【医療業界動向コラム】第81回 令和6年度診療報酬改定案より、後発医薬品に関する使用促進策、医薬品取引状況の報告について確認
2024.02.27
※このコラムは2024年2月27日時点の情報をもとにしております。
2月14日、令和6年度診療報酬改定案の答申が行われた。診療報酬改定の概要、施設基準・要件、点数などが示されている。これまでの中央社会保険医療協議会での議論を振り返りながら、シリーズでポイントを確認していきたい。今回は、バイオ後続品を含む後発医薬品、医薬品取引、特定入院料における薬剤料に関するもの。
バイオ後続品を含む後発医薬品の使用促進について
バイオ後続品(以降、BS)を含む後発医薬品の使用促進策は、安定供給に応じた適切な対応をすることへの負担を踏まえた評価となっている(図1)。
具体的には、後発医薬品使用体制加算1-3は40点の引上げ、一般名処方加算1-2と外来後発医薬品使用体制加算1-3は3点の引上げとなった。合わせて、患者への十分な説明をすることや、供給状況によって投与する薬剤が変更されることがあることをウェブサイトに掲載することが求められる。なお、この場合のウェブサイトについては、ホームーページを指すのか、医療機能情報提供制度(医療情報ネット)を指すのかはまだ不明だ。
また、BSについても第四期医療費適正化計画で設定された目標値(2029年度末までに80%以上置き換わった成分数が全体の成分数の60%以上)を達成すべく、外来患者すべてを対象とする見直しと入院患者への新規導入(図2)も新たに評価する。ただ、こちらは要求水準が高いといえる。BSはいわゆる虫食い効能(先行バイオ医薬品が適応追加していくことで、適応が異なることがある)で、説明には慎重を期する必要がある。
本年10月からは後発医薬品のある長期収載品の患者一部自己負担が始まるのも注目される。詳細については、今後発出される通知などで確認が必要だが、消費税・インボイスの発行の有無、生活保護者への対応など気になるところだ。薬局においては特定薬剤管理指導加算3(5点)を新設し、制度の説明を行うことを評価する。後発医薬品への切替は必須ではない。なお、医療機関においてはこうした説明に対する評価は確認できていない。
医薬品取引状況に関する報告
また、今年度中に改訂される「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン(流通改善ガイドライン)」を踏まえた対応も注目しておく必要がある(図3)。医療機関としても厳格な対応が求められるとともに、書類等で現状の報告などが求められる可能性がある。価格交渉とは経営努力でもあるので、それを否定するものではないものの、「行き過ぎた交渉」や「過度な薬価差」については見直しが必要だ。医療機関・薬局においても、流通改善ガイドラインを遵守するように価格交渉代行者に強く求めることが必要であるとともに「責任」となる。医療機関・薬局の経営は、地域住民はもとより、周辺の様々な事業者の協力があって成り立っている。地域全体、係る事業者にとって最善の結果を常に意識しておきたい。
その他、今回の診療報酬改定では、血友病患者の治療の選択肢を広げることを目的に、一部の特定入院料等で包括の対象外となっている血液凝固第Ⅷ医因子機能代替製剤、TFPIモノクローナル抗体を出来高算定可能となる。
山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員
1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。