【医療業界動向コラム】第60回 急性期から慢性期まで、評価の拡充が期待される栄養管理
2023.09.19
※このコラムは2023年9月19日時点の情報をもとにしております。
令和5年9月6日、令和5年度 第6回 入院・外来医療等の調査・評価分科会が開催された。8月10日の議論に次いで、各入院医療に関する現状と評価の方向性について議論すべく、下部組織であるDPC/PDPS等作業グループと診療情報・指標等作業グループにおける分析結果・報告を基に議論された。ここでは、急性期~回復期~慢性期の横のつながりでの栄養管理に着目してみたい。
骨太方針2023には、リハビリテーション・栄養管理及び口腔機能連携を推進するとの力強い記載がある。とりわけ注目を集めているは栄養管理だろう。口から食べることで栄養補給し、栄養価を高めることでリハビリテーションの効果や闘病意欲を高めることにつながる。栄養管理はまさにその中核にあるもの。そのため、近年の診療報酬改定では栄養に関する評価が入院、外来、在宅と拡充してきており、さらに早期介入を推進すべく、高度急性期の領域、回復期の領域など領域を問わずに評価されている(図1)。
例えば、前回診療報酬改定では「早期栄養介入管理加算」の対象が拡充された。その結果、届出割合が大きく増加している(図2)。
ただ、届出をしたいものの、管理栄養士の採用・配置が難しく届出を断念している病院もある。栄養管理の必要性・重要性については理解が進んでいることもあり、管理栄養士の配置については高度急性期・回復期の領域だけではなく、急性期一般においても新たな評価が十分に考えられるのではないかと予感される。
そして栄養管理でいえば、栄養サポートチーム加算がその代表だといえる。近年は届出が頭打ちになっていること(図3)、療養病床での届出が少ないことが指摘されている。
特に療養病床では、中心静脈栄養を長期間行っている患者がまだ多くあり、身体的拘束や感染の観点から、腸管の機能が使えるのであれば経管栄養への移行を促すような仕組みなども検討されているところ。療養病床においても栄養サポートチームが機能していることでそうした対応にも効果があると期待される。とはいえ、療養病床はマンパワーも限られている。そこで、栄養管理委員会を親として、口腔ケア・褥瘡ケア・摂食嚥下対策を子(下部組織)とした委員会活動の合理化などを考えていくことなどを検討していきたい。また、病棟での多職種連携で栄養や口腔に関する連携が少ないことも指摘されている(図4)。
委員会活動の合理化を進めることで、こうした問題の解消にもつながり、スタッフの負担軽減、患者情報の共有化にもつながるだろう。
回復期リハビリテーション病棟においては、入院料1では管理栄養士による栄養管理計画への参画などが求められているが、その効果が示されFIMの利得にも良い影響があったことを伝えている。入院料1以外での配置の要件化なども検討されると共に、他の病棟機能での配置も促されていくことになりそうだ。
その一方で、回復期リハビリテーション病棟では経腸栄養からの離脱に大きく関係する嚥下機能検査を実施していない病棟が多く存在することが明らかにされている(図5)。
療養病棟に関する議論でも同様の話題があったが、嚥下機能検査の実施を求めていくような見直しが考えられそうだ。
その他にも、栄養情報提供加算や入院栄養食事指導料の実績が伸び悩んでいることなど指摘もされている。病院の機能に関係なく、栄養管理・栄養マネジメントに対する考え方、そして院内で管理栄養士が活動しやすい環境整備が、病院経営における病床稼働率及び医療業収入に、また連携先医療機関・介護施設における患者の予後・在宅復帰に大きく影響してくることを意識しておきたい。
山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員
1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。