【医療業界動向コラム】第80回 令和6年度診療報酬改定案が答申。地域包括医療病棟・看護必要度・療養病棟における中心静脈栄養の扱いを確認

2024.02.20

※このコラムは2024年2月20日時点の情報をもとにしております。

2月14日、令和6年度診療報酬改定案の答申が行われた。診療報酬改定の概要、施設基準・要件、点数などが示されている。これまでの中央社会保険医療協議会での議論を振り返りながら、入院・外来・在宅についてこれからシリーズでポイントを確認していきたい。今回は入院医療について。

入院医療の見直し 〜地域医療構想のゴールに向け、急性期入院の患者像を厳格に〜

入院医療では、次の3つの点に注目してみよう。

・地域包括医療病棟の新設

・重症度、医療・看護必要度(以降、看護必要度)の見直し

・療養病棟における中心静脈栄養の管理

地域包括医療病棟とは、これまで高齢者救急病棟などとも表現されてきたように、高齢患者の急性期入院に資源を注力する10:1看護配置の病棟だ(図1)。平均在院日数は21日、90日までは包括評価の点数での算定が可能。ただし、高齢者救急と言われてきたように、救急の受入実績が求められること、看護必要度によるやや高い該当患者割合が求められる。

図1_病床機能の再編

さらに、高齢患者に対応するべく、リハビリテーションや栄養管理に関する手厚い人員確保も求められる。なお、下り搬送の転送先、また、施設等からの救急搬送を意識して14日間を限度した初期加算が算定可能となっている。自院に急性期一般入院料の病棟や地域包括ケア病棟を有している場合、どの病棟で受け入れるかなど課題になることも出てきそうだが、院内転棟割合などが設定されていることを考えると、他の医療機関や施設と連携して高齢患者であれば地域包括医療病棟で受け入れていく流れとなるだろう。この後説明する看護必要度の見直しは、200床未満の急性期一般入院料1を算定する病院の一部では、該当患者割合を満たすことが困難になり、病棟の一部を地域包括医療病棟や地域包括ケア病棟への転換を考えることになるだろう。実際の検討において意識しておきたいのは、地域包括医療病棟も地域包括ケア病棟も、他の医療機関や施設とのこれまで以上に密な連携なくしては病床稼働率を上げることは困難になると考えられることだ(今回の改定で地域包括ケア病棟は施設の協力医療機関となることが望ましいとされると共に、連携する施設からの受け入れに関する新たな評価が新設された)。自院の都合よりも、地域医療構想調整会議の場などを利用して、地域の都合をしっかり聞き、検討をしていくことが必要だ。自院の都合だけで運営できる病棟ではないことを意識しておこう。

看護必要度については、急性期一般入院料1はより高度急性期を目指すような見直しとなった。救急搬送後の入院の期間が2日に短縮、注射薬剤3種類以上の管理については7日間と評価期間が厳格化されると同時に、静脈栄養が対象薬剤から除外された。これはまさに、高齢患者の下り搬送を含めた早期退院を促す内容と言える。そのため、看護必要度の評価が大きく変わり、やや複雑になった(図2)。なお、経過措置は令和6年9月30日までと短い。

図2-1_看護必要度の見直し
図2-2_該当患者割合の見直し

最後に、療養病棟入院基本料を確認しておきたい。医療区分等が詳細に分類されることに注目が集まっているが、中心静脈栄養の管理のあり方に大きな変化がある。中心静脈栄養の対象となる患者を明確にするとともに、30日までと期間を設けることとなった。さらに、経腸栄養管理加算を新設し、中心静脈栄養からの早期移行を促すと言うもの(図3)。医療従事者の負担軽減にもつながることが期待される。

図3_療養病棟等慢性期入院の見直し

他にも、身体的拘束最小化チームを作ることが入院基本料の施設基準に盛り込まれたり、回復期リハビリテーション病棟では運動器リハビリテーションの算定上限数が6単位に引き下げられるなどの注意すべき点が多々ある。今回の答申、そして3月上旬の告示後は、令和6年度診療報酬改定の注意点を確認し、お伝えしていく。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。

https://www.hckn.work

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