訪問看護システムの機能とは?導入のメリットと比較ポイントを解説
2023.08.31
訪問看護では、職員の負担が大きいことや情報共有の難しさなど、多くの課題が挙げられてきました。
その一方で、利用される患者様には、自宅でケアを受けたいと強く希望される方も多いため、今後も訪問介護の需要は高まると予測されます。
ひっ迫した業務を効率化し、職員が働きやすい環境を構築する方法として、訪問看護システムが注目されています。
現状の業務体制や管理体制に問題を感じていれば、ここでシステムの導入や切り替えを検討する機会かもしれません。
本記事では、訪問看護システムの基本的な機能や導入のメリット、選定ポイントを解説します。
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目次
訪問看護システムとは?
訪問看護システムとは、訪問看護時に必要となるデータの管理や不随する記録書の作成、請求書の作成などを一括で担えるシステムのことです。
これまでは患者情報を事務所で確認、訪問先へ出向いた後に事務所へ戻って記録するというのが一般的な流れでした。
訪問看護システムの導入によって、看護先へ直接出向き、タブレット端末で患者情報を確認、その場で記録して医師へ共有するなど効率化が図られています。
また、訪問看護で煩雑化しがちなレセプト業務も自動計算できることで、適正な金額の請求につながります。
2024年(令和6年)から訪問看護レセプトは原則電子化
これまでの訪問看護は、医療・介護のなかで電子化の対象外でした。
しかし、2022年12月に厚生労働省より、訪問看護レセプトのオンライン請求を2024年から開始させることが発表されました。
オンライン請求の開始にともなって、訪問看護レセプト業務は原則電子化となり、2024年(令和6年)5月から始まります。
今後、オンライン請求の開始までにレセプト機能付きの訪問看護システムの普及が広まると予想されます。
訪問看護システムの主な機能
訪問看護システムには、主に次のような機能が搭載されています。
標準機能 | 機能概要 |
電子カルテ機能 | 患者情報の記録・管理や医師からのオーダリング、看護記録の作成 |
レセプト業務 | 医療保険 / 介護保険のレセプト作成や利用者への請求 |
スケジュール管理 | 訪問予定の管理とそれに合わせた職員のシフト管理、訪問予定の作成 |
報告書の作成 | 帳票作成や各種報告書の作成、統計データの作成やCSV出力 |
導入する訪問介護システムによって、搭載機能・オプション機能が異なります。
もちろん、機能が足りない場合は問題ですが、オーバースペックの場合もコストがムダになったり、教育に時間がかかったりと、デメリットが生じます。
訪問介護システムを選ぶ際は、自社の要件に適しているかを軸に選定すると良いでしょう。
訪問看護システムを導入する5つのメリット
訪問看護では人材不足が深刻化しつつあり、事業者様のなかでの問題となっています。
看護師の業務量の多さ、訪問先での責任の重さなども間接的な人材不足の原因に挙げられます。
訪問看護システムを導入することにより、業務の負担軽減につながるため、訪問看護の現場における問題点を改善できそうです。
具体的なメリットを見てみましょう。
訪問先で患者データの確認ができる
訪問看護システムはスマホ・タブレット端末など、さまざまなデバイスに対応しています。
訪問先であっても電子カルテを確認・編集できるため、ミスの防止や業務の効率化につながります。
訪問時の経過観察で気になったことがあれば、過去の経過をその場で確認できるので、小さな異変も見逃しません。
データの確認をその場でできることで、より充実した看護サービスを提供できます。
また、次の訪問先の情報も事前に確認できるので、到着後スムーズに看護を始められるでしょう。
情報共有の効率化
訪問看護システムでは端末から直接、訪問記録を記入したり、状況共有できたりします。
写真や動画での記録が可能なシステムもあり、訪問先で不測の事態が起きた場合にも情報を共有することで、医師からの指示を受けて処置することもできます。
また、医師だけでなく、ケアマネージャーや他の提携する介護施設などとの連携も可能です。
訪問看護を利用する多くの患者は、医療だけでなく介護のサポートも必要とするケースが多くいます。
その場合には他の機関との情報共有が大事になってくるでしょう。
連携可能なシステムであれば、カルテ情報をそのまま共有できるので、全ての機関のスタッフがリアルタイムに患者様の情報を把握できることもメリットの一つです。
書類作成の時間削減につながる
訪問看護システムでは、訪問記録の入力が選択式になっていたり、音声入力ができたりする製品もあります。
訪問予定の作成は、手書きする必要もなく、自動で過去の予定が過去の訪問記録から作成される機能もついています。
これまでの手書きでの記録に比べると、記録する時間が大幅な短縮につながるでしょう。
実際に「訪問看護業務支援システム導入による訪問看護師の書類作成時間の変化と効率化についての認識に関する調査研究」では、世代別での書類作成時間が最大25分短縮されていることが発表されました。
レセプト業務の負担軽減
システムによって機能には差があるものの、ほとんどの訪問看護システムではレセプトの自動作成機能が入っています。
訪問記録の実績からレセプトを自動発行してくれるため、経理の業務負担が大幅に軽減されるほか、適正な金額請求も行えます。
スタッフの定着化につながる
これまでの事務所から訪問先へ行くフローから、職員の自宅から訪問先、その次の訪問先へとスムーズに訪問ができることも大きなメリットです。
出勤時間の短縮になるうえに、シフト勤務の場合には自宅から訪問先に直接出向くだけという新しい働き方も進めていけます。
実際に定着率がすぐに上がるわけではなくとも、時短勤務を希望する人にも働きやすい環境は新しい雇用も呼び込みやすくなります。
訪問看護システムを選ぶ時の比較ポイント
これから訪問看護システムを導入する、または新規のシステムへの切り替えを検討している場合には、以下のポイントについて比較してみてください。
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入力方式や画面の操作性
訪問看護システムでは、職員が電子端末を持ち運んで操作します。
職員が訪問先で操作する時には、以下の3点がポイントです。
- 持ち運びしやすいか
- 操作が簡単にできるか
- 画面が見やすいか
画面の見やすさを重視するあまり、重く大きい端末では移動時に職員の荷物が増えて負担になってしまいます。
また、訪問先で入力がスムーズにできるかも重要です。
手書き入力の機能や、音声での入力、または写真や動画の取り込みが可能であれば、記録がよりスムーズにできるでしょう。
申し送り事項が画面上の見やすい位置に表示されたり、経過をすぐに確認できたり、といった画面の見やすさも訪問先でのサービスをスムーズにしてくれます。
帳票の種類や対応機能
訪問看護では、主に以下の書類を扱います。
- 訪問看護指示書
- 訪問看護計画書
- 訪問看護報告書
- 訪問介護情報提供書
- 医療保険明細書
今すでに使用している書式がある場合には、システムの書式を確認する必要があります。
書類の仕様が全く違うと、システムの導入前後で職員に混乱を招きやすく、新書式への移行は時間も労力もかかります。
独自の仕様がある場合には書式をカスタマイズできるのが便利です。
統計機能の種類や充実
訪問看護システムは経営状況の分析においても、大きな役割を担います。
作成できるデータの種類を確認して、経営分析に必要なデータが作成できるかを把握しておきましょう。
通常、必要データの収集には多くの工数がかかるため、データ連携機能の有無や対応している外部システムを確認することが大切です。
データをCSV出力できる機能がついていれば、そのまま分析にも役立つので、出力機能についても確認が必要です。
アフターフォローの手厚さ
訪問看護システムは「インストール型」と「クラウド型」があります。
インストール型ではセキュリティ性が高く、トラブル時にはメーカーから訪問して対応してもらえます。
ただし、訪問までには時間がかかることもありますし、報酬の改定が起きた時にシステムのアップデートも訪問を待たなければいけません。
一方でクラウド型では、トラブル時の対応は遠隔サポートが中心です。
パソコンに詳しくない職員のみの場合には、トラブルが起きた時の対応に不安があるかもしれません。
データはシステム会社で管理されるので、災害時に破損する心配がなく、初期費用もインストール型に比べると抑えられるというメリットもあります。
訪問看護システム導入時の注意点
訪問看護システムを導入する際には、業務フローの見直しや職員への研修が必要です。
特に以下の2点に注意して、導入時の研修やルール設定を考えておきましょう。
スタッフの個人情報の取り扱い方に注意
訪問看護システムでは、訪問先の患者だけでなく他の利用者のカルテ情報も閲覧できます。
訪問先に端末を忘れてしまった場合や、その場に置いて他の作業をしている間、画面にロックがかかっていないと、他の患者様の情報が漏洩しかねません。
端末使用後には必ず画面をロックすることや、ストラップを手首と端末に装着するなど、個人情報の取り扱い方にあらかじめ漏洩対策を講じておく必要があります。
特に、常に個人情報を扱っていると、個人情報の取り扱いへの注意が薄れてしまうこともあります。
訪問看護システムの使用を通じて、個人情報の取り扱いへの注意喚起も進めていきましょう。
端末の使用方法やルールの設定
端末を使って個人的な興味関心事を検索した時に、ウイルスに侵入されてしまったという事態も起こりえます。
システムや業務に支障が出るようなトラブルを防ぐためにも、「私用での操作をしない」といったルール決めが必要です。
また、紛失時の連絡先、トラブル対応の責任者などもあらかじめ決めておいた方が、万が一トラブルが発生した際にも対応しやすくなります。
端末の紛失時にはデータの削除や画面操作のロックを遠隔操作で可能かどうかなどもシステム会社に確認してみましょう。
訪問看護は条件により、医療保険(訪問看護療養費)と介護保険(介護給付費)の双方による請求が可能な特殊な業態です。国が主導し、医療・介護双方の情報共有円滑化が叫ばれるなか、まさにうってつけの業態といえるでしょう。そして、こういった訪問系の業態では訪問毎に単価が設定されるため “訪問効率を如何に高めるか?” が経営上においても非常に重要です。国の思惑と経営安定化の両側面に沿うためにもこういったシステム導入は必須といえるでしょう。早めの導入を検討していきましょう。
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ワイズマンの訪問看護ステーション管理システムSP
訪問看護事業者向けソフト「訪問看護ステーション管理システムSP」では、訪問の予定確認や実施報告、記録業務をタブレットから現場で全て完結できます。
今すぐ確認したいという情報も確認でき、連絡事項も即座に共有可能と、訪問看護に必要な一連の機能を取り入れています。
また、手書き情報の読み込みが可能なので、既存データの集積も可能です。
介護保険サービスと医療保険サービスを一連管理
医療保険だけでなく、介護保険請求業務も可能なので、同一患者様の多岐にわたる請求業務も一元管理できます。
また、請求書ごとに色分けすることで、医療保険が切り替わった場合も判別がしやすいでしょう。
介護保険請求業務、医療保険請求業務のほかに、利用料の合算や療養費明細書の作成も可能です。
訪問看護計画書も作成可能
下記の医療文書の作成が可能です。
- 訪問看護指示書
- 訪問看護計画書
- 訪問看護記録書
- 訪問看護報告書
- 訪問看護情報提供書 など
このほか、集計データも利用実績や利用者一覧・個票など集計帳票を出力できます。
月ごとのデータ作成ができるので、事業所や利用者様、スタッフの状況管理に役立てられます。
より良いサービスに豊富なオプションも
訪問看護ステーション管理システムSPは、訪問看護のより充実したサービスを目指すために、オプション機能も提供しています。
ケア記録オプション
患者の健康状態の記録をグラフ化することで、状態の変化と問題点との相関性についてより詳しく状況を把握できます。
申し送り機能は短時間で申し送り事項をもれなく把握できるようになっているので、業務がよりスムーズになります。
インシデント管理には、ケアの記録や計画を事業所ごとの報告書に近い形式で出力できます。
すぐろくHome
画面が見やすく、直感的に操作しやすいスマートデバイスでより効率的に業務が進められます。
訪問に関する計画・記録・報告全てがデバイス上で完結できるので、移動のスキマ時間も無駄になりません。
まとめ
本記事では、サービス向上と業務効率化にこれから必須となる訪問看護システムを解説してきました。
2024年の原則電子化に向けて、訪問看護の現場において今後も欠かせない存在となっていきそうです。
訪問看護システムではスムーズな情報共有や入力処理がもっとも検討すべきポイントになってくるでしょう。
提携先の施設・機関と連携してよりよいケアに役立つアイテムとなるよう、導入に向けて検討を進めてください。
こちらの記事が各事業所様の問題解決の第一歩となれば光栄です。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。