【医療業界動向コラム】第62回 地域包括ケア病床と障害者施設等入院基本料に求められる「適正化」の方向性

2023.10.10

※このコラムは2023年10月10日時点の情報をもとにしております。

令和5年9月29日、第8回 入院・外来医療等の調査・評価分科会が開催され、診療報酬改定に向けて、働き方改革・入院医療(地域包括ケア病床、慢性期病床)・横断事項(救急医療管理加算、短期滞在手術等基本料、データ提出加算など)について議論された。本稿では、入院医療(地域包括ケア病床、慢性期病床)についてポイントを確認する。

地域包括ケア病床に関する今回の議論では、入棟する患者像に合わせた評価の在り方について踏み込んだ調査結果を基に議論が進められている。まず取り上げられているのが、短期滞在手術等基本料3の扱いについて。地域包括ケア病床を有する病院の多くの病棟・病室では短期滞在手術等基本料3のみを算定する患者の割合は0%だが、10%を超える病院が約15%あることが明らかになった。さらに、50%を超えている病院で分母が50以上の8病院(DPC対象病院は除く)を見てみると、急性期一般入院料1の病院が3施設、急性期一般入院料4の病院が2施設あることが確認されている(図1)。

図1_短期滞在手術等基本料3を算定する患者割合.jpg

院内転棟割合等で優位になるように利用されていることなど考えられるのではないだろうか。次回改定では、DPCでの扱いのように地域包括ケア病床に関する数値要件の計算対象から除外していく可能性が高まっているといえるだろう。

また、サブアキュート型かポストアキュート型か、評価のメリハリをつけていくことを念頭に、救急搬送を積極的に受け入れる病院では看護職員が多く配置されていること、また入院期間が長くなれば医療資源投入量は漸減していくことが示されている(図2)。

図2_入院日数に応じた医療資源投入量

こうした資料から読み取れることとしては、二次救急等の対応ができる病院への手厚い評価やDPCや急性期充実体制加算などのように入院期間に区分を設けて、診療報酬点数を設定するといったことだろう。地域包括ケア病棟は、在宅医療への取組も期待されていることを改めて確認し、病床稼働率向上の取組がより必要となり、外来におけるかかりつけ医機能への取組を検討して、退院後も患者との関係を継続し続けていくことで病床稼働率を維持するための仕組み創りを考えておくことが必要だろう。

慢性期入院についても議論されているが、今回は障害者施設等入院基本料と特殊疾患病棟入院料について議論された。 いずれの病棟においても、重度の肢体不自由児・者、脊髄損傷等の重度障害者、重度の意識障害者などといった入院患者割合が「概ね」一定程度いることが求められている。「概ね」であることが理由なのか、求められている一定程度の割合をクリアしていない病院が存在していることから、「概ね」という表現自体をなくし、厳格化することなど検討される見通しだ。また、出来高算定が可能な障害者施設等入院基本料2-4で先の一定程度の割合をクリアしていない病院では慢性腎不全の患者がよく見られることが分かっていることも報告された(図3)。

図3_障害者施設等入院基本料2-4に入院する患者の傷病名

療養病棟と障害者施設等入院基本料における透析患者に関するレセプトを確認したところ、障害者施設等入院基本料の方が高くなっていることも合わせて明らかにされた(図4)。

図4_透析患者に関わる診療費

前回の改定では重度の意識障害を有さない脳卒中患者については、同じ慢性期で評価に差が出ないように見直されたところだが、今回、透析患者についても見直しが入る可能性が高まったといえるだろう。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。

https://www.hckn.work

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