【医療業界動向コラム】第67回 情報通信機器を用いた診療、適正に推進を

2023.11.14

※このコラムは2023年11月14日時点の情報をもとにしております。

令和5年11月8日、第562回中医協総会が開催され、入院・調剤・外来について議論された。本稿では、外来について紹介する。その内容は、情報通信機器を用いた診療に関するものである。

〇適正なオンライン診療の推進を

情報通信機器を用いた診療については、推進方針が示されており、今後積極的な促進策が期待されている。しかし、先に公表された診療報酬改定の基本的視点には「ICT」という言葉はあるものの、具体的に「情報通信機器を用いた診療」や「オンライン診療」といった文言は見当たらない。これまでの中医協の議論では、オンライン診療について不適切と思われる事例が報告され議論を呼んでいた。これを考慮すると、積極的に、というよりも適正に推進していく方向になっていこうとしているように思われる。

今回の議論では、オンライン診療の受診者の所在地と受診医療機関についての実際も報告され、急病急変時の速やかな対応のために直接の対面診療ができる体制がないケースが問題視されている(図1)。

図1_オンライン診療の受診歴と医療機関の所在地

地域の事情で、必要な診療科を標榜する医療機関がないなどの特殊な例の場合もあるが、少なくとも緊急時の対面診療を確保する体制の厳格化や、患者の居住地と異なるオンライン診療の提供については一定の制限がかかると考えられる。しかし、その一方で患者のフリーアクセスを守ることも重要であり、忘れてはならない。

妥当とは言い難い処方について、これまでの議論でも取り上げられていた不眠症に関する診療・向精神薬の処方についての実績が示された(図2)。

図2_不眠症に対するオンライン診療の実態

厳密なルールの徹底はもちろんのこと、個別指導の強化も考えられる。

いつ起きるかわからない新興感染症の拡大による受診抑制の場面では、オンライン診療は大きな効果を発揮する。医療機関側から積極的に進めるものではなく、患者からの要望や感染拡大時の利用などに応じて使えるように、環境整備の一環として備えておくべきだ。そのためには、平時からの適正使用を徹底できるルールの見直しが必要である。

〇医療資源が限られた地域での診療、D to P with NやD to P with Dを推進へ

情報通信機器を用いた診療の推進策にもあるように、医療の地域差を埋めるべく、D to P with NやD to P with Dの有用性について紹介されている。医療の地域差の解消の解決策の一つとなる情報通信機器を用いた診療には期待が集まるものの、実際に利用しているケースはまだ少ないのが実情だ(図3)。

図3_へき地等におけるオンライン診療の現況

またD to P with D方式としては遠隔連携診療料がすでに評価されている(図4)が、その実績は非常に少ない。指定難病の確定診断までであることやてんかんの診療の場合は1年の制限があることなど、やや使い勝手が悪い面がある。

図4_遠隔連携診療料

また、そもそもこうした項目の認知度が低いことや、難病診療連携拠点病院など連携先が非常に限られていることなども課題だといえる。

今回の議論では、この遠隔連携診療料について確定診断後の診療でD to P with Dの有効性を認めた事例などが示され、実績が少ないこともあってか、対象患者の拡大などが前向きに検討されていきそうだ。対象が拡充することで恩恵を受ける患者が増え、医療の地域差の解消となることが期待される。その一方で、難病診療連携拠点病院等はもともと数が限られていることもあり、特定の医療機関に負担が集中してしまうことを少しでも軽くするような見直しも期待したいところだ。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。

https://www.hckn.work

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