【介護施設別】人員配置基準とは?計算方法と違反リスクを解説

2024.01.16

介護施設を運営するうえで、適切な人員配置は不可欠です。
適切に人員を配置しないと、法律に抵触するリスクがあるためです。

他方で、介護施設の人員配置基準は注意すべきポイントが多く、どのように対処すべきかわからない方もいるのではないでしょうか。

本記事では介護施設の人員配置基準について、計算方法や法的リスクなどについて解説します。
また、人員配置基準の適正化に役立つツールも紹介するので、ぜひ参考にしてください。

介護施設の人員配置基準とは?

人員配置基準とは、介護施設の利用者数に対して配置すべきスタッフ数の基準を指す用語です。

人員配置基準は各施設が独自に設定するものではなく、厚生労働省が定めた基準を順守しなければなりません。
加えて、介護施設の種類によって設定された数値が異なります。

介護施設にとって、配置する人員の数はサービスの質を維持するうえで意識しなければならないものです。
業務上のトラブルやミスを防ぐうえでも、自施設の適切な配置基準は必ず確認しましょう。

【介護施設別】人員配置基準と計算方法

介護施設の人員配置基準は、施設の種類によって配置すべき人材の人数が異なります。
加えて、施設によっては独自の計算方法で人数を割り出す場合もあるため、自施設の設定は必ず確認しましょう。

本記事では以下の介護施設の人員配置基準・計算方法を解説します。

  • 特別養護老人ホーム
  • 有料老人ホーム
  • グループホーム
  • サービス付き高齢者向け住宅
  • デイサービス(通所介護)
  • 訪問介護

いずれも細かい部分で違いがあるため、正確に把握しなければなりません。
それぞれ順番に解説します。

特別養護老人ホームの人員配置基準

特別養護老人ホームは「介護老人福祉施設」とも呼ばれ、介護サービスや生活環境を提供する施設です。
特別養護老人ホームでは利用者が在宅生活を送れるように、機能訓練・日常生活の支援などを実施します。

特別養護老人ホームの人員配置基準は以下のように設定されています。

職種人員配置基準
施設長1人
医師入所者に対して健康管理および療養上の指導をするために必要な数
生活相談員入所者の数が100人、又はその端数が増えるごとに1人以上
介護職員・看護師・准看護師・常勤換算方法で入所者の数が3人、又はその端数が増えるごとに1人以上

・看護職員の数
①入所者の数が30人を超えないなら常勤換算方法で1人以上
②入所者の数が30人を超えて50人を超えないなら常勤換算方法で2人以上
③入所者の数が50人を超えて130人を超えないなら常勤換算方法で3人以上
④入所者の数が130人を超えるなら常勤換算方法で3人と、入所者の数が50又はその端数が増えるごとに1人を加えた数以上
栄養士1人以上
機能訓練指導員1人以上
調理員・事務員・その他の職員施設の実情に合った数
参照元:特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準|厚生労働省

特別養護老人ホームはリハビリや医療ケアが主軸の施設ではないため、機能訓練指導員や栄養士の配置人数は1人以上です。
加えて、常駐の医師がおらず、月数回の訪問医療で対応している施設も多くあります。

有料老人ホームの人員配置基準

有料老人ホームは要介護者や要支援者など、介護が必要な利用者に向けたサービスを提供する施設です。
有料老人ホームには介護型と在宅型があり、それぞれ受け入れられる入居者の基準が微妙に異なります。

介護型の場合、有料老人ホームの人員配置基準は以下のように設定されています。

職種人員配置基準
管理者1人(兼務でも可)
生活相談員要介護者等:生活相談員=100:1
看護・介護職員①要支援者:看護・介護職員=10:1
②要介護者:看護・介護職員=3:1
※ ただし看護職員は要介護者等が30人までは1人、30人を超える場合は、50人ごとに1人
※ 夜間帯の職員は1人以上
機能訓練指導員1人以上(兼務でも可)
計画作成担当者介護支援専門員1人以上(兼務でも可)
参照元:特定施設入居者生活介護|厚生労働省

有料老人ホームは、利用者が要支援・要介護かによって看護・介護職員の配置基準の比率が異なる点に注意しましょう。

グループホームの人員配置基準

グループホームは「認知症対応型共同生活介護」とも呼ばれており、認知症の利用者に対して日常生活の支援や機能訓練などを実施する施設です。
家庭的な環境と地域住民との交流のもとでケアを行うため、介護保険における地域密着型サービスの1つとして扱われます。

グループホームの人員配置基準は以下のように設定されています。

職種人員配置基準
管理者3年以上認知症の介護従事経験があるうえに、厚生労働大臣が定める研修を修了した者が常勤専従
介護従業者日中:常勤換算で利用者3人に1人
夜間:ユニットごとに1人
(3ユニットの場合、各ユニットが同一階に隣接+円滑に利用者の状況を確認可能+安全対策を取っていれば夜勤2人以上を設置可能)
計画作成担当者事業所ごとに1人以上(介護支援専門員が最低1人)
参照元:認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)|厚生労働省

グループホームは少人数の利用者を対象にした施設であるため、必要な専門職の数があまり多くありません。
また、看護師の配置が義務付けられていない点も特徴です。

他方で、最近は看護師を配置し、医療体制を整えたグループホームが増えています。

サービス付き高齢者向け住宅の人員配置基準

サービス付き高齢者向け住宅とは、地域包括ケアシステムの一環として誕生した、高齢者が安心して生活できるバリアフリー構造の住宅です。
比較的健康かつ自立した高齢者が対象であるため、見守りサービスや生活相談の提供のみが義務付けられています。

他方で、昨今は要介護認定や認知症の入居者に対応できるように、食事や入浴などのサービスを提供する介護型のサービス付き高齢者向け住宅が増えています。

介護型のサービス付き高齢者向け住宅の場合、人員配置基準は以下のように設定されています。

職種人員配置基準
管理者1人
生活相談員要介護者等:生活相談員=100:1
看護・介護職員要支援者:看護又は介護職員=10:1
要介護者:看護又は介護職員=3:1
ただし、看護職員は入居者1〜30人まで1人、入居者31人以上は50人ごとに1人。
機能訓練指導員1人以上
計画作成担当者介護支援専門員が1人以上
参照元:高齢者向け住まいについて|厚生労働省

なお、介護型ではないサービス付き高齢者向け住宅は、介護福祉士や医師など、特定の専門職のいずれかが対応できる状態であれば基準をクリアできます。

デイサービス(通所介護)の人員配置基準

通所介護とも呼ばれるデイサービスは、高齢者の孤立感の解消や健康機能の維持などを目的に、機能訓練や生活支援などを実施する施設です。
利用者は定期的に施設に訪問してサービスを受けるため、デイサービスは家族の介護負担の軽減にも有効です。

デイサービスの人員配置基準は以下のように設定されています。

職種人員配置基準
管理者常勤で1人以上
生活相談員事業所ごとにサービス提供時間に応じて専従が1人以上
看護職員単位ごとにサービス提供時間に応じて専従が1人以上
介護職員・利用者の数が15人までなら1人以上
・15人を超える場合:「(利用者数−15)÷ 5+1人」
機能訓練指導員1人以上
参照元:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準|厚生労働省

デイサービスは利用者がケアを受ける時間帯も踏まえて人員を配置する必要があります。
利用者の訪問が少ない時間帯に人員を配置しすぎると、人件費が過剰に増える恐れがあるので注意しましょう。

訪問介護の人員配置基準

訪問介護は、要介護1以上の認定を受けている利用者を対象に、ヘルパーが生活援助や身体介護などを行う施設です。
また、利用者が通院するための送迎サービスを提供している施設もあります。

訪問介護の人員配置基準は以下のように設定されています。

職種人員配置基準
訪問介護員常勤換算で2.5人以上
サービス提供責任者・訪問介護員等のうち、利用者の数40人に対して1人以上
(原則として常勤専従だが、一部非常勤職員でも可)
・以下の要件をすべてて満たす場合には、利用者50人につき1人
①常勤のサービス提供責任者を3人以上配置
②サービス提供責任者の業務に主として従事する者を1人以上配置
③ サービス提供責任者が行う業務が効率的に行われている場合
管理者常勤で1人
参照元:訪問介護・訪問入浴介護|厚生労働省

訪問介護における常勤管理者は管理職務に従事する役職ですが、業務に支障がなければサービス提供責任者との兼任が可能です。

配置基準を考慮した適切な人員配置を実現するには、システムの活用がおすすめです。
給与やシフトなどの人材管理機能に対応した製品もあるため、紙・Excel管理よりも業務を効率化できます。

介護施設における人員配置の常勤換算とは?

介護施設の人員配置を決める際、常勤換算は気をつけなければならないものです。
本章では常勤換算の意味や、注意すべきポイントなどを解説します。

常勤換算の計算方法

常勤換算とは介護施設で働くスタッフの平均人数を指す用語であり、介護施設の人員配置基準を算出する際に用いられるものです。

常勤換算におけるスタッフは常勤の従業員だけでなく、パートタイマーのような非常勤の従業員も含まれています。
他方で、非常勤のスタッフは勤務時間が異なるため、常勤と同じようにカウントできません。

したがって、常勤換算をする場合、非常勤のスタッフは常勤のスタッフ1人あたりの仕事量に換算されたうえで計算されます。

なお、常勤換算の計算式は以下のとおりです。

常勤の職員の数+(非常勤の職員の労働時間の合計÷常勤の職員の勤務するべき時間)=常勤換算人数

以下のパターンで計算してみましょう。

常勤スタッフA週50時間勤務
常勤スタッフB週50時間勤務
非常勤スタッフC週20時間勤務

上記の数字を計算式にあてはめると以下のとおりです。

2人+(20時間÷100時間)=2.5人

この2.5人が、常勤換算人数です。

常勤換算で注意すべき「働き方」の問題

常勤換算で注意すべきポイントはスタッフの雇用形態や勤務時間だけではありません。
個々のスタッフの「働き方」も念頭に置く必要があります。

例えば、有給休暇や出張は常勤のスタッフだと勤務時間にカウントされますが、非常勤は勤務時間外として扱われます。
ただし、有給休暇や出張が1カ月以上に及ぶと、通常の勤務時間の計算には含まれません。

同様に、育児休暇や産後休暇は常勤のスタッフでも常勤換算には含まれないので注意しましょう。
しかし、就業規則で時短勤務の勤務時間が定められていたり、週30時間以上の時短勤務があったりする場合は常勤のスタッフとして扱えます。

他方で、常勤換算で扱いが難しいものが兼務です。
昨今は複数の施設で兼務をしているスタッフも増えていますが、施設が離れていたり、並行して勤務できないと捉えられたりする場合は、勤務時間を別々に分けて計算しなければなりません。

一方で、「同じ敷地で同一の法人が運営している」「業務を並行しても支障がない」と判断された場合は勤務時間を合計して計算できます。
ただし、市町村によって兼務の常勤換算の基準は異なるので、あらかじめ確認しましょう。

【注意】人員配置基準の違反は処分の対象になる可能性も

人員配置基準は施設を運営するにあたって順守しなければならないルールです。
そのため、人員配置基準を違反すると処分の対象になる可能性があります。

もし適切な人員配置基準を下回る人数のスタッフしか配置していなかった場合、「人員基準欠如減算」の処分が下されます。
人員基準欠如減算とは、当該施設の利用者全員に対する基本報酬を3割カットするものです。

ただし、人員配置基準を下回るだけでなく、虚偽の人員報告を行うと行政処分が課されます。
行政処分は介護請求の一部制限・新規利用者の受け入れ停止などに加え、事業所の指定が取り消されるリスクがある重い処分です。

人員配置基準違反による事業所指定取り消しは決して軽んじられるものではありません。
以下の図を見てみましょう。

参照元:全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料|厚生労働省

上記の図は、厚生労働省が公表している事業所指定取り消しの事由を種類別にグラフ化したものです。
人員配置基準違反は全体の1割にも満たない数字ですが、実際の件数に換算すると平成30年・令和元年のわずか2年間で数十件発生している計算です。

つまり介護施設にとっては人員配置基準違反は発生するリスクが高いものであり、常に注意しなければなりません。

規制改革会議で議論される「人員配置基準4:1」

介護施設にとって人員配置基準は重要なルールですが、現在規制改革会議で比率の変更が議論されています。

従来の人員配置基準は3:1、つまり「利用者3人に対してスタッフ1人の配置」が基準でした。
しかし、現在は段階的に人員配置基準の比率を4:1に変更する方針が検討されています。

4:1、つまり「利用者4人に対してスタッフ1人の配置」は必ずしも人員配置基準の緩和だけを意味するものではありません。
人員配置基準4:1が施行されると、スタッフ1人が対応する利用者の数が増えるため、業務負担が増大する懸念が生じます。

個々のスタッフにかかる負担が増大されば、業務の遂行すら困難になるでしょう。
そうでなくとも、昨今の介護業界は人手不足が深刻化しているため、4:1の変更には反発の声も挙がっています。

ただし、人員配置基準が見直される可能性が高まっている以上、介護施設も対応しなければなりません。
そこで注目されている施策が、ICTによる業務効率化です。

昨今は人手不足の深刻化もあって、多くの介護施設では介護ソフトやロボットなどを導入し、ICTによる業務効率化を推進しています。
この取り組みにより、スタッフの業務負担を減らし、少ない人数でも多くの利用者に対応できる体制の構築を成功したケースも増えています。

もし人員配置基準が4:1に変更されれば、介護業界全体でICTによる業務効率化を推進する動きはより活発になるでしょう。

伊谷 俊宜氏
伊谷 俊宜氏

未曾有の人材不足に喘ぐ介護業界ですが、本文中にもあるとおり人員配置基準の緩和が審議されています。今現在でも介護職員が足らず、高齢者数がピークを迎える2040年には更に69万人の介護職員が必要という途方もないデータを目の当たりにすれば、このような緩和措置は当然であり、むしろ対応が遅すぎるといっても過言ではありません。人員配置基準の要件は今後も緩和されていくでしょう。しかし、直接介護技術はなかなかロボット等に代わりが務まるものではないため、人員配置基準そのものが無くなることはまずあり得ません。むしろ要件を満たすための条件は更に複雑になっていく可能性が高いと考えられます。こうした複雑怪奇な算定要件の計算は、人よりも遥かにシステムの方が優れています。ミスを防ぐためにも積極的に活用していきましょう。

人員配置基準を守り介護業務を効率化するなら「ワイズマンシステムSP」

人手不足が深刻化する状況で、人員配置基準を守りつつ、質の高いサービスの提供を続けることは簡単ではありません。
しかし、ワイズマンシステムSPを導入すれば、介護業務の効率化を実現できます。

弊社「ワイズマン」が提供するワイズマンシステムSPは、書類作成・日々のケア記録・利用者に関する情報分析など、さまざまな業務をサポートする機能が搭載されているシステムです。
加えて、スタッフ同士のスムーズな情報共有も実施できるため、業務中のトラブルの防止にも貢献できます。

ワイズマンSPの活用は、業務の効率化により、少ない人員でも業務を回せる体制を構築するうえで有効な手段です。

人員配置基準を注意して適切な施設運営を

人員配置基準は介護施設を運営するうえで順守しなければならないルールの1つです。

人員配置基準は違反すると人員基準欠如減算や行政処分の対象となり、最悪事業所指定が取り消される恐れがあります。
そのため、人員配置基準は施設の種類によって異なるため、自施設に課せられた基準がどのようなものか必ず確認しましょう。

他方で、昨今は人員配置基準の見直しが検討されており、比率の4:1への変更が議論されています。
人員配置基準の変更に対し、何も用意ができていなければ、スタッフにかかる負担はますます増大するでしょう。

そのため、ICTを通じた業務効率化の実現は、今後の介護業界において重要な課題です。
実際にICTによる業務効率化を目指すなら、ぜひワイズマンシステムSPの導入を検討してください。

監修:伊谷 俊宜

介護経営コンサルタント

千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。

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