【名南経営の人事労務コラム】第31回 年次有給休暇の取得促進

2023.10.12

 働き方改革の一環で労働基準法が改正となり、2019年4月から年次有給休暇の5日間の取得義務化がスタートしました。対象は年次有給休暇が10日以上付与される職員となり、対象者には有期雇用契約者等のパートタイマーも含まれることになります。こうした流れを受けて多くの事業所では、職員の年次有給休暇の消化率が上昇したといった状況がみられますが、一方で医療福祉業界においては、慢性的な人材不足を背景に年次有給休暇を取得したくてもできないといったケースが少なからず散見され、2019年4月からの労働基準法改正に十分対応できていないといった事業所もあります。こうした未対応は、労働基準法違反となり、労働基準監督署から是正指導の対象となるのみならずケースによっては罰則(※1)が適用されることもありますので、確実に取得を促進させたいところです。

 ところが、職員を管理する立場で考えると職員に年次有給休暇を取得されると業務が回らないといったケースも発生することから、取得にあたって消極的姿勢の管理者が少なくありません。その考えはわからないでもありませんが、そうした業務の過重性を解消し、仕事の在り方や推進方法を見直す契機にもなるわけですので、すべての事業所が年次有給休暇の5日間の取得義務化に向けて対応しなければならないのは言うまでもありません。

 さて、その促進方法ですが、様々な策によって講じることができます。例えば、年5日間の取得義務ということでこの日数は最低限の日数であるものの年次有給休暇の付与更新日間際に取得しようとすると前述した業務が回らないということが発生しますので、2ヵ月に1日は取得してもらうという方法を現場において徹底してもらえれば確実に遂行することができます。勤務シフトを組む段階で対象者には2ヵ月に1回は必ず取得してもらうために予め勤務シフトに入れてもらうわけです。

 また、年次有給休暇の計画的付与という方法を採り入れることも有効でしょう。年次有給休暇の計画的付与とは、予め労使間で労使協定を締結し、その協定において定めた日において強制的に取得をしてもらうという方法であり、付与される日数から5日を除いた日数をその対象とすることができます。この労使協定については、フロアごとで締結をしたり、小さな小単位によるグループごとで締結をしたり、職員個人別で締結をしたりすることができ、日にちについても具体的な日にちを指定する方法もあれば、7月1日から31日の間に職員が希望する日に1日といったような記載もできます。そうすることで確実な取得が実現できます。

 更には、1年に1回、職員全員にリフレッシュ休暇として数日間程度連続した日数を年次有給休暇として取得してもらうという方法もあります。これは、例えば、職員自身の誕生日等の特定の日にちに連続する日について、労使協定によって指定して取得してもらうという方法です。

 いずれにせよ、年次有給休暇の取得は、人材確保難が続く医療福祉業界において外部から人材を誘引する材料にもなり、取得が促進されている事業所には人材が集まりやすく、取得に消極的な事業所には人材が集まり難くなることは容易に想像できますので、時代の趨勢と割り切って取得促進に向けて舵を切る必要があります。

(出典/厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得わかりやすい解説」)

https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdf

服部 英治氏

社会保険労務士法人名南経営 ゼネラルマネージャー

株式会社名南経営コンサルティング 取締役
保有資格:社会保険労務士

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