【医療業界動向コラム】第69回 医療区分を9分類に細分化へ。リハビリ提供単位、中心静脈栄養に関する区分の見直しをを検討。
2023.11.28
※このコラムは2023年11月28日時点の情報をもとにしております。
令和5年11月22日、第566回中医協総会が開催され、BS(バイオ後続品)を含む後発医薬品とリフィル処方箋・慢性期入院(療養病棟と障害者施設等入院基本料)・精神医療について議論された。ここでは、慢性期入院について確認していこう。
これまで、慢性期入院の療養病棟についての議論で大きなポイントになっていたのは、医療区分2・3を細分化して医療資源投入量にあった評価の検討、他の入院料と比べて入院料Iではリハビリテーションが多く提供されていることへの対応、中心静脈栄養の扱いといったところ。
今回の議論では、医療区分2・3に該当する項目について、さらに「疾患・状態」と「処置」の2つに分けて構成・(中黒)組み合わせたモデルを提示した。従来医療区分1と合わせて、全部で9つの新たな医療区分のパターンとなるが、さらにADL区分もクロスしていくことになるので、入院料は27パターンとなる見通しだ(図1、図2)。
今後、今回のモデルに基づき点数設計などされていくことになるが、従来の入院料との点数変化に伴う収益にも影響が考えられると共に、細分化されることで事務作業も煩雑になる可能性があるため、実際に採用されることになった場合は、一定期間の経過措置が設けらえることになるだろう。
入院料Iでリハビリテーション量が多いことについての見直しの可能性についても検討されている。入院Iでは低くなる入院基本料だが、リハビリテーションの量でカバーしている可能性について指摘されていたことへの対応だ。なお、入院料Iでの平均的なリハビリ提供料は3.22単位/日と明らかにされているが、地域包括ケア病棟での実施量と比べても多く見える(図3、図4)。
医療依存度等が低い入院料でのリハビリテーションに限定した算定への制限を求める可能性は高そうだ。入院料全体に対しての算定制限は可能性としては低いのではないだろうか。リハビリテーションに制限を設けていくことは、最近地方都市で顕著な高齢人口の減少などもあり地域全体にも影響を与えることになる点に注意が必要だ。今後、介護老人保健施設の事業縮小や撤退なども起きてくることが考えられる。リハビリテーションの行き場が限られてくる地域においては療養病棟でのリハビリテーションが求められることもあるかもしれない。地域医療構想調整会議の場などでの話し合いが必要になってくるのではないだろうか。
中心静脈栄養については、常に議論の的になっている。前回改定では摂食機能又は嚥下機能の回復に必要な体制を有していない場合の評価を見直したところだが、内視鏡嚥下機能検査あるいは嚥下造影検査の実施が1件でもある施設では、中心静脈栄養を実施した患者が経口摂取等へ移行する割合が高い傾向などが分かってきており、検査の実施を何らかの評価に組み込むことが考えられる。今回の議論では中心静脈栄養に関するに医療区分について、適応疾患か否かどうかで判別することが提案されている(図5)。
一律に疾患で縛りをかけてしまう、というよりは適応疾患を基に個別の症状・状況で判断する、という方向で検討が進んでいくことが考えられる。なお、中心静脈栄養の留置は身体的拘束にも関わってくる。回復期リハビリテーション病棟でも対応が検討されているように、療養病棟においても対応策の厳格化や身体的拘束を実施している期間の減算対応などの可能性に気を付けておきたい。
山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員
1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。