【医療業界動向コラム】第88回 医療情報ネット＜ナビイ＞を地域医療連携の視点で活用する

※このコラムは2024年4月19日時点の情報をもとにしております。

「医療情報ネット」が、本年4月より「ナビイ」という新たな愛称でスタートした。医療情報ネットとは、平成18年の第5次医療法改正で地域住民による医療機関・薬局を選択するための情報を提供するものとして導入が開始されたもの。令和5年の医療法改正で制度の一部見直しが行われることとなり、本年4月より都道府県ごとに個別に運用されていた情報提供システムとそのデータを集約して、全国統一的な情報提供システム（医療情報ネット）を構築し、運用が開始されたところ。

＜医療情報ネット（ナビイ）＞

https://www.iryou.teikyouseido.mhlw.go.jp/znk-web/juminkanja/S2300/initialize

住民目線で医療機関・薬局を検索するものということもあり、モバイルでの利用も念頭に置いたユーザーフレンドリーな作りになっている。また、これまでの医療情報ネットとは異なり、全都道府県統一した項目で整理されており、比較がしやすくなった。なお、医療機関・薬局について、施設情報も含めてまだすべて掲載済みではないようだ（令和6年4月19日時点）。日々登録件数は増えていることは確認できるので、まだ掲載されていない医療機関・薬局については、もうしばらく時間が必要である。

地域住民自身による医療機関・薬局の選択を支援することが目的のナビイではあるが、医療機関・薬局の連携に際しても有用と思われる情報が詰まっている。そこで、地域医療連携の観点でナビイを確認してみたい。

医療機関に関する情報について

院内処方の有無やジェネリック医薬品の処方の実施、電子処方箋の発行の可否についても項目がある。本年10月からの後発医薬品である長期収載品において、患者による一部自己負担対応の必要有無などもわかる（図1）。

地域医療連携の担当窓口、地域医療連携パスの対応疾患、そしてかかりつけ医機能への対応状況が分かるようになっている（図2）。かかりつけ医機能への対応状況については、来年度からスタートするかかりつけ医機能報告制度を踏まえてのことだろう。病院としては、退院後の連携先を検討する際に、在宅復帰後の連携も取りやすい医療機関として選択肢に入れることなど考えられる。かかりつけ医機能とは、地域住民から選ばれるだけではなく、同業者である医療機関からも選ばれるということだ。

また、併設する介護保険サービスも掲載されている。なお、従来通り対応可能な治療の内容と昨年1年間の実績も確認できる。退院先の選択肢になることの他にも、当該医療機関でフォローできる検査や治療などあれば紹介・逆紹介の関係を構築するきっかけにもつながる。またこちらも従来通り、一日当たり入院患者数・外来患者数、平均在院日数も確認できる。さらに、外来待ち時間の平均時間なども確認できる。

薬局に関する情報について

これまで通りに、年間の処方箋枚数が掲載され、地域ケア会議等への参加状況や医療機関への服薬フォロー結果のフィードバック回数など掲載されている。退院時薬剤情報連携加算の連携先として、また外来診療でリフィル処方箋を実施するに際して注目したい。なお、薬局の業務内容の項目にはリフィル処方箋への対応実績も掲載されている（図3）。

地域医療連携に関する項目もかなり充実している。調剤基本料や地域支援体制加算の取得状況などもわかると共に、地域フォーミュラリへの取組状況までわかるようになっている。他にも、地域連携薬局の場合は必要とされる要件に関する実績の詳細や、食品や配送サービスの実施及び費用についても掲載されている。住民視点としてもわかりやすく、医療機関としても食品や日用品、そして配送まで行える薬局であれば在宅の連携も優先的に検討していくことになるだろう。

地域医療連携の観点で有用と思える項目についてピックアップして紹介してみた。地域住民にとっては非常に充実した内容になっていると感じると共に、地域医療連携を推進していくにあたって、連携先情報を確認することができる有用なサービスだといえる。情報の充実、利便性向上に期待が集まる。