特定施設のサ高住とは?指定されるメリットや注意点、一般的なサ高住との違いを解説
2023.06.01
サービス付き高齢者住宅(以下、「サ高住」と称す)の特定施設とは、運営の届け出を行い、行政で定められた基準を満たすことによって都道府県の指定を受けた施設のことです。サ高住全体の約7%と割合は少ないですが、特定施設のサ高住では一般のサ高住で行っていない介護サービスを提供できる特徴があります。
今回は特定施設のサ高住の指定基準、指定を受けた場合のメリットとデメリットについて解説します。サ高住の経営者はもちろんのこと、職員としてご自身が働く施設について知識が深まりますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
特定施設とは?
特定施設は、特定施設入居者生活介護の略称です。特定施設とは、厚生労働省が定めた介護保険法の基準を満たし、都道府県から指定を受けた介護施設を指します。ここでは、特定施設の基準や種類を解説します。
特定施設の基準
特定施設の基準には、人員基準・設備基準・運営基準があります。それぞれの基準は、以下の通り定められています。
【人員基準】
- 管理者:1名(兼務可)
- 生活相談員:要介護者100名につき1名
- 看護・介護職員:要支援者10名につき1名、要介護者3名につき1名
※ただし、看護職員は要介護者30名まで1名、30名を超える場合は50名につき1名 - 夜間帯の職員は1名以上
- 機能訓練指導員:1名以上(兼務可)
- 計画作成担当者:介護支援専門員1名以上(兼務可)
※ただし、要介護者100名につき1名
【設備基準】
- 介護居室:原則個室
※プライバシーの保護に配慮できること、介護を行える十分な広さがあること、地下でないこと - 一時介護室:介護を行うために十分な広さ
- 浴室:体の不自由な方が入浴するのに適したもの
- トイレ:居室のある階ごとに設置し、非常用設備を備える
- 食堂、機能訓練室:機能を十分に発揮できる広さ
- 施設全体:利用者が車いすで円滑に移動できる空間と構造
【運営基準】
- 計画:利用者に合わせた特定施設サービス計画が作成されていること
- 重要事項説明:重要事項説明書を交付して事前説明を行うこと
- 契約:事前説明の同意を得て、文書で契約を締結すること
- 入浴:自ら入浴が困難な利用者については、週2回以上の入浴又は清拭を行うこと
- 教育:職員の資質向上のため、研修の機会を確保すること
- 記録:提供したサービスの内容等を記録すること
- 苦情:苦情に迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付けるための窓口を設置すること
特定施設の種類
特定施設には、以下の4つの施設があります。
- 有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅(有料老人ホームに該当する場合)
- 軽費老人ホーム(ケアハウス)
- 養護老人ホーム
高齢化社会が進む中、特定施設の事業所数・受給者数は共に増加している傾向があります。
(※)参考:厚生労働省「特定施設入所者生活介護」
次の章からは、4つの特定施設のうち、特定施設のサ高住について解説します。
特定施設のサ高住とは?
特定施設のサ高住とは、運営の届け出を行い、行政で定められた基準を満たすことによって都道府県の指定を受けたサ高住のことです。
一般的なサ高住では安否確認と生活支援のサービスが義務化されていますが、介護サービスの提供は行っていません。一方、都道府県の指定を受けた特定施設のサ高住では、特定施設サービス計画に基づいた居宅サービスの提供を行うことができます。居宅サービスとは、日常生活に必要な入浴・排泄・食事の介助や機能訓練のためのリハビリテーションなどです。
また、特定施設のサ高住の介護サービス費用は、利用者の介護度に応じた定額制に設定されています。
一般的なサ高住との違い
特定施設のサ高住と一般的なサ高住の違いは、受けられるサービス形態と費用、そしてサービスを提供する職員です。
2つの違いは下表の通りです。
一般的なサ高住 | 特定施設のサ高住 | |
サービス | ・安否確認と生活相談のみ ・介護サービスの利用には個別に介護事業者との契約が必要 | 日常生活に必要な介護サービス全般を24時間受けられる |
費用 | 契約した介護サービス利用分 | 介護度ごとの定額料金 |
介護職員 | 外部の訪問介護事業所の職員 | 施設の職員 |
特定施設のサ高住を利用するメリット
特定施設のサ高住の利用者には、次のようなメリットがあります。
介護サービス利用料が定額になる
利用者側のメリットとして、一ヶ月あたりの介護サービス利用料が定額になることが挙げられます。
介護度の高い方にはメリットが大きいといえるでしょう。自己負担額が定額になると、余計な出費を抑えることができて入居後の費用感がイメージしやすくなります。
介護体制が充実している
手厚い介護を受けられることもメリットの一つです。特定施設の人員基準により、介護スタッフが24時間365日常駐して安否確認を行います。
日中は看護師も常駐しているため、気分不良や体調変化が生じた際には居室で処置を受けることができます。医療機関と連携しているため、万が一の際も安心です。
安全・安心できる場所で生活できる
特定施設のサ高住では、安全で安心できる環境での生活が約束されます。なぜなら特定施設の設備基準によって、高齢者が生活することを考慮した設備が揃っているからです。
バリアフリーや十分な広さの床面積、トイレ・浴室の手すり設置など、安全な生活環境が保たれているため安心です。
介護度が上がっても退居の必要がない
一般のサ高住の場合、認知症を発症したり介護度が上がったりすると退居を求められる場合があります。
特定施設のサ高住であれば、そういった場合でも必要なサービスをそのまま利用し続けることができます。
特定施設のサ高住を利用するデメリット
特定施設の利用にはメリットが多いですが、次のようなデメリットもあります。
生活に制限がかかることがある
本来、サ高住は介護施設ではなく入居者の生活の場です。しかし、特定施設では認知症の方や要介護度の高い方も生活されているため、自由に外出することができません。
そのため、入居される方によっては行動が制限されて不自由さを感じる恐れがあります。
介護事業者を自分で選べない
特定施設のサ高住の入居者も、外部の介護サービスを受けることができます。ただし、以前利用していた外部事業者のサービスを継続して受けることはできません。
一般のサ高住のように外部の事業者を自由に選ぶことができず、特定施設が契約している事業者がサービス提供を行います。
介護度によって月額費用が割高になる
特定施設では自己負担額の満額を事業者に支払うため、介護サービスをあまり利用しない方には割高になる傾向があります。
入居先を決める際は、利用者がどの程度のサービスを必要としているか十分に検討する必要があります。介護度とサービス内容が見合わない場合は、住宅型や一般型のサ高住などほかの種別の施設を検討しなければいけません。
特定施設のサ高住に指定されるメリット
特定施設に指定されることで、運営者には次のようなメリットがあります。
利用者やご家族から信頼される
特定施設のサ高住は行政のお墨付きを得ていることから、入居者やご家族から高い信頼を得られると考えられます。
施設の信用度の高さは、利用者やご家族が入居先を選ぶうえで決め手となるため、競合他社との比較において大きなアドバンテージとなります。
介護保険外サービスの提供ができる
特定施設のサ高住の場合、利用者の自己負担にはなりますが、介護保険適用の居宅サービス以外にも介護保険対象外のサービスを提供できます。
介護保険対象外のサービスの例として、以下のサービスがあります。
- 配食サービス
- 日用品以外の買い物代行
- 訪問理美容
- 旅行の付き添い
- 認知症患者の見守り
- ハウスクリーニング
など
介護保険の満額を支払う必要があるため、頼みごとが他にもある利用者にとっては嬉しいサービスです。
特定施設のサ高住に指定されたときの注意点
特定施設の指定を受けた運営者は、今後の運営において注意しなければならないことがあります。
- 人員基準や運営基準の維持
- 書類整備の徹底
- 職員研修の実施
などが挙げられます。
特定施設の指定を受けたサ高住は、行政からのチェックが厳しくなります。そのため、管理者は特定施設の人員基準や運営基準を維持しなくてはなりません。
運営基準の中でも、特に書類整備や職員研修の実施には注意が必要です。なぜなら、情報の更新頻度が高いことに加えて時間が取りにくいためです。これらを実施するための時間を作り、徹底した管理をしなくてはいけません。
書類整備は特に時間や手間がかかってしまうものですが、介護ソフトを活用することで時間短縮や効率良く対応できます。ワイズマンのサービス付き高齢者住宅向けソフトなら、特定施設入居者生活介護にも対応しています。
特定施設のサ高住で働くメリット
特定施設のサ高住で働くメリットをご紹介します。
無資格で働ける
特定施設では、看護師や機能訓練指導員、計画作成担当者など資格が必要な職種を除いて無資格でも働くことができます。
ただし、無資格でも実務経験を必要とする施設もあるので注意が必要です。なお、ヘルパーステーションを併設している施設では、身体介護が必須であるため資格が必要です。
一人ひとりにじっくり向き合える
老健や特養などの公的な介護施設と比べると、介護体制が手厚いので利用者一人ひとりに向き合いたい方に向いています。
行政の人員基準を下回らないように、基準よりも人員配置を手厚くしている事業所もあります。
勉強会や事例検討などで知識を身に付けられる
運営基準には教育の項目があり、「職員の資質向上のため、研修の機会を確保する」と定められています。そのため、特定施設のサ高住においては、定期的に勉強会や事例検討会が実施されるので、実務に関する知識を身に付けることができます。
しかし、就業時間内に職員が集まって参加することは難しいため、空き時間にネット上で研修を行い、レポートを提出させるのが一般的となっています。
特定施設サ高住で働くときの注意点
サ高住というと、身体介護を必要とする方がそれほど多くない印象があります。しかし特定施設のサ高住では、要介護度3以上の方が全体の半数以上を占めるといわれています。
終身利用を希望される利用者やご家族に対して、看取りの受け入れを行う施設もあり、特定施設のサ高住で働くためには日々の自己研鑽が欠かせません。少なくとも働いている間は、常に最新の情報やより深い知識やスキルを習得する努力も必要になるでしょう。
まとめ
サ高住の中でわずか7%の特定施設のサ高住ですが、特定施設の事業所数や受給者数の増加から、今後さらに増える可能性があります。
特定移設のサ高住の業務においては、書類整備や情報共有が占めるウェイトが高い傾向にあります。指定基準を満たすためには、研修を通じた人材の教育も必要です。
特定施設のサ高住だけに限った話ではなく、介護業界においてテクノロジーを上手に活用し、業務負担の軽減とサービスの質の向上を両立させることが不可欠といえます。
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