訪問介護における処遇改善加算|単位数・計算方法や算定要件を解説
2024.08.20
処遇改善加算とは、介護職員の賃金改善や職員のキャリアアップ、職場環境の改善を支援するための加算制度です。
申請するにあたり、要件や加算率を把握したいとお考えの方も多いでしょう。
本記事では、訪問介護における処遇改善加算の概要と単位数について詳しく解説します。
自施設で処遇改善加算の取得をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
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目次
処遇改善加算とは
処遇改善加算とは、介護職員の賃金改善や職員のキャリアアップ、職場環境の改善を支援することを目的に厚生労働省が創設した加算制度です。
職場環境の改善に取り組み、一定の要件を満たした事業所が加算の対象になります。
創設された背景には、介護職員の深刻な人材不足がありました。
人材不足の原因として次のような課題が考えられています。
- 介護職は他の業種と比較して収入が低い
- 介護職は離職率が高く経験豊富な人材が定着しづらい
このような課題に取り組むことで、最終的には介護職員の働き方を改善し、人材不足を解消させるのが処遇改善加算の狙いです。
訪問介護における介護職員処遇改善加算の計算方法
本章では、処遇改善加算の計算方法について詳しく解説します。
単位数
処遇改善加算の計算をするためには、まず1カ月あたりの総単位数を求めます。
1カ月あたりの総単位数を求める計算式は、次のとおりです。
1カ月あたりの総単位数 = 前年度1~12月の介護報酬総単位数 ÷ 12
計算方法
1カ月あたりの総単位数が算出できたら、次の計算式で処遇改善加算の加算単位数を求めます。
加算単位数=1カ月あたりの総単位数×サービス類型別加算率
訪問介護サービスの加算率は、以下のとおりです。
サービス区分 | 加算(Ⅰ) | 加算(Ⅱ) | 加算(Ⅲ) | 加算(Ⅳ) |
(夜間対応型)訪問介護・定期巡回 | 24.5% | 22.4% | 18.2% | 14.5% |
(予防)訪問入浴介護 | 10.0% | 9.4% | 7.9% | 6.3% |
【2024年6月改定】訪問介護の処遇改善加算の算定要件
処遇改善加算は、2024年6月より改定されました。
ここでは、新処遇改善加算の算定要件を紹介します。
処遇改善加算の算定要件は、以下のとおりです。
区分 | キャリアパス要件(Ⅰ) | (Ⅱ) | (Ⅲ) | (Ⅳ) | (Ⅴ) | 月額賃金改善要件(Ⅰ) | (Ⅱ) | 職場環境等要件区分ごと1以上 | 全体で1以上 |
介護職員等処遇改善加算(Ⅰ) | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | × |
介護職員等処遇改善加算(Ⅱ) | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | × | ◯ | ◯ | ◯ | × |
介護職員等処遇改善加算(Ⅲ) | ◯ | ◯ | ◯ | × | × | ◯ | ◯ | × | ◯ |
介護職員等処遇改善加算(Ⅳ) | ◯ | ◯ | × | × | × | ◯ | ◯ | × | ◯ |
本章では、キャリアパス要件と職場環境等要件の概要を紹介します。
キャリアパス要件
キャリアパス要件の詳細は、以下のとおりです。
区分 | 内容 |
(Ⅰ) | 介護職員について、職位、職責、職務内容等に応じた任用等の要件を定め、それらに応じた賃金体系を整備する |
(Ⅱ) | 介護職員の資質向上の目標や以下のいずれかに関する具体的な計画を策定し、当該計画に係る研修の実施または研修の機会を確保する a:研修機会の提供又は技術指導等の実施、介護職員の能力評価 b:資格取得のための支援(勤務シフトの調整、休暇の付与、費用の援助等) |
(Ⅲ) | 介護職員について以下のいずれかの仕組みを整備する a 経験に応じて昇給する仕組み b 資格等に応じて昇給する仕組み c 一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み |
(Ⅳ) | 経験・技能のある介護職員のうち1人以上は、賃金改善後の賃金額が年額440万円以上であること |
(Ⅴ) | サービス類型ごとに一定割合以上の介護福祉士等を配置していること |
月額賃金改善要件
月額賃金改善の要件は以下のとおりです。
区分 | 要件 |
(Ⅰ) | 新加算Ⅳ相当の加算額の2分の1以上を、月給(基本給または決まって毎月支払われる手 当)の改善に充てる |
(Ⅱ) | 前年度と比較して、現行のベースアップ等加算相当の加算額の3分の2以上の新たな基本給等の改善(月給の引上げ)を行う |
職場環境等要件
処遇改善加算の要件を満たすには、以下、職場環境等要件のうち1つ以上に取り組む必要があります。
区分 | 具体的内容 |
入職促進に向 けた取組 | ・法人や事業所の経営理念やケア方針・人材育成方針、その実現のための施策・仕組みなどの明確化 ・事業者の共同による採用・人事ローテーション・研修のための制度構築 ・他産業からの転職者・主婦層・中高年齢者等・経験者・有資格者等にこだわらない幅広い採用の仕組みの構築 ・職業体験の受入れや地域行事への参加や主催等による職業魅力度向上の取組の実施 |
資質の向上やキャリアアップに向けた支援 | ・働きながら介護福祉士取得を目指す者に対する実務者研修受講支援や、より専門性の高い介護技術を取得しようとする者に対するユニットリーダー研修、ファーストステップ研修、喀痰吸引、認知症ケア、サービス提供責任者研修、中堅職員に対するマネジメント研修の受講支援等 ・研修の受講やキャリア段位制度と人事考課との連動 ・エルダー・メンター制度等導入 ・上位者・担当者等によるキャリア面談など、キャリアアップ・働き方等に関する定期的な相談の機会の確保 |
両立支援・多様な働き方の推進 | ・子育てや家族等の介護等と仕事の両立を目指す者のための休業制度等の充実、事業所内託児施設の整備 ・職員の事情等の状況に応じた勤務シフトや短時間正規職員制度の導入、職員の希望に即した非正規職員から正規職員への転換の制度等の整備 ・有給休暇を取得しやすい雰囲気・意識作りのため、具体的な取得目標を定めた上で、取得状況を定期的に確認し、身近な上司等からの積極的な声かけを行っている ・有給休暇の取得促進のため、情報共有や複数担当制等により、業務の属人化の解消、業務配分の偏りの解消を行っている |
腰痛を含む心身の健康管理 | ・業務や福利厚生制度、メンタルヘルス等の職員相談窓口の設置等相談体制の充実 ・短時間勤務労働者等も受診可能な健康診断・ストレスチェックや、従業員のための休憩室の設置等健康管理対策の実施 ・介護職員の身体の負担軽減のための介護技術の修得支援、職員に対する腰痛対策の研修、管理者に対する雇用管理改善の研修等の実施 ・事故・トラブルへの対応マニュアル等の作成等の体制の整備 |
生産性向上のための業務改善の取組 | ・厚生労働省が示している「生産性向上ガイドライン」に基づき、業務改善活動の体制構築(委員会やプロジェクトチームの立ち上げ、外部の研修会 の活用等)を行っている ・現場の課題の見える化(課題の抽出、課題の構造化、業務時間調査の実施等)を実施している ・5S活動(業務管理の手法の1つ。整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字をとったもの)等の実践による職場環境の整備を行っている ・業務手順書の作成や、記録・報告様式の工夫等による情報共有や作業負担の軽減を行っている ・介護ソフトおよび情報端末の導入 ・介護ロボットの導入 ・業務内容の明確化と役割分担を行った上で、間接業務については、いわゆる介護助手等の活用や外注等で担い、介護職員がケアに集中できる環境を整備 ・各種委員会の共同設置、各種指針・計画の共同策定、物品の共同購入等の事務処理部門の集約、共同で行うICTインフラの整備、人事管理システムや福利厚生システム等の共通化等、協働化を通じた職場環境の改善に向けた取組の実施 |
やりがい・働きがいの醸成 | ・ミーティング等による職場内コミュニケーションの円滑化による個々の介護職員の気づきを踏まえた勤務環境やケア内容の改善 ・地域包括ケアの一員としてのモチベーション向上に資する、地域の児童・生徒や住民との交流の実施 ・利用者本位のケア方針など介護保険や法人の理念等を定期的に学ぶ機会の提供 ・ケアの好事例や、利用者やその家族からの謝意等の情報を共有する機会の提供 |
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介護業界の有効求人倍率は3.39倍と全職種の1.23倍と比較して著しく高い数値となっています(2024年6月)。このように慢性的な人手不足解消を改善するために2012年に導入されたのが処遇改善加算です。その後加算の拡充や新設が相次ぎ、非常に複雑な構造になっていましたが、よりわかりやすくすることを目的に2024年介護報酬改定で一本化されました。
この新しい処遇改善加算算定で現場は大混乱に陥りました。こうした事態をうけて、厚労省は2024年7月30日に処遇改善加算について説明するページを大幅にリニューアルし、以前と比較すると格段に見やすさが向上されています。それでもまだまだ複雑で手続きも煩雑になっている現状です。処遇改善加算に関しては今後も継続審議される予定ですので、その動向から目が離せません。
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「訪問実績に応じた給与計算を効率よく行いたい」
「介護職員の訪問スケジュールを効率的に管理したい」
多くの訪問介護事業所では、このような業務上の課題をお持ちではないでしょうか。
ワイズマンのホームヘルプサービス管理システムSPを活用すれば、上記の課題はもちろんのこと、次のような課題にも対応可能です。
- 訪問する担当者が変わっても質を落とさずサービスを提供したい
- 事業所内で利用者様の情報を簡単に共有したい
ホームヘルプサービス管理システムSPのおすすめ機能を紹介します。
勤務スケジュール作成・訪問職員割当
介護職員の勤務予定を月ごとのカレンダーで作成でき、各職員の勤務シフトを一目で確認可能です。
また、職員の予定を急遽変更しなければならない場合でも、対応可能な職員を訪問職員割り当て画面からすぐに見つけられます。
賃金計算オプション
賃金計算オプションを活用すれば、あらかじめ登録しておいた賃金体系と介護職員の稼動実績をもとに、毎月の給与を自動計算できます。
また、全体の明細を一覧画面で確認しながら事務処理を進められるため、確認や修正にかかる手間と時間を減らせるでしょう。
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処遇改善加算の要件・単位数を把握しよう
介護職員処遇改善加算を取得するための条件は複雑で、全体を理解するのは大変かもしれません。
しかし、訪問介護職員にとってより働きやすい環境づくりのためには非常に重要な制度と言えます。
制度の目的と内容をしっかりと理解し、介護職員の賃金アップや職場環境の改善など、介護事業所の経営にとってプラスとなるような取り組みを目指してください。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。