【名南経営の人事労務コラム】第30回 有期雇用者の雇用管理注意点

2023.09.21

 多くの職場において、パートタイマー等の非常勤職員は戦力でもあり、どこの職場においても大変重宝される人材ではないかと思います。限られた時間や曜日に集中的に働き、その動き等も密度高く効率的であることも少なくないことから、中には正職員以上に高いパフォーマンスを発揮している方もいるのではないでしょうか。そうしたパートタイマー等の非常勤職員は、通常、有期雇用契約による雇用契約を締結していますが、その雇用契約の管理が不十分であるケースも散見されます。

 まず、多くの職場で見られるのが有期雇用契約の更新管理の曖昧さです。中には、雇用契約が既に終了しているにもかかわらず、働き続ける本人に対して雇用契約更新後の雇用契約書を渡すといったケースもあります。こうした問題の背景には、複数のパートタイマー等の非常勤職員を抱えており、個人毎に契約更新日が異なることで管理を失念してしまったということにありますが、すべてのパートタイマー等の雇用管理を4月1日を起算日として年1回と管理をする方法に切り替えていくことによって防止ができます。

 もっとも、特に高齢職員の場合には、更に1年間の雇用契約を更新すること自体が不安となることもあります。最近では75歳を超えて働く職員を抱えることもあることから、そういった場合です。そのような場合もあることから、70歳までは雇用契約期間を1年間による更新制とし、70歳以降は6ヵ月毎の更新制にするという方法も考えられます。

 また、雇用契約の更新にあたっては、その更新をしない可能性があれば、雇用契約書においてその記載をすることが求められていますが、曖昧なあるいは抽象的な表記によって実際に不更新とする際にトラブルが発生することがあります。厚生労働省のパンフレット等には、トラブル防止の観点からサンプル例として、雇用契約の更新の判断材料として「契約期間満了時の業務量による」「労働者の勤務成績、態度による」「労働者の能力による」等といった定めが列挙され、実際にその内容と同記載をしている施設も少なくありませんが、その裏付けとなる運用は是非心がけておきたいところです。

 というのも、「勤務成績や態度による」と定めていても、本人は指摘や指導を受けるレベルではなくむしろ自分は大変頑張っていると思っていることもあるでしょうし、「能力による」とあったとしても、そもそもしっかりと業務を教えてくれていない、といったことで労使双方の認識がズレてしまうことがあります。そのため、それを裏付けるために、雇用契約が更新されない勤務態度や態度とはどういったことか具体的に列記したり(例:常に反抗的で所属長の指示を無視する等)、能力面についても期待する能力(例:3ヵ月目には○○ができている等)もわかりやすく提示しておきたいところです。

 更には、労働契約法改正に伴って有期雇用契約が通算で5年を超えて繰り返される場合に対象職員からの申し込みにより無期転換契約へと転換できる制度が既にスタートして久しいですが、就業規則等にそのルールが記載されていない等によって制度そのものが周知もされておらず、職場内の誰も何もわかっていないというケースも散見されます。2024年4月以降は、労働条件の明示にあたって雇用契約の更新回数の上限等を追記することが求められますのでこの問題は解消される可能性はありますが、パートタイマー等おんみならずすべての職員が安心して中長期に亘って働いてもらうためには、どのようなキャリアが歩めるのか(例:有期雇用契約は最大3年間としその後正職員登用が可能等)といった点も示していくとよいのではないかと思います。

服部 英治氏

社会保険労務士法人名南経営 ゼネラルマネージャー

株式会社名南経営コンサルティング 取締役
保有資格:社会保険労務士

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