居宅介護支援事業所は儲からない?収支や黒字化のポイントなどを解説
2024.03.06
居宅介護支援事業所とは、自宅で介護を受ける利用者に対し、ケアマネージャーが関連施設に連絡したり、適切なケアプランを立てたりするための施設です。
ニーズが高まっていることもあり、昨今は居宅介護支援事業所の経営に着手を検討する方も増加しました。
他方で、「居宅介護支援事業所は儲からない」と評価されることもあり、経営に踏み切れない方もいるのではないでしょうか。
実際、居宅介護支援事業所は黒字化が難しいとされており、経営に失敗したケースも少なくありません。
本記事では、居宅介護支援事業所が儲からないと言われる理由や、収益を伸ばす方法などについて解説します。
施設の経営をするうえで役立つ情報も解説するので、居宅介護支援事業所の経営に不安を抱えている方は、ぜひ参考にしてください。
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目次
【基礎知識】居宅介護支援事業所の動向
まずは、昨今の居宅介護支援事業所の施設数の変動や、経営状況について解説します。
居宅介護支援事業所の経営に取り組むなら、業界の実情を把握しましょう。
それぞれ順番に解説します。
居宅介護支援事業所の施設数の現状
以前まで、居宅介護支援事業所の施設数は増加傾向にありました。
平成28年度時点では増加傾向にあり、トータルで4万施設をこえていました。
しかし、コロナ禍以降は徐々に減少し、令和2年には4万を割りました。
その後も減少傾向が続き、年間で200施設以上の居宅介護支援事業所が廃業しています。
他方で、受け皿となる施設の数が減少しているにも関わらず、居宅介護支援事業所の利用者数は増加傾向にあります。
その結果、1つの居宅介護支援事業所が受け入れるべき利用者の数が増えています。
利用者の増加は、必ずしもよい結果を招くとは限りません。
小規模な居宅介護支援事業所だと、利用者の増加によってケアマネージャーが対応しきれなくなる恐れがあります。
参照:令和4年度介護事業経営概況調査結果(案)|厚生労働省
令和3年介護サービス施設・事業所調査の概況|厚生労働省
令和2年介護サービス施設・事業所調査の概況|厚生労働省
居宅介護支援事業所は黒字化している?
実は、昨今の居宅介護支援事業所の収支差率は改善されており、徐々に黒字の施設数が増加しています。
以下、居宅介護支援事業所の収支差率分布です。
利用者の増加や、他の介護施設も経営する併設型の居宅介護支援事業所の増加により、全体の収支差率が改善されつつあることがわかります。
また、利用者が一定数を超えると介護報酬が削減される逓減制が、2021年に緩和された点も、黒字化を後押しした一因と捉えられるでしょう。
しかし、黒字化が進んでいる居宅介護支援事業所は、複数の介護施設を運営する併設型に多い傾向があります。
小規模な施設は以前として厳しい収支状況が続いており、赤字を脱却できていない状況です。
居宅介護支援事業所が儲からないと言われる3つの理由
本章では、居宅介護支援事業所が儲からないと言われる3つの理由について解説します。
あらかじめ赤字に陥りやすい理由を把握すれば、より確度が高い事業計画を構築できるでしょう。
ケアプランの報酬が低い
居宅介護支援事業所の収益は、ケアプランの作成で得られる介護報酬が大半を占めていますが、その金額は決して高くありません。
厚生労働省が公開した資料では、居宅介護支援事業所の収入は、利用者1人につき約12,000円であると算出しています。
また、同じ統計で常勤換算のスタッフ1人につき利用者数が約36人であるとも算出されています。
上記を単純計算した場合、スタッフ1人につき約432,000円の収入が発生します。
ただし、人件費や各種経費を差し引いた場合、手元に残る収益はわずかです。
ケアプランの介護報酬設定が低いことは以前から議論されていますが、現状では劇的な改善にはいたっていません。
そのため、介護報酬が低いことを念頭に置いて、経営者は施設運営に取り組む必要があります。
一定数以上の利用者がいないと黒字化しない
ケアプラン作成の介護報酬が少ない以上、居宅介護支援事業所は一定数以上の利用者を確保しなければなりません。
黒字化に成功した居宅介護支援事業所の多くは、利用者の数が多い傾向があります。
以下の表を見てみましょう。
利用者数 | 40人以下 | 41~60人 | 61~80人 | 81~100人 | 101~150人 | 151~200人 | 201人以上 |
収支差率 | -7.2% | -8.1% | -6.1% | -5.5% | -1.0% | 1.0% | 1.5% |
150人以上の利用者を抱える事業所は黒字化に成功しやすいことがわかります。
しかし、利用者を増やす際には、ケアマネージャーの人員と利用者数のバランスに注意が必要です。
利用者を過度に増やすと、業務過多を引き起こし従業員の負担になる恐れがあるためです。
また、逓減制によって、ケアマネージャー1人あたりの担当件数が40件以上になると、超えた分の基本報酬が低くなります。
ケアマネージャーの人員と利用者数のバランスに注意して、黒字化を目指すことが大切です。
介護報酬改定の影響を受けやすい
他の介護施設と同様に、居宅介護支援事業所も、3年に1度の介護報酬改定の影響を受けやすい点には注意しなければなりません。
幸いにも、2021年の介護報酬改定では、特定事業所加算の改定や逓減制の緩和に加え、新たな加算が創設されるなど、居宅介護支援事業所にとって有利な決定がされました。
この決定は、収支差率が改善されない状況が影響したものと見られています。
2024年の介護報酬改定においても、さまざまな加算の見直しが議論されており、介護報酬の引き上げが期待できる状況です。
他方で、昨今は介護支援事業所全体の黒字化が進んでいるため、ある程度収支差率が改善されたと厚生労働省が見なせば、報酬の引き上げが抑制される可能性があります。
自施設の収支を適切にコントロールするうえでも、介護報酬改定の内容は逐一チェックしましょう。
居宅介護支援事業所の報酬単価
居宅介護支援事業所の報酬単価は、以下のように設定されています。
上記に加え、逓減制や加算・減算を計算して、最終的な収益が決定されます。
報酬体系に影響する加算・減算は以下のとおりです。
居宅介護支援の加算・減算は、実施したケアマネジメントへの評価によって左右されるものが多い点が特徴です。
ただ、減算の条件に「特定の事業所を位置付ける割合が80%を超える場合」が入っている点には注意しましょう。
これは、居宅介護支援事業所の中立性を守るために設置されている要件です。
そもそも居宅介護支援事業所は、公平中立な立場が求められている施設であり、特定の事業者に偏った案内は避けなければなりません。
そのため、特定の事業者やグループに属している施設を重点的に案内すると、減点対象になる恐れがあります。
併設型の居宅介護支援事業所のように、グループ内の介護施設への誘導も減算の対象になるリスクがあるため、過度な誘導は避けなければなりません。
なお、特定事業所加算のなかには、人員の配置や他機関との連携など、居宅介護支援事業所の経営体制が要件に含まれているものがあります。
小規模な居宅介護支援事業所だと、取得が難しい場合もあるため、必ず要件を確認しましょう。
関連記事:居宅介護支援事業所の収入とは?計算方法や収入を上げるためのポイントを解説
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居宅介護支援事業所の収益を伸ばすための3つの方法
近年徐々に改善されつつあるものの、居宅介護支援事業所の経営が難しいという状況は解消されていません。
そのため、経営に着手するなら、収益を獲得する手立てを前もって検討する必要があります。
本章では、居宅介護支援事業所の収益を伸ばす3つの方法について解説します。
少しでも早く経営を軌道に乗せる際に役立つので、ぜひ参考にしてください。
特定事業所加算の取得
居宅介護支援事業所で効率的に収益を獲得するなら、特定事業所加算の取得を目指しましょう。
厚生労働省の調査によると、黒字化に成功している居宅介護支援事業所は特定事業所加算を取得しています。
対して、赤字に陥っている居宅介護支援事業所のほとんどは、特定事業所加算を取得できていません。
特定事業所加算を取得すれば、収益を伸ばしやすくなります。
また、特定事業所加算の取得は、それだけ居宅介護支援事業所への評価が高いことを意味するため、より良い経営を実現するうえでの指標にもできるでしょう。
参照:居宅介護支援・介護予防支援の基準・報酬について|厚生労働省
他施設との連携
居宅介護支援事業所において、他施設との連携も重要な課題です。
サービスの性質上、居宅介護支援事業所は利用者にマッチした施設や医療機関を紹介できるかによって評価が変わります。
実際、特定事業所加算にも、医療機関や介護施設事業者との連携が要件に含まれているものがあります。
サービスの質を高め、加算の取得で収益を伸ばすためにも、他施設とコミュニケーションを取り、より質の高いケアプランを作成できるように努めましょう。
ただし、居宅介護支援事業所の基本である公平中立を違反すると、かえって減算を課せられるリスクが高まります。
紹介する施設が特定の事業者に偏らないよう、細心の注意を払ってください。
業務の効率化
収支を改善するなら、コストのコントロールも不可欠です。
居宅介護支援事業所の場合、注意すべきコストは人件費でしょう。
居宅介護支援事業所は、サービスの中心となるケアマネージャーの人件費が支出の大半を占めます。
収益を確保するために利用者を多く集めれば、それだけ業務負担が重くなり、人件費が増大するでしょう。
人件費を抑制するなら、業務の効率化が有効です。
そもそも居宅介護支援事業所は書類仕事のような事務作業が多いため、電子化を通じて効率化すれば、業務に要する時間を削減できます。
加えて、効率化すればケアマネージャーの業務負担を減らせるため、働きやすい環境作りも実現できるでしょう。
2024年介護報酬改定率は+1.59%となりました。内0.98%は介護職員の処遇改善分なので、対象外の居宅にはこの部分の恩恵はありません。その分、居宅の基本報酬及び特定事業所加算の報酬単価とケアマネ1人あたりの担当件数をアップさせる形でバランスをとったようです。
「居宅自体は儲からないので併設施設の利用率を上げるチャネルとして活用」というのがこれまでの居宅の姿でした。しかしながら、昨今だいぶ風向きが変わっており、単独居宅でも十分収益化できるようになってきています。そのキーワードは①特定事業所加算算定と②大規模化です。居宅の管理者要件が主任ケアマネ限定となったのも、①に誘導したい国の思惑が働いており高い報酬単価となっています。②と並行して①の算定の是非が居宅経営に於いて非常に重要なのです。
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居宅介護支援事業所の黒字化を目指すならすぐろくケアマネを使おう
居宅介護支援事業所を黒字化するなら、弊社「ワイズマン」のすぐろくケアマネを活用しましょう。
すぐろくケアマネは、簡単な操作で記録入力・情報参照ができる居宅介護支援事業所向けのソフトです。
利用者情報や医療・介護状況など、ケアマネージャーの業務において必要な情報をすぐに確認できます。
さらに、長い文章を記録する際は音声入力が使用できるため、スピーディーな事務作業を実現できるでしょう。
すぐろくケアマネは業務の効率化や、人件費の抑制に多大な効果を発揮するソフトです。
ぜひ導入し、居宅介護支援事業所の黒字化に役立ててください。
儲からない理由を知って居宅介護支援事業所の経営を改善しよう
居宅介護支援事業所はニーズの高まりによって利用者が増加する一方、施設数が減少傾向にあります。
最大の原因は、居宅介護支援事業所の報酬の低さです。
昨今は介護報酬改定の影響で、居宅介護支援事業所全体での黒字化は進んでいるものの、儲からないイメージが完全に払拭されたわけではありません。
居宅介護支援事業所を黒字化するなら、収益モデルを理解したうえで、特定事業所加算の取得や、他施設との連携など、さまざまな施策を実行する必要があります。
また、業務の効率化も黒字化において有効的な手段です。
すぐろくケアマネのような優れたソフトを導入し、煩雑になりがちな作業を効率化すれば、残業などによるコストの増加を防止できるでしょう。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。