【医療業界動向コラム】第76回 賃上げへの対応方針。無床診療所には8区分の追加の加算を医療機関が選択へ。入院は150区分の加算となる見通し。

2024.01.23

※このコラムは2024年1月23日時点の情報をもとにしております。

令和6年1月10日、第577回 中医協総会が開催され、診療報酬改定に向けた議論が行われた。賃上げ、再製造単回使用医療機器、孤独孤立に関する精神疾患、看護必要度について議論されている。ここでは、賃上げについて確認する。

賃上げについては、診療報酬改定の基本方針や改定率に関する説明の中でも重要課題として取り上げられている。年末から年始にかけて、賃上げについては入院・外来医療等の調査・評価分科会にて議論されてきていた。今回、厚生労働省からは、初再診料、訪問診療料、入院基本料等といった順で点数設定を行うことを提示し(図1)、必要な点数について検討した結果が公表された。

図1_賃上げ点数設定の流れ

医科の無床診療所については、シンプルに初診・再診料で、訪問診療を行っている場合で訪問診療料(患家と同一建物居住者で違いあり)で点数を上乗せすることを検討している。初診料・+6点、再診料・+2点、訪問診療料(同⼀建物居住者以外)・+28点、訪問診療料(同⼀建物居住者)・+7点となる見通しだ(図2)。

図2_初診・再診料等における必要な賃上げ点数について

しかしながら、透析等を行う診療所などでは、一律の引上げでは賃上げに対応できないケースもある(その逆にもらいすぎのケースも出てくる)ことから、もう少し検討が必要とされた。そこで、令和6年1月17日の令和5年度 第13回 入院・外来医療等の調査・評価分科会で議論が行われ、さらに追加の8区分の加算を設定し(図3)、医療機関に選択してもらうという方針が示された。

図3_無床診療所に対する追加の加算

今回の加算による増収分は賃上げに充当することが求められていること(一時的な賞与などではNG)から、今後の昇給そして今回の加算が継続されるかが不透明であることを考えると、慎重な検討が必要で、医療機関の事情・考えを基に、追加の加算の希望区分を選択してもらうのが望ましいということだ。

病院/有床診療所については、外来にて医科の無床診療所と同様の引上げを行った上で、病床機能・人員配置などに合わせた150区分程度の引上げ点数を設定することとなる予定。事務作業の負担が気になるところだが、入院・外来医療等の調査・評価分科会では簡易に判定できるツールが提供されるとのことだ。

なお、訪問看護については「訪問看護管理療養費」で+780円の引上げとなる予定。また、無床診療所と同様に追加の加算を18区分設定する(図4)。

図4_訪問看護に対する追加の加算

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。

https://www.hckn.work

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