訪問看護記録システムを導入するメリットとは?料金形態や比較ポイントを解説
2023.10.03
訪問看護事業において、以下のような課題をかかえていませんか?
- 自宅から事務所、訪問先、事務所という移動が負担になっている
- 訪問先でメモしてきた記録を事務所で記録し、時間がかかる
- 訪問先で患者の様子に変化があっても、医師に説明しにくい
- 気になっていることを気軽に医師に相談したい
訪問看護では上記のような悩みを抱える看護師や事業所が多く見受けられます。
ここで挙げたような課題のサポートとして期待できるのが「訪問看護記録システム」です。
訪問看護記録システムをうまく取り入れれば、課題解決のみならず、訪問サービスの品質向上も期待できます。
本記事では、訪問看護記録システムの導入メリットと料金形態、比較ポイントを解説します。
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目次
訪問看護記録システムとは
訪問看護記録システムとは、訪問記録の作成や管理、レセプト業務をサポートしてくれるシステムです。
手作業での記載が主流だった事務作業を効率化でき、作業時間の短縮につながります。
また、地域包括ケアシステムの構築においても、電子カルテなどのデータとの連携が取りやすくなる点で有効とされています。
今後さらなる普及が期待される理由
訪問看護は、ほかの医療分野に比べ電子化の普及が遅れています。
2020年時点でも、訪問看護の情報共有に使用するのは「デスクトップパソコン」が主流で、タブレットやスマートフォンを使用する事業所は4割程度にとどまっています。
また、ICTやクラウドサービスの使用率が低く、電話や紙で情報を共有する事業者が多い状況です。
こうした背景から、厚生労働省は2024年4月診療分より訪問看護の医療保険分のレセプト請求を電子化することを決定。
これにともない、訪問看護記録システムを使い業務をデジタル化する動きが活発化しています。
参照:介護現場におけるICT環境の整備状況等に関する実態調査|厚生労働省
訪問看護システムの機能
訪問看護システムの機能は、電子カルテシステムにプラスして訪問に関わるスケジュール機能などが搭載されたとイメージするといいでしょう。
より詳しく、訪問看護システムの機能について見てみましょう。
電子カルテ機能
患者情報の記録や管理が可能です。
これまでの診療記録や医師からのオーダリング、看護記録も一元管理します。
訪問看護記録
これまで患者のもとに記録していた体調管理などを記録できます。
体調に変化があれば、医師に情報共有することも可能です。
レセプト業務
日々の看護記録から介護保険請求を自動作成できる機能です。
訪問看護記録システムにおけるレセプト業務では、介護保険だけでなく医療保険の請求にも対応している場合があります。
スケジュール管理
訪問看護では、毎日訪問先が変わったり、スタッフもシフト制であったりするため、細かなスケジュール管理が必要です。
この機能を使えば、システムでスタッフの休み希望などを反映しつつ、訪問スケジュールを作成できます。
また、事業所全体での会議の日程のスケジューリング機能もあります。
報告書・各種帳票の作成
訪問看護では以下のような帳票を作成しなければなりません。
- 訪問看護指示書
- 訪問看護計画書
- 訪問看護記録書
- 訪問看護報告書
- 訪問介護情報提供書
- 医療保険明細書および請求書
これらの帳票を作成するのに、一度の入力ですべての帳票に患者データや訪問記録、訪問予定などが反映されます。
統計データ作成
経営に必要な統計データなどを自動計算・作成してくれる機能もあります。
多くのシステムではCSV出力が可能で、会議資料としても使用可能です。
訪問看護記録システムを導入するメリット 4つ
訪問看護記録システムは、レセプトのオンライン申請に対応するだけでなく、看護スタッフや経営のうえでもメリットがあります。
主に挙げられるメリットは以下の4つです。
- 記録データの一元管理により訪問看護の対応力が向上
- 業務全体の効率化
- 直行直帰が可能となり従業員の働きやすさが向上
- 経営判断の円滑化と精度の向上
それぞれのメリットについて詳しく見てみましょう。
記録データの一元管理により訪問看護の対応力が向上
訪問看護記録をいつでもどこでも見られることで、医師への連携がとりやすくなります。
動画や写真データをアップロードできる機能がついていることが多く、患者の様子を口頭説明だけでなく、目に見える形で共有できます。
また訪問看護では、看護師一人ひとりへの責任が重く、医師への連携がとりにくいことも1つの課題でした。
こうしたスムーズな連携によって、小さな異変にも医師から適切な判断を仰ぐことができたり、よりスピーディーな対応ができたりします。
結果として、より質の高い看護サービスの提供につながります。
業務全体の効率化
訪問先で入力したデータがそのまま訪問看護記録として保存され、作成が必要な書類に自動で反映されるため、業務が効率化されます。
従来は、患者の容体や看護記録を記録するために病院へ戻る必要がありました。
訪問看護記録を活用すれば、訪問先で入力したデータが共有されるため改めて記録を残す必要がありません。
重複していた記録・入力業務を削減できるため、看護スタッフの業務負担を軽減できるでしょう。
さらに、浮いた時間をほかの業務に割けるため、業務全体の効率につながります。
直行直帰が可能となり従業員の働きやすさが向上
電子端末を職員が携帯できるようにすれば、訪問先への直行直帰も可能になります。
自宅から事務所、訪問先、さらに事務所といったルートを踏まないので、自宅と事務所間の移動がカットになり、勤務時間の短縮が可能です。
そのぶん、プライベートな時間を持つことができたり、労力を省くことができたりするので、働きやすい環境につながるでしょう。
働きやすい環境によって、スタッフの定着化も促進されます。
訪問看護などの職種は人材不足が今後もより深刻化すると懸念されてきました。
そのなかで、今いる人材に働きやすい環境を整備し、離職を防ぐことは事業所にとっても大きなメリットとなるでしょう。
今後人材が必要になった場合でも、働きやすい環境、システム化された環境はシステム導入をしていない属人化された職場と差異化をはかれます。
経営判断の円滑化と精度の向上
経営にかかわる統計データはこれまで、手集計で作成することがほとんどでした。
作成には時間と労力がかかるほか、専門知識がないと判断に困ることも多く、事業所ではより良い経営・運営に問題を感じるケースもあるようです。
システムを導入することで、スタッフの稼働率、人件費、訪問状況や今後の出入金の予測なども可視化することが可能です。
これらの統計データを経営判断に活かしやすく、より精度の高い判断をしやすくなります。
訪問看護記録システムの料金形態
訪問看護記録システムの料金には以下のような形態があります。
初期費用の有無
初期費用の有無が1つの大きな違いです。
2年契約などで、初期費用がないものもあれば、契約年数の決まりはなく、初期費用がかかるタイプもあります。
固定制・従量課金制
利用料が月額で決まっているタイプと、総売上に対する割合で課金されるタイプがあります。
運用コストを明確にしておきたい場合には月額固定制のほうが、コストを正確に見積もることが可能です。
また、総売上ではなく、訪問数に合わせて料金がアップする体系をとる場合もあります。
アップデート費用の有無
医療報酬・看護報酬の制度はこれまでも何度も改正を重ねてきました。
今後も、高齢化社会にともなって、これらの報酬制度の変更は必至です。
報酬制度が変更された場合には、システムもアップデートする必要があります。
この場合のアップデート費用が月額の固定費に含まれている場合と、別料金とする場合があります。
固定料金に含まれていれば、イレギュラーなコストがかからないので、経営上、支出の予測が容易になります。
訪問看護記録システムの比較ポイント4選
訪問看護記録システムを導入する際には、どのようなポイントから比較し、選べばいいのでしょうか。
ひとえに訪問看護記録システムといっても、搭載されている機能や操作性には違いがあります。
要点を押さえ、自施設に合ったシステムを選定しましょう。
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対応する帳票の種類
すでに事業所で使用している帳票のテンプレートがある場合、システム導入によって仕様が変わると多くの手間がかかります。
スタッフの混乱を招き、トラブルを起こしかねません。
できれば、帳票などは今の様式を引き継げるようなものや、カスタマイズできるタイプだと便利です。
サポート体制は充実しているか
システムのサポート体制は、重要な判断基準のひとつです。
訪問看護記録システムは日常業務で使用する機会が多いため、トラブルが発生した場合に迅速な対応が必要です。
万が一トラブルが発生した場合に備え、サポート体制が充実しているベンダー企業を選ぶと良いでしょう。
サポートサービスには、電話サポート・メールサポートのほかに、遠隔でシステムを操作し問題を対処するサービスもあります。
電子機器やシステムに不慣れなスタッフが多い場合は、遠隔サポートに対応している方が安心でしょう。
なお、一部で導入〜運用を支援するベンダー企業も存在します。
システムの運用方法や従業員へのトレーニングを支援してもらえるため、システム導入のノウハウが少ない場合は検討してみてはいかがでしょうか。
どれほど入力業務の負担軽減につながるか
システムを導入する一番の理由として、「記録業務の負担軽減・業務効率化」をあげる方が多いでしょう。
訪問先で端末を操作するのに、入力が簡易であることや、画面が見やすいことは大事なポイントです。
入力方法については音声入力や手書き入力が可能なものもあります。
手書き入力は一見、不便なように感じますが、電子機器に不慣れなスタッフが多い場合、タッチペン操作の方が操作しやすい可能性があります。
また、表記を統一したい箇所が選択式で入力できると、スタッフ間で理解の相違が起きにくくなるのでおすすめです。
システム会社の安定性
看護記録は3年間保存しなければならないと定められています。
クラウド型のシステムでは、データはシステム会社のサーバーに保存されるので、もしサービスが終了になると保存も消失してしまいます。
データを保存しておくには別システムを探し直さなければならず、その際にはデータを転記しなければなりません。
データの保存を考慮して、システム会社は安定した企業から選ぶことも大切です。
訪問看護で従事する看護師の多くは、病棟勤務を経て訪問看護へ転職してくる方が多いのではないでしょうか。つまりは、かなりの修羅場をくぐってきた看護師が従事するケースが多く、マネジメントが非常に難しい業態でもあります。こうした業態では、慣れ親しんだやり方を変えることに反発が起き、思うようにICT化を進められないケースもあるでしょう。
ただ、訪問系のサービスは訪問毎に報酬を得られるため、訪問効率の向上が売上アップ&安定した経営のポイントでもあります。業務効率化のメリットを理解してもらう方法として、訪問回数に応じてインセンティブをつけるのもひとつの手です。いずれにしても、システム導入により記録や帳票作成業務を簡略化することは必須です。対策を講じつつ早期の導入を検討していきましょう。
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ワイズマンでは訪問看護記録システムも対応
ワイズマンが提供する「訪問看護ステーション管理システムSP」は、訪問看護の業務にかかわる機能が一通り搭載されています。
大きな特徴に以下のようなものがあります。
医療保険と介護保険をそれぞれ同時請求が可能
煩雑な医療保険請求と介護保険請求を一元管理し、自動で算定します。
サービス利用料や療養費明細書の作成も可能で、訪問看護における請求業務をすべてカバーしています。
特別指示書や難病指定によって医療保険に切り替わった場合には、対象者を色分けするなど、ミスのないシステム作りになっています。
業務に必要な帳票作成ができる
訪問看護における必要書類はすべて作成可能です。
参考に、基本的に搭載されている作成可能な訪問看護計画書は以下の通りです。
- 訪問看護指示書
- 訪問看護計画書
- 訪問看護記録書Ⅰ・Ⅱ
- 訪問看護報告書
- 訪問看護情報提供書 など
医療文書以外にも、経営にかかわる集計データ作成も可能で、月次データの作成を経営判断に活用できます。
集計帳票には以下のようなものが含まれます。
- 利用実績表
- 訪問看護ステーション表
- 利用者一覧票・個票
- 看護体制強化加算 など
上記のような帳票から、事業所や利用者の状況管理が可能です。
必要に応じてオプションを選択
電子カルテをはじめとする医療システムや介護支援システムなど多岐にわたる分野でのシステム開発をおこなっているため、他職種との連携が取りやすくなるオプションも選択可能です。
ケア記録オプション
利用者のバイタル記録や健康状態を記録し、グラフ化して表示します。
毎日の変化を読み取りやすくなり、問題点との相関性などをより詳しく調べられます。
すぐろくHome
記録をよりスムーズにできる、どこからでも入力可能なタブレットです。
タッチ操作なので、電子機器が苦手という人でも感覚的に使えるタイプです。
事業所側にタイムリーに共有できるので、訪問先で困ったことがあってもすぐに状況を知らせて相談できます。
記録業務までタブレット1台で完結できるので、訪問先や移動時間に都度入力し、業務をより効率化させてくれます。
他の医療・介護システムとの連携も可能なので、事業所のサービス内容に合わせて連携して使用するのもいいでしょう。
まとめ
今回の記事では、訪問看護記録システムの機能や料金体系など、導入を検討する際に参考にしたい情報をまとめました。
高齢化社会では医療と介護の両面からのサポートを必要とする人も増え、今後ますます訪問サービスの需要が増すと予想されます。
そんななかで、人手不足でサービス内容が低下したり、スタッフの負担が大きくなって離職になったりする事態は避けたいところです。
今後もより良い環境でスタッフが訪問看護に従事し、利用する患者に質のいいケアを提供するためにも、訪問看護ケアシステムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。