電子カルテとは?機能やメリット、選び方のポイントも解説
2023.08.30
電子カルテを導入しようかどうか迷っている人もいるのではないでしょうか?
同システムを取り入れることで、業務の効率化を図ることができます。
合わせてヒューマンエラーの防止もできるので、ミスもグッと減らすことが可能です。
ただ、電子カルテにはいくつか種類があります。合わせて導入する際に気をつけておきたいポイントもあります。
そこでこの記事では、電子カルテの基本的な機能や導入のメリットについて解説していきますので、導入しようか迷っている方はぜひ参考にしてください。
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目次
電子カルテと三原則
電子カルテとは、患者の診察記録・検査結果・投薬指示といったこれまでは紙カルテに記載されていた情報をデータとして記録するシステムです。
電子情報のため、一括して管理や編集ができることや、共有先ではいつでもどこでも情報をチェックできることが大きな特徴です。
電子カルテには電子保存の三原則を満たすことを定められています。
電子保存の三原則とは
- 真正性:正当な人が記録し、第三者から見て責任の所在が明確であり、虚偽の入力や書き換え、混同が防止できていること
- 見読性:必要に応じて診療に用いるのに支障が無いよう、また監査等に差支えの無いよう、肉眼で見読可能であること
- 保存性:記録された情報が法令等で定められた期間内(5年)にわたって、真正性と見読性を保っていること
厚生労働省発表の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に規定されているものより抜粋
電子カルテの普及率は大型病院で90%以上
厚生労働省から発表されている令和2年度での電子カルテ普及率は以下の通りです。
400床以上の大型病院での普及率は令和2年に90%を超えているのに対し、中小規模の病院では約半数の普及にとどまっています。
しかし、平成29年に200床未満の病院では37%だったのが、令和2年には48%まで伸びていることを見ると、中小規模の病院でも電子カルテの普及は急速に進んできていると言えます。
今後、地域包括ケアシステムの構築に向けた動きのなかで、電子カルテの導入はより必要とされてくるでしょう。
電子カルテの3つの種類
電子カルテは提供形態によってオンプレミス・クラウド・ハイブリッドの3つの種類に分かれます。
3つの主な特徴は以下のようになっています。
オンプレミス | クラウド | ハイブリッド | |
---|---|---|---|
サーバー | 院内に設置 | 企業サーバーで管理 | 院内と企業サーバーを併用 |
端末 | 指定されていることが多い | スペック次第で選べる | スペック次第で選べる |
利用場所 | 院内に限定 | インターネット接続できる場所ならどこでも可能 | 設定によっては外部でも可能 |
セキュリティ | 安全性が高い | 外部からの侵入への対策が必要 | 外部からの侵入への対策が必要 |
ネット回線による影響 | 使用スピードはサーバーに依存し、ネットトラブルは影響なし | 回線速度によってスピードが変わり、回線トラブルによる影響あり | 使用スピードはサーバーに依存し、回線トラブル時には切り替えて使用可能 |
連携の有無 | 医療機関同士や医療機器との連携実績は多数ある | 企業によって連携システムの有無が大きく違う | 他の医療機関や医療機器との連携実績は多数ある |
緊急性 | 院内での管理に限定されるため時間がかかることがある | 情報共有が素早くできるため、早い対応が可能 | 切り替え(設定)によって素早い情報共有が可能 |
オンプレミス型は、院内のサーバーに電子カルテのデータを保存するシステムです。
電子カルテの開発当初はオンプレミス型が主流でした。
自院のみでの使用に限定され、外部からの侵入も防ぎやすいタイプです。
クラウド型は近年主流になってきた、サーバーを所有する企業で電子カルテのデータを保存しておくシステムです。
インターネット接続すれば、どこからでもデータの閲覧や記入ができます。
当初は個人情報漏洩のリスクなどから敬遠されていましたが、セキュリティ性能の向上とともに、オンプレミス型に代わって電子カルテの主流となってきました。
バージョンアップや更新が容易なことや使用できる端末や場所の範囲が広いことで近年注目を集めてきています。
外部からの接続も可能な代わりに、職員の情報保護に対する意識の改善が求められたり、オンプレミス型とは違った課題も残っています。
ハイブリッド型は、院内のサーバーと企業のサーバーどちらにもデータを保存します。
インターネット接続のトラブルが起きた場合には院内のサーバーを使用、外部から接続が必要な場合にはクラウド上からデータにアクセスができます。
オンプレミス型とセキュリティ型のどちらのいいところも併せ持ったシステムです。
電子カルテの機能
具体的に電子カルテでどんな業務を行えるのかというのは、企業によってさまざまです。
ここでは一例となる電子カルテの機能を紹介します。
患者管理
患者一覧や病名の管理。患者個人の既往歴や感染症、薬品や食物アレルギーのプロファイリングができます。
外来機能
外来受付でカルテの呼び出しや問診内容の記録、次回の診察や他部門への予約管理を行います。
システムによってはオプションで患者から予約をする機能やオンライン診療の機能もあります。
電子カルテ機能
テンプレートでのカルテ作成、薬歴や検査結果の参照ができます。
システムによっては使用する頻度の高い薬剤データを保存しておけたり、必要に応じて家族カルテを確認できるようにもなります。
オーダー機能
薬の処方・注射・処置・透析・手術・検査・リハビリ・入院 / 退院・管理などのオーダーを管理します。
カレンダー機能を使用できたり、投薬については名称検索などが入っています。
病棟機能
入院に関わる空床紹介や指示確認、看護記録や患者のケア管理を一括して管理できます。
部門機能
各検査などの予約管理・実施状況の管理をします。
また、記録や治療にかかわる各種書類の作成などを行います。
検査結果の画像もシステム上でアップロードして、診察室からも閲覧できるようになります。
文書管理
患者管理にかかわる同意書など各種書類の作成、ラベルやリストバンドの作成とスキャナ機能との連動が可能です。
職員間情報共有
院内への連絡メール機能や掲示板機能、患者情報のメモを共有できます。
他社システムとの連携
診察券の発行、再来受付機での使用や待ち時間の表示システムとの連携を行います。
自動精算や透析システム、院内の検査機器や外注検査など院内外との情報の連携が可能です。
電子カルテを取り入れるメリット
電子カルテを入れた時の具体的なメリットは4点挙げられます。
- 省スペース
- 業務の効率化
- スムーズな情報共有
- ヒューマンエラーの防止
それぞれについて以下で詳しくみていきましょう。
省スペース
紙カルテでは患者数が膨大になったり、長期間にわたる治療では保管場所に困るケースもありました。
電子カルテは院内または企業のサーバーに保管され、たくさんのデータを記録できるので、保管場所に困るといったことがありません。
企業によっては、電子カルテ導入以前の紙カルテの情報を移行してくれるサービスもあります。
保管場所の有無や今後の保管方法によっては全てを電子データに置き換えることも可能です。
業務の効率化
受付業務では診察券からカルテをすぐに医師が確認できるようになったり、精算時にはその日の診療情報が自動計算されるようになります。
紙カルテを探す、診療内容を確認・計算するなどの人の手がかかっていた部分が省略されるので、時間短縮に繋がります。
また、紹介状や診断書などの文書を作成する場合でも、テンプレートを用いることでこれまでより早く作成できるので、業務時間の短縮や職員の負担軽減が期待できます。
スムーズな情報共有
検査結果を外部の検査機関に依頼した場合に、電子カルテに取り込むことができたり、オンラインで検査結果をアップロードできることで、よりスムーズな情報共有が可能になります。
クラウド型であれば、院外にいる場合でも緊急でカルテの確認ができたり、指示を送ることもできます。
紙カルテでは、別部門での検査結果がカルテ自体が回ってくるまで見れませんでした。
電子カルテは、検査終了後すぐに確認でき、紙カルテよりもタイムリーに情報処理ができるようになりました。
ヒューマンエラーの防止
人それぞれの書き方の特徴によって読みにくい文字などがないため、誤読によるミスを防げるほか、転記漏れによる指示漏れや伝達ミスといったことも防げるようになります。
薬の投薬には、薬の名称を検索・選択できる機能を用いることで患者ごとのアレルギーや禁忌を事前にチェックもできます。
電子カルテを導入するデメリット
電子カルテを導入する際には、デメリットもあります。
- 初期費用の発生
- 停電時に使えないリスク
- 情報流出の危険
- 研修や職務の整備の必要
導入に際しては、デメリットについても事前に把握しておかなければなりません。
初期費用の発生
電子カルテの導入時には、多額の初期費用が発生します。
初期費用だけでなく、クラウド型であれば毎月の運用コストがかかったり、オンプレミス型ではメンテナンスや更新時にパッケージとして費用がかかることもあります。
初期費用ではオンプレミス型よりクラウド型の方が安価なところが多く、ハイブリッド型がもっとも高価になります。
停電時に使えないリスク
停電になるとパソコンが使えず、電子カルテの情報が全く見れなくなるというリスクもあります。
停電時だけでなく、パソコンの故障などが起きても、業務に大きく支障が出てしまいます。
クラウド型ではインターネットトラブル時にも使用できない場合があります。
情報流出の危険
クラウド型やハイブリッド型では、個人情報の漏洩・流出のリスクが挙げられます。
外部からの侵入への対策も向上し、セキュリティが強くなってきているので、今ではそれほど情報の流出を心配する必要はなくなってきました。
しかし、外部でも端末からアクセスできる状態であるがゆえに、情報を外部に持ち出しやすくなっています。
職員の個人情報の取り扱いへの意識も注意が必要です。
研修や職務の整備の必要
電子カルテではさまざまな機能を同時に操作できることがメリットですが、操作に慣れるまでには時間を要することもあります。
会計や検査部門のみ別システムといった風に、システムを分けている場合にはそれぞれの連携や、すべての操作を習得するのにも時間がかかってしまいます。
導入当初にはシステム会社による研修を受けなければならないこともあり、職員の従来の業務をストップさせることになります。
場合によっては電子カルテの使い方やトラブル対応に特化したスタッフの配置が必要になります。
更新された時の研修や相談、トラブル時の対応や新人職員への指導などは医師やそのほかの職員に時間を取らせてしまうので、専任のスタッフを配置することが望ましいでしょう。
また、クラウド型のシステムはある程度、機能や操作性が決まっているので、それに合わせた運用に切り替えなければなりません。
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電子カルテのシステム導入の比較検討ポイント
システム会社によってサービス内容や特徴はさまざまです。
自院にはどこのメーカーのシステムが合っているのか、検討すべきポイントを抑えておくことで運用方法に合わせた電子カルテを見つけられます。
連携サービスの有無
レセコン一体型のものを導入することで受付から診療、会計までを一元化できます。
レセコンをすでに導入している場合はレセコンとの連携が可能かどうか、システムを連携した場合に手作業になってしまう業務がないかという確認が必要です。
そのほか、外部の検査機関が利用しているシステムでやりとりをしている場合には、連携できるかを確認しておきましょう。
システムによっては同社製品としか連携できないものもあります。
近年では、病院内のみの連携にとどまらず、地域医療や薬局、介護施設でも患者の情報を共有されるケースもあります。
今後、地域医療と連携する必要性が出てきそうという場合には、地域の他機関で使用している電子カルテも確認してみるといいでしょう。
特化した機能の有無
システムによって特化した診療科目があったり、無床・有床医療機関向けに機能が充実しているものがあります。
たとえば無床医療機関向けには患者のアプリとつながって予約管理を行えたり、保険証のアップロードや問診表の記入もシステム上で行えるものもあります。
訪問診療やオンライン診療に対応しているものもあるので、自院にあるとより便利になるであろう機能について考えてみてください。
導入する機関の規模や診療科目、業務のスタイルに合っているシステムを選べばよりスムーズな運用に繋がります。
費用
電子カルテのデメリットである費用面も、比較の大きなポイントでしょう。
オンプレミス型は導入時に大きな費用がかかりますが、クラウド型では運用費が継続してかかってきます。
しかし、同じ機能があって価格が違う時に、必ずしも高い方がいい、安い方が悪いというわけではありません。
アフターフォローや細かな操作性といった点で少しの違いがあるはずですので、費用面だけでシステムを選んでしまうのは危険です。
操作性
電子カルテは目の前に患者がいる状態で操作しなければなりません。
その場で話した内容を即座にシステムに入力するので、入力や選択が容易であることは電子カルテを選ぶうえでとても重要な点です。
タッチペンで入力できるものもあるので、入力方法についてもよく見直してみてください。
また反応速度や画面の見やすさなども診察時には大切な要素です。
デモンストレーションを体験し、使用した感じや操作方法などを見てみましょう。
アフターフォロー / 安定性
電子カルテに全ての情報を記録していると、サーバー上でトラブルが起きた場合、すべての業務に支障が出ます。
トラブルが起きた場合のサポート体制も検討時には確認しましょう。
オンプレミス型ではトラブル時には訪問対応がほとんどで、時間がかかることもあります。
電話連絡が可能かどうかやクラウド型やハイブリッド型なら、遠隔操作でのサポート体制など、サーバー会社によって異なります。
また、電子カルテの原則である「保存性」にも注目です。
導入後のデータはサーバーに保管するので、事業の継続性も検討ポイントの一つに入れましょう。
現在これまで情報が分断されていた医療・介護業界の情報共有が2024年医療介護同時改定の審議会において議題に挙げられています。いずれは共通のフォーマットにて手軽に情報共有ができる環境となる日がくるでしょう。そういった流れの中にこの電子カルテもあります。導入当初のスタッフハレーションリスクよりも、導入していないことによる機会損失の方が大きくなることが容易に想像されます。早めの導入を検討していきましょう。
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中小規模の病院におすすめ「電子カルテシステムER」
弊社の運用する「電子カルテシステムER」は、中小規模の病院で必要となる業務について汎用性を持たせたパッケージシステムです。
病院内だけでなく、介護・福祉との連携にも対応しており、同一患者様への情報の一元化が可能となります。
他システムとの連携強化
電子カルテの導入・切替には他部門との連携が心配という声がよく聞かれます。
電子カルテシステムERは下記のようなシステムと連携が可能です。
- 検診システム
- 透析システム
- リハビリシステム
- 検査システム
- 栄養管理システム
- 画像管理システム
これらと連携できることで院内の運用ICT化をサポートします。
直感的な操作が可能
カルテ画面は「ERガイドエリア」「カルテエリア」「オーダーエリア」の3つのエリアから構成されています。
どこを操作するのかが見やすく、入力も簡単です。
またカルテ画面の組み合わせは自由なので、画面上でこれまでの経緯や検査結果を参照しながら当日のカルテ入力やオーダリングが可能になります。
なお、ワイズマンの電子カルテを詳しく知りたい方は「電子カルテシステムER」をご確認ください。
まとめ
電子カルテでは患者データを一括して管理できることにより、業務の効率化や情報のスピード共有が可能になります。
新規開業するクリニックでは開業時から電子カルテを導入しているとこも増えてきました。
今後は地域医療との連携にも必要なシステムになってくるでしょう。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。