訪問看護計画書とは?発行頻度など作成のルール、ポイントを解説
2024.03.06
訪問看護事業所(訪問看護ステーション)でのサービス提供時には、訪問看護計画書を作成しなければいけません。
訪問看護計画書について、「何を記載すれば良いのか」、「作成頻度はどのくらいか」など疑問をお持ちの方も多いでしょう。
本記事では、訪問看護計画書の作成方法を紹介します。
訪問看護計画の立案、書き方に不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。
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目次
【基礎知識】訪問看護計画書とは
訪問看護計画書とは、訪問看護を提供するにあたり、提供する療養支援の内容を記載したものです。
医師が発行する「訪問看護指示書」にしたがって、提供するサービス内容や今後の計画をまとめます。
訪問看護計画書を作成したら、利用者やその家族へ説明し、同意を得たのちに看護を提供する流れです。
訪問看護計画書のなかでは、利用者の療養上、社会上の課題に対して訪問看護での目標を設定します。
そのうえで、設定された目標に対する問題点、さらに問題点の解決策などを示し、提供する看護サービスを具体的に記載します。
訪問看護計画書作成におけるルール
ここでは、訪問看護計画書の作成や運用時の留意事項を確認します。
訪問看護指示書に沿った内容にする
訪問看護計画書の作成は、医師から発行される「訪問看護指示書」に沿った内容でなければいけません。
これは厚生労働省から発行される「訪問看護計画書及び訪問看護報告書の取扱いについて」で規定されています。
また、訪問看護サービスの利用前に居宅介護支援事業所においてケアプランを作成している場合には、ケアプランの内容も踏まえるようにしましょう。
作成した訪問看護指示書は、利用者・家族に共有し同意を得たのちに、主治医に提出します。
訪問看護計画書の発行頻度・提出期限の決まり
訪問看護計画書は通常、訪問看護指示書が発行されたタイミングや、ケアプランに変更が生じたタイミングで作成します。
「訪問看護計画書及び訪問看護報告書等の取扱いについて」の中では、「定期的に訪問看護計画書及び訪問看護報告書を主治医に提出しなければならない」とされています。
更新の場合は、月末に翌月分の計画書を作成し、利用者・家族へ共有、月初までに主治医へ提出する流れがスムーズでしょう。
一方、初回のサービス提供は、訪問看護計画書を作成したうえで開始しなければいけません。
利用者や家族が安心してサービス開始に望めるよう、先行して計画書を作成、共有しましょう。
訪問看護計画書の保管期限
訪問看護計画書の保管期間は、2年間と定められています。
また、作成した訪問看護計画書は、利用者ごとに保管するよう規定されています。
サービス提供中に保険給付の切り替えが生じた場合には、それも明確になるよう、マーカーの色で判別できるようにするなどの工夫が求められます。
なお、保管媒体についての規定はなく、電子媒体の活用も可能です。
他にも、実地指導などで訪問看護計画書をはじめとする書類の情報開示を請求されることもあります。
常に記録が取り出せるような環境づくりも考慮しましょう。
参照:指定訪問看護及び指定老人訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準|厚生労働省
訪問看護計画書の書き方!7つの記載項目
訪問看護計画書の記載項目は、主に7つです。
なお、令和2年より以前の様式では作成者を記載する欄が設けられていましたが、現行の計画書では廃止されました。
ここでは、令和2年以降に発行されている「訪問看護計画書等の記載要領等について」に沿って、作成内容を紹介します。
①利用者の基本情報
まず利用者の基本情報を記入します。
利用者の氏名や生年月日、住所、要介護認定の状況などが含まれます。
訪問看護事業所向けシステムを取り入れている場合、ここの項目については利用者IDなどを入力、または氏名の検索から自動入力が可能です。
②看護・リハビリテーションの目標
訪問看護サービスの提供によって利用者がどうなることを目指すのかについて記載します。
目標には、利用者・家族がどのようになりたいか、どのような生活を送りたいと考えているかを反映させなければいけません。
また、訪問看護指示書やケアプランの内容も考慮する必要があります。
ケアプランは本来、利用者や家族とのアセスメントを通じて立案されているものですが、訪問看護計画書の作成時にも、改めてアセスメントを行い、利用者や家族の希望を聞き出すことが大切です。
③問題点・解決策・評価
設定した目標に対する問題点や、それに対する解決策を具体的に記入します。
問題点と解決策はペアで成立するように設定しましょう。
解決策については、「観察」「ケア」の2種類に分けて記載する場合があります。
「観察」的解決策は、バイタルサインの確認、内服状況や生活状況の確認などです。
一方、内服管理や内服指導、他職種への情報共有などが「ケア」にあたります。
解決策の記載には、「観察計画」「ケア計画」「教育計画」の3分類を使用する場合もあります。
どのような記載方法を使用するかは事業所内で統一しましょう。
また、評価の欄では、提供した看護サービス自体の評価や、設定している問題点の改善状況などを記します。
評価をするなかで、次回の看護計画に継続すべき内容かどうかの判断も行います。
変更の必要が生じた場合や毎月定期的に更新する場合は、ここで修正した日付を記載してください。
④衛生材料等が必要な処置の有無
脱脂綿やガーゼ、ばんそうこうなど、衛生材料を使用するかどうかについて「有」「無」のいずれかに丸をつけます。
衛生材料等が必要(有)な場合には、必要な処置の内容と材料について、種類やサイズ、数量を具体的に記入しましょう。
例えば、衛生材料には下記が含まれます。
- 使い捨て手袋
- 注射器、注射針
- カテーテル
- ガーゼ、脱脂綿
- ばんそうこう
- テープ
⑤訪問予定の職種
実際に訪問する職員の職種と訪問予定日、もしくは訪問回数を記載します。
看護職員のみの訪問の場合には、この項目の記載は不要です。
記載例は下記のとおりです。
- 1・5・8・15日:看護師
- 3・7・10・18日:理学療法士または作業療法士
もしくは下記のように訪問頻度の記載もできます。
- 看護師:週2回、月・木曜日
- 理学療法士:週1回、水曜日
⑥備考
特記事項がある場合には、備考欄に記載します。
看護サービスの提供時に留意すべき点がある場合にも、備考欄に記載しておきましょう。
⑦事業所の署名捺印
看護計画書の作成日を記入したのち、事業所名と管理者の氏名を記載します。
主治医に提出する時には、管理者の捺印を押した状態で提出しましょう。
参照:「訪問看護計画書当の記載要領等について」|厚生労働省
書類作成を効率化するには、システムの活用が効果的です。
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看護計画書を作成するときのポイント3点
看護計画書を作成する際には、下記3点に注意しましょう。
- 利用者目線、わかりやすい表現を使う
- 課題に優先順位をつける
- 問題解決思考・目標達成思考を両立
それぞれのチェックポイントを解説します。
利用者目線、わかりやすい表現を使う
目標を作成する際の主語は利用者に設定します。
例えば、日中に活動できるようにすることをも目標と設定する場合に「日中活動をさせる」といった表現は利用者が主語になっていません。
「日中活動ができる」といったように、利用者の目線で記載しましょう。
また「全身状態の観察」といった表現でなく、「血圧、脈拍、酸素飽和度(SpO2)、呼吸状態の確認」のように具体的な表現も必要です。
1日に数回、ではなく1日に4~5回など、曖昧な表現でなく、誰が読んでも認識が統一されるようにわかりやすい表現を使用しましょう。
課題に優先順位をつける
訪問看護サービスを利用する方の多くは、課題を複数抱えているケースがほとんどです。
そのため、課題をすべて解決するにはどうすればいいか、と悩んでしまうかもしれません。
複数の課題がある場合には、生命に関わるものや生活の質(QOL)に関わるものを優先します。
通常、優先順位の設定には「#(シャープ)」を使用します。
「#1」「#2」といったように、番号を振って課題の優先順位を明確にしましょう。
問題解決思考・目標達成思考を両立
医療機関での看護においては医学モデルをベースにした看護過程「NANDA-I」などを看護診断として多く使用されています。
これは問題解決思考と呼び、ケアの対象者の課題解決を目的とした考え方です。
しかし、訪問看護においては医学的アプローチだけでなく生活における目標達成に向けたアプローチも必要です。
この場合に、生活モデルをベースにした看護過程である「国際生活機能分類(ICF)」を用います。
ICFは、対象者の心身の機能に環境因子や個人因子といった背景の観点を加え、対象者を分類する考え方です。
心身の機能と対象者を取り巻く背景は双方向に影響し合うため、ICFの考え方を用いることで、障がいや疾病を抱えた方の状態について共通理解を持つことができるとされています。
医療的な視点での問題解決思考と、生活行動をベースとした目標達成思考では、必ずしも課題や解決策がイコールにはなりません。
解決アプローチが異なる場合には、利用者の希望も加味しながら、解決策を立案しましょう。
参照:「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」(日本語版)|厚生労働省
介護保険サービスとして訪問看護計画書を作成する場合は、当然ケアプランに基づいて訪問看護計画書を作成する必要があります。訪問介護の訪問介護計画書とそういった点では相違ありません。主治医からの訪問看護指示書が必要な点が、訪問介護と大きく異なる点です。訪問看護を運営するにあたって、主治医との連携が非常に重要なものとなります。利用者毎に当然主治医は異なるので、主治医によってはなかなか訪問看護指示書を書いてくれず頭を抱えるケースも多いのではないでしょうか。敢えてこういった主治医側の目線でお話させていただくと、現状医療と介護の情報共有方法はかなりアナログで、その作成により多くの負荷がかかることも要因に挙げられます。訪問看護のシステムを選ぶ際には、医療機関との情報連携も視野に入れ検討することが重要です。
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訪問看護計画書の作成は電子化がおすすめ
訪問看護事業所の職員は、今回解説した訪問看護計画書の作成だけでなく、報告書、その他家族への共有、事業所内への共有など書類作成をする時間がかなり長くなっています。
長時間の書類作成は職員の負担が大きくなるだけでなく、手作業での書類作成では転記ミス、記載ミスなどのヒューマンエラーのリスクも大きくなります。
訪問看護計画書の作成、保管は電子媒体の使用が認められているため、電子化がおすすめです。
ワイズマンの提供する訪問看護事業所向けソフトでは、訪問看護計画書の作成をはじめ、訪問看護事業所での業務全体にわたるサポートが可能です。
訪問看護計画書の作成の負担軽減が可能
訪問看護ステーション管理システムSPでは、訪問看護計画書だけでなく、記録書、報告書などの文書の作成、管理ができます。
入力する際には、氏名などの基礎情報は自動入力されるため、入力工数の削減につながるでしょう。
また、医療保険と介護保険どちらの請求業務にも対応しており、途中から保険種別が切り替わった場合でも、色分けすることで判別しやすくなっています。
日々のサービス提供はシステム上の実績登録で記録しているため、請求書作成は自動算定され、療養費明細書の作成が簡単にできます。
訪問看護計画書の保管・共有ができる
ワイズマンでは、医療と介護分野での連携サービス「医療・介護連携サービスMeLL+(メルタス)」を提供しています。
医師からの訪問看護指示書をシステム内で共有でき、訪問看護事業所からの訪問看護計画書や報告書も、システムから共有が可能です。
また、「MeLL+family」のオプションも使用すれば、利用者の家族へもタイムリーに情報共有できます。
これまで利用者の家族へ連絡をとりたい場合、電話連絡では日中の仕事の邪魔になってしまったり、折り返し連絡のタイミングが合わないなど双方へ負担となっていました。
システム上で共有が可能になれば、時間を気にせずに連絡事項を共有できるようになるでしょう。
まとめ
訪問看護計画書を作成する際には、1人1人の目標設定、課題、解決策を見極め、状況に合わせて立案することが大切です。
訪問看護指示書やケアプランの内容を反映することはもちろん、利用者や家族へのアセスメントを適切に行いましょう。
しかし、計画の立案には多くの時間がかかってしまうこともあるでしょう。
訪問看護計画書の作成にばかり時間が取られてしまっては、実際のサービスの低下につながるなどのデメリットも引き起こしかねません。
訪問看護事業所内での負担を軽減させ、より効率の良い業務とするために、システムの導入を検討してみてください。
ワイズマンでは、訪問看護事業所向けのシステムを提供しています。
訪問看護事業所で計画書をはじめとする書類作成の負担を軽減したいと考えている方は、ぜひお問合せください。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。