服薬支援システムの導入効果|活用例と誤薬防止のためのポイントを解説
2023.10.31
薬の服用に関するトラブルは、患者・利用者の健康や命に直結する重大な問題です。
誤薬トラブルを防ぐための取り組みとして、服薬支援システムの導入が注目されています。
しかし、なかには服薬支援システムの導入効果や活用例をつかめていない方も多いでしょう。
本記事では、服薬支援システムの導入効果について、現場での運用例を交えながら解説します。
なお、株式会社ワイズマンでは介護ソフトの入れ替えを検討している方に向けて「介護ソフト選びガイドブック」を無料配布しています。
介護ソフトの導入時によくある問題と対策についても記載していますので是非ご活用ください。
目次
防止が難しい誤薬トラブル!なぜ無くならない?
誤薬トラブルは、介護現場で大きな問題となっています。
北海道が発表した資料によると、道内の老人福祉施設等で発生した事故総数8,840件のうち、約4割の2,973件が誤薬によるものと報告されています。
多くの施設は、二重三重のチェック体制を取るなど改善に努めていますが、誤薬トラブルが無くならないのが現状です。
一体なぜ、誤薬トラブルは無くならないのでしょうか。
ここでは、意識・プロセス・改善の方法の3つを軸に、誤薬トラブルの原因を紹介します。
自施設で誤薬トラブルの改善を行っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
参照:令和3年度老人福祉施設等における事故報告集計・分析結果
意識の問題
服薬支援で発生した誤薬トラブルの原因として一番に挙げられるのが、意識の問題です。
日常的に多くの利用者と接する中で、繁忙さからくる疲れやルーチンワークによる油断が、誤薬の原因となることがあります。
ただ、ここで注意すべきなのは、誤薬トラブルの発生原因には個人の意識だけではなく、組織の意識も関係している点です。
仮に、従業員一人一人へ個々に周知徹底しても、煩雑な業務中であれば誤薬の発生を防止できないでしょう。
したがって、誤薬トラブルの発生を防止するには、個人のマネジメントはもちろん、組織のマネジメントも必要です。
例えば、定期的に研修や教育を実施したり、服薬支援時の人員配置を見直したりと、個人だけでなく組織全体でトラブルの改善に努めることが大切です。
従業員同士のコミュニケーションを促し、お互いに注意喚起しあえるような体制を目指しましょう。
プロセスの問題
次に、プロセスの問題です。
服薬支援のプロセスにミスの可能性が潜んでおり、偶然それらが連鎖してトラブルに至るケースもあります。
例えば、「本人確認のために利用者の氏名を声に出して確認する」プロセスをとっているとします。
一見、これによって利用者の取り違えを防止できそうですが、以下の状況が加わると、取り違えの発生リスクは高まります。
- 利用者が認知症を患っている
- ショートステイで訪れた利用者
- 同姓同名の利用者がいる
上記はあくまでも一例ですが、誤薬トラブルの発生原因を分析すると、このようなプロセスの穴による発生は多く見られるでしょう。
誤薬トラブルの発生を改善するには、何が原因でどのように間違えたのかをしっかりと分析することが重要です。
改善方法の問題
誤薬トラブルを防ぐためにさまざまな方法が考案されても、現実的には根本的な問題解決に至らないケースが多くあります。
そもそもの問題として、ヒューマンエラーが限りなく起こりにくい仕組みを導入しない限り、誤薬トラブルはいつまでもなくなりません。
限りなく人の手を介さずに服薬を支援する方法を確立するには、服薬支援システムの導入が効果的です。
近年、誤薬トラブルを大幅に減少させるための新しい技術やシステムが続々と開発されています。
例えば、誤薬検出システムや、薬のバーコードをスキャンして正確な投与をサポートするツールなどもあります。
複数のスタッフによるダブルチェックなど、人の手を前提とした改善の方法から脱却し、根本的な解決を目指しましょう。
誤薬の発生を抑える服薬支援システムとは?
誤薬トラブルを防ぐための有効な手段として、近年、服薬支援システムが注目されています。
このシステムは、利用者の服薬をサポートするための機能を多数備えており、誤薬の主な原因となる「利用者の取り違え」・「薬の取り違え」「飲み忘れ」を防ぐ仕組みが備わっています。
服薬支援システムの導入には、誤薬のリスクを大幅に減少させる効果が見込まれています。
また、業務効率化の観点から見ても、手書きで行っていた服薬予定表や管理表の作成時間が大幅に短縮されるメリットもあります。
ここでは、そんな服薬支援システムの特徴について詳しく見ていきましょう。
特徴1.バーコード・QRスキャンでミスを防止
近年の服薬支援システムは、医療・介護現場における誤薬のリスクを軽減するためにさまざまな工夫が凝らされています。例えば、バーコードやQRコードを読み取るだけで、スタッフ・利用者・薬を識別できるなど。
スタッフ、利用者、薬をそれぞれモバイル端末で読み込むだけで、誰がどの薬をどのタイミングで服用するのかを正確に把握することができます。
この仕組みにより、渡し間違いや渡し忘れといった誤薬の主要な原因を、大幅に削減できるでしょう。
万が一誤りがあった場合は、その理由も同時に表示されるため、ミスの原因を迅速に特定でき適切な改善策を講じられます。
さらに、服薬の記録はサーバーに保存され、データとして管理できます。
CSVファイルで出力したり、関係機関へ共有したりも可能です。
服薬支援システムの導入は、スタッフの業務負担を軽減し、より安全な服薬支援を実現する一助となるでしょう。
特徴2.服薬状況をデータベースで管理
服薬支援システムの中核を成すのが、服薬状況をリアルタイムで管理するデータベース機能です。
このデータベースには、利用者がいつどの薬をどれだけ服用したのか、また次の服用時刻はいつか、といった詳細な情報が記録されています。
介護スタッフはこの情報をもとに、利用者の服薬の遵守状況を確認し、必要に応じてアドバイスや指導を行うことが可能です。
さらに、このデータベースはクラウド上で管理されているため、どこからでもアクセスして情報を確認できます。
また、データベースの活用により、利用者の服薬状況や健康状態の変化を長期的に追跡することで、そのデータを基にしたケアプランの作成・医療戦略の立案につながります。
特徴3.通知機能で飲み忘れを防止
服薬支援システムの通知機能は、服薬のリマインダーとして効果的です。
この機能を活用することで、設定した時間になると介護スタッフのスマートフォンやタブレットに通知が届きます。
通知には、服薬の時間や薬の種類、服薬のタイミングなどの詳細情報が記載されているため、利用者の正確な服薬をサポートできます。
なお、株式会社ワイズマンではすでに介護ソフトを導入しているが、介護ソフトの入れ替えを検討している方に向けて、「介護ソフト選びガイドブック」を無料で配布中です。ダウンロードしてご活用ください。
服薬支援システムを活用した介助の流れ
服薬支援システムの導入は、現代の医療・介護現場において、非常に注目されている取り組みの一つです。
このシステムは、利用者の安全を第一に考え、誤った薬の投与を防ぐためのものであり、多くの施設がその効果を実感しています。
そんな服薬支援システムは、介護の現場でどのように活用されるのでしょうか。
ここでは、以下3つの工程に分類し、服薬支援システムを活用した場合の介助の流れを解説します。
- 与薬準備
- 与薬確認
- 服薬記録
1.与薬準備
まず、システム上で利用者の服薬予定を確認します。
このステップは、利用者がどの薬を、いつ服用するのかを明確にするためのものです。
次に、必要な薬を準備し、バーコードやQRコードリーダーを使用して、薬の情報を正確に確認します。
この確認作業は、誤薬のリスクを大幅に減少させるためのものであり、非常に重要です。
2.与薬確認
次に、利用者に与える薬を渡す前に、システム上で薬・利用者・与薬タイミングの再確認を行います。
手順は簡単で、スタッフ・薬・利用者に割り当てられたQRコードを専用端末でスキャンするだけです。
このステップにより、「利用者の取り違え」・「薬の取り違え」による誤薬のリスクを大幅に低減することが可能です。
また、システムには顔写真や名前を登録することができるため、新人スタッフでも安心して作業を行えます。
服薬支援システムを活用することで、従来2人で行っていたダブルチェックの作業が1人で効率的に行えるようになります。
これにより、他の作業に手を取られることなく、次の服薬の準備に進むことができ、利用者を待たせることがなくなります。
3.服薬記録
前述した、QRコードのスキャンによって、服薬記録がサーバーへリアルタイムに保存されます。
具体的には、どの薬を何時にどのような量で服用したのか、また誰が担当したのかなどの情報が詳細に記録されます。
そのため、管理者が服薬状況を確認すれば、飲み忘れを早期に発見できる仕組みです。
なお、服薬記録や配役ミスなどの情報は、履歴として再確認が可能です。
何らかのミスがあった場合には、原因の特定やスタッフの指導などに活用できます。
服薬支援システムで誤薬を防止するためのポイント
服薬支援システムは誤薬トラブルの抑止力として効果的ですが、正しく運用しなければ十分な効果は期待できません。
服薬支援システムを活用して誤薬トラブルを防止するには、以下のポイントが大切です。
- システムを活用した服薬支援のプロセスを徹底する
- マニュアルやプロセスを定期的に見直す
- 誤薬のリスクを共有しスタッフをマネジメントする
ここでは、上記のポイントについて詳しく紹介します。
システムを活用した服薬支援のプロセスを徹底
システムを導入した後は、その機能を十分に活用するためのプロセスを徹底することが重要です。
定期的な研修や、スタッフ間の情報共有を行いながら、新たな作業手順を浸透させましょう。
具体的には、システムの操作方法や新機能の紹介など、スタッフがシステムを効果的に使用できるような研修を定期的に実施することをおすすめします。
また、スタッフ同士での情報共有の場を設け、システムの利用に関する疑問やトラブルを共有し、解決策を見つけ出すことも大切です。
マニュアルやプロセスを定期的に見直す
実際に服薬支援システムを運用すると、導入時に作成したマニュアルやプロセスには不備や改善点が出てくるでしょう。
そのまま放置してしまうと、前述した「プロセスの穴」による誤薬トラブルにつながる恐れがあります。
半年に一度や年に一度のペースで、マニュアルの内容をチェックし、新しい情報や変更点を追加するとよいでしょう。
また、介護スタッフからのフィードバックを収集し、マニュアルの改善点を見つけ出すことも大切です。
現場を最も理解している介護スタッフの意見は、問題点の把握・改善に効果的なためです。
介護スタッフの助けも借りつつ、マニュアルやプロセスの最適化を目指しましょう。
誤薬のリスクを共有しスタッフをマネジメント
服薬支援システムを活用しても、最終的に手を動かすのは「ヒト」です。
誤薬トラブルを引き起こさないためには、スタッフ一人一人の緊張感・意識が欠かせません。
そのため、定期的に誤薬の事例やその原因を共有するミーティングを開催するなどして、スタッフの意識を常に高める取り組みを行うのも良いでしょう。
また、このような取り組みでは、スタッフ同士のコミュニケーションが促進され、チームとしての一体感が生まれるなど副次的な効果も期待できます。
75歳以上高齢者の6割超が5種類以上の薬を内服しているというデータもあるように、介護サービス利用者の殆どが多くの薬を服用しています。介護現場の事故報告書やヒヤリハット報告書の多くが薬にまつわるものなってしまうのも致し方無いのかもしれません。服薬が重要なことであることがわからない介護スタッフはいないでしょう。それでも、薬にまつわる事故が多くなってしまうのは、人手が足らないなかでスタッフが服薬管理をおこなう以上必然といえます。つまりは、服薬事故はヒューマンエラーの建付けを脱却しない限り減らすことはできないのです。こういったシステムを活用しヒューマンエラーの要素を極力減らしていくことが重要です。また、同時に利用者の内服薬を再アセスメントし、そもそもの服薬量を減らす観点も求められています。
なお、株式会社ワイズマンでは「介護ソフト選びガイドブック」を無料で配布中です。
すでに介護ソフトを導入していている方も、介護ソフトの入れ替えを検討している方も、自身に最適なプロダクトを選ぶために重要な4つのポイントを解説していますので是非ご活用ください。
ワイズマンソリューションと連携できる「服やっくん」
「服やっくん」とは、株式会社ノアコンツェルが提供する医療・介護システムで、誤薬の主な原因となる「渡し間違い」と「渡し忘れ」を防ぐことに特化しています。
このシステムは、介護施設での誤薬を防ぐためのツールとして注目され、利用者の服薬履歴や薬の情報を一元管理し、服薬支援をサポートします。
また、弊社のワイズマンソリューション(介護ソフト)との連携により、さらに高度な服薬支援が可能です。
「服やっくん」の活用で、介護業務の効率化や、介護施設での服薬トラブル防止が期待できます。
まとめ
誤薬トラブルは、介護現場での大きな問題となっており、その背景にはさまざまな要因が考えられます。
人の手を介する仕組みを構造的に変革させなければ、いつまでも誤薬トラブルはなくなりません。
そこで期待されているのが、服薬支援システムです。
特に「服やっくん」のような高機能なシステムは、誤薬のリスクを低減するだけでなく、介護施設の業務効率も向上させる可能性を秘めています。
ただし、医療現場、介護現場で必要とされる業務システムは、服薬支援システムだけではなく、職員の管理やスケジュールの作成、請求業務など多岐に渡ります。
業務効率化のための総合的なワンストップシステムの導入をご検討中の方は、「ワイズマンシステムSP」×「服やっくん」をご検討ください。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。