【医療業界動向コラム】第44回 オンライン診療と遠隔医療をこれから推進するための基本方針案が公表

2023.05.23

令和5年5月12日に開催された社会保障審議会医療部会にて、「オンライン診療その他の遠隔医療の推進に向けた基本方針(案)」が提示された。あくまでも方針であって、遠隔診療に関する取組等を法令上義務付けるものではなく、適切な取組で普及を進めていくためのもの。一昨年前の規制改革推進会議において、オンライン診療及び遠隔医療の更なる活用に向けた方針の策定が求められていたところ、今回、その方針案が示された。今後表現や文言等の調整を行い、公表されることになる。

基本方針では、医師と患者によるオンライン診療と医療従事者同士の遠隔医療と分けているので、改めて言葉の意味を正しく理解したい。

オンライン診療とは、情報通信機器を用いた診療で、D(Doctor) to Dとも表現される。また、へき地での医療や専門医療の提供を踏まえ、患者のそばにかかりつけ医や訪問看護師などがついてオンライン超しに適宜指示を受けて対応をするなどの診療スタイルであるD to p with N(Nurse)やD to P with Dなどもある(図1)。

図1_オンライン診療の推進について

巡回診療車に看護師が乗車し、患者と共にオンライン診療を受けるケースなども最近よく聞かれるようになってきたが、これもオンライン診療のケースでD to P with Nとなる。

ところで、オンライン診療については新型コロナの特例による初診からの実施は7月末までとなり、8月以降はオンライン診療の適切な実施に関する指針に基づく体制と新たな届出が必要になる点にご注意いただきたい。なお、指針ではかかりつけ医であることやかかりつけ医でなくとも患者の医療情報が入手出来て診療に臨むことができれば初診からもオンライン診療は可能となるが、それらに該当しない場合は、オンラインで診療前相談の上で判断して、そのままオンライン診療となるか、対面診療をお願いすることになることを改めて確認しておきたい(図2)。

図2_診療前相談

一方遠隔医療とは、主に医師同士による診療等のアドバイスを受ける遠隔画像診断や病理診断などをいう。希少疾病などの領域やへき地医療においては、質問医と専門医をチャットでダイレクトにつないで助言をもらうといったサービスも最近はよく耳にする。また、看護師同士など医療従事者間の連携もさしている(図3)。

図3_医療従事者間の遠隔医療の推進について

基本方針では、医師と患者間のオンライン診療と医師と医療従事者の遠隔医療とそれぞれに分けて期待されることや課題などが整理されている。国が取り組むべきこと(事例集・手引書・チェックリスト等を作成)、都道府県・市町村が取り組むべきこと(オンライン診療実施施設に関する情報発信等)なども明確にされている。

オンライン診療では情報リテラシーと共に患者の理解(検査等行っているわけではないので限界があること)について、医療従事者の遠隔医療については質問医と専門医の責任分界点について課題が提示されている。患者に対して直接の診療をするかかりつけ医である質問医による判断となることから、基本的には質問医側に責任を負うことになるとも考えられるが、今後の議論を注視していきたい。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。

https://www.hckn.work

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