラリについての理解と推進意欲が分かる(図2)。
病院の規模別にみてみると、規模が大きい病院ほど策定されていることがよくわかる(図3)。
高度急性期~急性期を志向する病院においてはフォーミュラリの策定が急速に進んでいることをうかがわせる。ただし、回答件数が決して多いものではないことに注意が必要だが(n数が100に満たない調査で%で表記するのは誤解を招く)。
実際の薬効群ごとのフォーミュラリ策定状況、さらにバイオシミラーを組み入れているかといった調査結果も公表されている(図4)。
フォーミュラリには、病院内で利用する「病院フォーミュラリ」と地域一帯で利用する「地域フォーミュラリ」がある。基本的に考えられるのは、地域の基幹病院となる高度急性期や急性期の病院がまずは病院フォーミュラリを策定し、その策定されたフォーミュラリをホームページ等を通じて地域に情報発信して、地域フォーミュラリを推進していく、というイメージだろう。今回の調査で地域フォーミュラリについて調査されているが、こちらも回答件数が少ない点に注意が必要だが、まだ一桁台という状況だ(図5)。
実際に地域フォーミュラリがある地域においては、どのように推進されているのだろうか。病院からの勉強会の実際やホームページを通じた情報発信が多いことが分かる(図6)。
次回の診療報酬改定では、地域の基幹病院やDPC対象病院などを中心にフォーミュラリに関する評価を検討し、地域に波及していく素地を作る、など考えられるのではないだろうか。また、急性期病院に限らず、包括評価になっている他の病床機能を有る病棟でも効果的に使えるものであることを理解して、診療報酬に関係なく積極的に取り組むことも大切だろう。
フォーミュラリは院内薬剤師が中心となって素案を作成し、院内で承認を得て、周知されることが多い。そう考えると、病棟薬剤業務実施加算などでのフォーミュラリ策定へのかかわりなどを要件とした新たな点数を設けるなどして、処遇改善につなげることも必要になってくると考える。策定にあたって、フォーミュラリはあくまでも推奨薬リスト、であって、絶対ではないということも改めて理解してもらうための周知も重要だろう。例えば、専門外の診療・処方をする際の参考にしてもらうなどの場面での利用などイメージしやすい。実際に処方する医師にとってのメリット、経営者、そして患者にとってのメリットを改めて確認しておきたい。基本は、患者にとっての最善の選択となることだ。
山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員