介護の移乗介助のコツとは?基本的なポイントと、注意点を徹底解説

2024.07.05

介護の移乗介助を行うためには、スムーズに要介護者を持ち上げ移動させるコツを把握しておく必要があります。
ボディメカニクスを理解しておけば、移乗介助をスムーズに実践できます。

介護の移乗に役立つボディメカニクスと注意点を確認して、介護士と要介護者に負担をかけないよう移乗介助を実践しましょう。

この記事では、介護における移乗介助のコツを解説します。
また、シチュエーション別に移乗介助のポイントや注意点を紹介していますので、ぜひ最後までご覧いただき、業務の参考にしてください。

目次

移乗介助の定義と目的

介護における移乗介助とは、介護士が要介護者を補助して、ベッドから車椅子などへ乗り移らせることです。
ほかにも車椅子からベッド・車椅子からトイレなど、別の場所に乗り移る際に、抱きかかえたり支えたりしてサポートすることを移乗介助と呼びます。

身体が不自由な要介護者は、自分1人で乗り移ることが難しいため、移乗介助が必要です。
ただし、移乗介助では、介護士と要介護者の双方に身体負担がかかるため、正しい姿勢と方法を理解しておく必要があります。

移乗介助の2つのリスク(要介護者の事故・介護士の腰痛)

介護サービスにおいて、移乗介助は日常的に行われる行為ですが、実施するうえで以下のリスクを考慮する必要があります。

  • 要介護者の事故
  • 介護士の腰痛

要介護者の事故

移乗介助を実施するうえで、要介護者の事故は必ず防止すべきリスクです。
ベッドから車いす、車いすからトイレなどに乗り移る行為は健常者にとっては問題ないことでも、要介護者にとっては困難です。

特に高齢化や持病の影響によって体が不自由になっている要介護者の場合、移乗するだけでも負担が大きいものです。
また、ふらついて倒れたり、滑り落ちたりすると、骨折などの大怪我につながります。

最悪の場合、命を落とす事故になりかねません。

要介護者の命を守るためにも、介護士は細心の注意を払い、適切な方法で移乗介助を実施する必要があります。

介護士の腰痛

移乗介助において、介護士の腰痛も無視できないリスクです。

移乗介助は車いすへの移動だけでなく、トイレ・入浴・食事などさまざまな場面で行われます。
実施する頻度が多いため、経験値が高い介護士でも身体に多大な負担がかかります。

加えて、移乗介助は「一定以上の重さを持つ人」を動かす作業です。
自分と同じくらいの体重の人を動かすだけでなく、麻痺の有無など要介護者の状態に配慮する必要があります。

そのため、正しい方法を理解していないと、介護士の身体に負担がかかり、慢性的な腰痛などにつながります。

介護の移乗に役立つボディメカニクス

移乗介助を効率的に行うためには、ボディメカニクスを活用しましょう。
ボディメカニクスとは、「body(身体)」と「mechanics(機械学)」を組み合わせた造語です。

「骨や筋肉・関節がどのように作用するか」などの身体力学を活用した介護技術です。
ボディメカニクスを活用すれば、小さな力で移乗介助が可能となり、要介護者だけでなく介護士の負担やストレスを軽減できます。

なお、ボディメカニクスは主に、以下8つの原則で構成されています。

  1. 支持基底面積を広くとる
  2. 重心を下げる
  3. 被介護者との重心を近づける
  4. 被介護者の体をねじらず、小さくまとめる
  5. 身体全体を利用し、大きな筋肉を使う
  6. 水平移動を行う
  7. 被介護者を引く動作を意識する
  8. てこの原理を用いる

まず足を広げて膝を少し曲げることで、重心を下げて安定した体勢を作ります。
さらに被介護者との重心を近づけることで、太もも・お腹・背中などの大きな筋肉を効果的に活用できます。

大きな筋肉を使うことで体への負担を軽減でき、安定した介助が可能です。
要介護者も安心して移乗を任せられます。

【シチュエーション別】移乗介助を行う具体的な方法

ボディメカニクスの8原則を理解した後は、実際に移乗介助を行う際の具体的な方法を確認しておきましょう。
本章では、下記のシチュエーション別に、具体的な移乗介助の方法を解説します。

  • ベッドから車椅子への移乗介助
  • 車椅子からベッドへの移乗介助
  • 床から起き上がらせる移乗介助
  • 片麻痺の要介護者をベッドから車椅子に移乗させる全介助
  • 軽介助者を車椅子からトイレに移乗させる一部介助
  • 体重が重い要介護者をベッドから車椅子へ移乗させる介助

各シチュエーションの移乗介助のポイントを押さえ、要介護者の負担やストレスを軽減しましょう。

ベッドから車椅子への移乗介助

ベッドから車椅子への移乗介助を行う際は、次の手順で実践しましょう。

  1. 車椅子をベッドに対して45度の角度で近くに置く
  2. 車椅子とベッドの高さを合わせる
  3. ベッドに浅く腰掛けられるよう介助する
  4. 足の裏を地面につける
  5. 肩甲骨と骨盤を支えながら密着する
  6. 介護士は腰を落として、前傾姿勢にする
  7. 身体を前に傾けて、お尻の高さを保ったまま回転させる
  8. 車椅子へ移乗させる

ポイントは、要介護者がベッドに浅く腰掛けた状態から移乗を行うことです。
ベッドに深く腰掛けたままでは、介護士と要介護者の重心が離れ、移乗時に大きな力が必要になります。

一方、双方の重心を近づけることで、力が伝わりやすくなり無理なく介助できます。

車椅子からベッドへの移乗介助

車椅子からベッドへの移乗介助を行う手順は、次のとおりです。

  1. ベッドと車椅子を同じ高さに調整する
  2. 車椅子をできる限りベッドに近づける
  3. 車椅子の浅い位置に移動させる
  4. 足の裏を地面につける
  5. 重心に合わせて、腰を落として重心を下げる
  6. 肩甲骨と骨盤を手で支えて密着する
  7. 身体を前に傾けて、お尻の高さを保ったまま回転させる
  8. ベッドへ移乗させる

車いすからベッドへ移乗介助する際のポイントは、上記7番目の”回転”がスムーズにできるよう、車椅子とベッドの距離を近づけることです。

7番目の手順の”回転”は、自分を基軸に遠心力によってベッドへ水平移動するために行われる作業です。

万が一、ベッドと車椅子の距離が近すぎると、回転時の遠心力が働きづらく介護士側に大きな負荷がかかります。
また、距離が離れすぎると、回転してもベッドへ届かず、介護士の力でベッドまで移乗することになります。

いずれにせよ、身体に大きな負荷が加わるため、適切な距離を確保することが大切です。

床から起き上がらせる移乗介助

床から起き上がらせる移乗介助の手順は、次のとおりです。

  1. 身体を小さくまとめ、横向きの姿勢で寝てもらう
  2. 身体から移乗させる場所まで十分なスペースを確保する
  3. 身体を「くの字」に折り曲げる
  4. 肩甲骨と両膝裏に腕を回して支える
  5. 身体を手前に引き、寝転びの姿勢から座ってもらう
  6. 後に回って、膝を立たせてしっかり抱え込む
  7. 振り子の要領で身体を前後に大きく揺らして、立ち上がらせる

床から起き上がらせるときには、まず要介護者の周辺にスペースを確保して、横向きで「くの字」の体制をとってもらいます。
その状態で、肩甲骨と両膝裏に腕を回して身体を手前に引けば、寝転びの姿勢から床に座らせられます。

座った体勢になれば、あとはスムーズです。
要介護者の後ろに回って、膝を立たせた状態で抱え込めば、タイミングを見計らって振り子の要領で立たせられます。

片麻痺の要介護者をベッドから車椅子に移乗させる全介助

片麻痺の要介護者を移乗させる全介助は、次の手順で実践しましょう。

  1. 麻痺がない動ける側に車椅子を近づける
  2. 介護士は、要介護者の麻痺がある側の斜め前に立つ
  3. 要介護者に動ける側の手で、車椅子のアームを握ってもらう
  4. 動線を意識して、十分なスペースを設ける
  5. 脇腹付近を支えて、動ける側の足を軸に回転させて移乗する

片麻痺の要介護者を全介助する際には、麻痺が起きていない動ける側を使って、移乗できるようサポートしてください。
片麻痺の要介護者を全介助する場合、体重をかける方向や移乗での動線などを意識して、密着しすぎず動きやすいスペースを空けることが大切です。

できるだけ麻痺が起きている側に介護士が回り、ふらついたり倒れたりした際に、すぐ対処できるようにしましょう。

軽介助者を車椅子からトイレに移乗させる一部介助

軽介助者を車椅子からトイレに移乗させる一部介助は、以下の手順を実施してください。

  1. 要介護者に片方の手で、車椅子のアームを握ってもらう
  2. 要介護者の動線を意識し、双方の身体を密着させすぎないようスペースを設ける
  3. 要介護者の脇腹付近を支えて移乗させる

軽介助者を一部介助する際には、できるだけ本人の力で移乗してもらうことが大切です。
身体を持ち上げたり引っ張たりせずに、支える程度の介助に徹しましょう。

安全に移乗するために、声掛けを行いながら移乗すると、介助もしやすくなります。

体重が重い要介護者をベッドから車椅子へ移乗させる介助

体重が重い要介護者をベッドから車椅子へ移乗させる介助を行う手順は、次のとおりです。

  1. 椅子を用意する
  2. 体をできるだけ小さくまとめる
  3. 足裏を地面につけて、体を「くの字」の前傾姿勢にする
  4. 身体を密着させて要介護者を抱え込み、ステップ1. で用意した椅子に座る
  5. 身体を回転させながら移乗する方へ向き、椅子から立ち上がって移乗する

体重が重い要介護者を移乗介助する際は、一度に移乗させようとすると介護士に負担がかかってしまいます。
そのため、要介護者の前に椅子を用意し、一度椅子に座ってワンクッションを挟んでから、移乗を行いましょう。

どうしても要介護者の体重が重たく、無理をしそうな場合は1人ではなく2人の介護士で協力して、移乗介助を行ってください。

移乗介助を行う際の注意点

移乗介助を行う際の注意点は、次のとおりです。

  • 介助に必要な物品を用意しておく
  • 要介護者が動きやすい姿勢をつくる
  • 無理のない姿勢で介助を行う
  • 無理やり持ち上げない
  • 車椅子には深座りで移乗させる

それぞれの注意点を確認して、スムーズに移乗介助を行えるよう準備しましょう。

介助に必要な物品を用意しておく

移乗介助を行う際の注意点として、介助に必要な物品をあらかじめ用意しておくことが大切です。
介助を始めてからは、要介護者を支えていなければならず、物品を取りにいけないためです。

スライディングボードやリフトなど、必要に応じて物品を用意しておけば、スムーズに移乗介助できます。
また、ベッドから車椅子に移乗させる際には、車椅子をベッドに対して45度や30度の角度で設置し、移乗介助しやすい位置関係をつくりましょう。

要介護者が動きやすい姿勢をつくる

移乗介助を実施する際には、要介護者が動きやすい姿勢をつくりましょう。
要介護者を無理に抱きかかえたり引っ張ったりするのではなく、できるだけ負担なく動いてもらえるよう、楽な姿勢をつくることが大切です。

動きにくい姿勢のままでは、過度な負担がかかったり、怪我につながったりするリスクが高まります。
介助中も、要介護者の姿勢に配慮しながら実施しましょう。

無理のない姿勢で介助を行う

要介護者だけでなく介護士も、無理のない姿勢で介助を行うようにしてください。
無理な姿勢で介助を行うと、腰を痛めたり体勢が不安定になったりと、怪我につながる可能性があります。

自分1人の力で移乗介助ができない場合は、2人の介護士で協力して介助を行うことが大切です。
また、身体的な負担を減らすためにも、アシストスーツのような器具を積極的に活用しましょう。

無理やり持ち上げない

移乗介助をする際は、無理やり持ち上げないよう注意してください。
移乗介助を行う際は、つい持ち上げて要介護者を移乗させようとしてしまいますが、無理やり持ち上げると怪我や転倒のリスクがあるため危険です。

ズボンを引っ張って持ち上げる行為も、要介護者が痛みを感じる原因になるのでやめましょう。

また、要介護者が介助方法に不安を覚えた際は、別の方法を検討しましょう。
可能な限り要介護者が望む方法にすることも、安心して移乗介助を実施するうえで重要です。

車椅子には深座りで移乗させる

ベッドから車椅子へ移乗させる場合は、車椅子に深座りさせるよう徹底してください。
車椅子から別の場所へ移乗させる際は、動きやすいよう浅く座らせますが、これはあくまでも移乗のしやすい体勢を作るのが目的です。

基本的に、ベッドやトイレから車椅子へ移乗した後は、そのまま移動するため、バランスを確保できるよう深座りの状態を確保しましょう。

移乗介助に利用できる便利器具

移乗介助に利用できる便利器具として、次のようなものがあります。

  • スライディングボード
  • スライディングシート
  • 介助ベルト
  • 介護用リフト

それぞれの特性を確認して、必要に応じて利用しましょう。

スライディングボード

スライディングボードは、お尻の下に敷いて移乗介助の負担を軽減する器具です。
ベッドと車椅子の間をスライディングボードで橋渡しして、ボードの上に乗って身体を滑らせることで、お尻を持ち上げずに移乗を実現します。

スライディングボードの正しい使い方

スライディングボードは以下の手順で使用しましょう。

  1. 車いすをベッドの真横に設置する
  2. ベッドの位置を車いすより少し高くする
  3. 要介護者をベッドの脇に座らせ、身体を前傾姿勢にしてもらう
  4. ベッドと車いすを橋渡しするようにスライディングボードを設置する
  5. 要介護者の身体を斜め前に倒し、臀部とベッドの間にできる隙間にスライディングボードを差し込む
  6. 介護士は片手で要介護者の脇下に手を入れ、もう一方の手でスライディングボードの上部をつかむ
  7. そのまま滑らせるように車いすへ移動させる
  8. スライディングボードを外し、要介護者の姿勢を整える

スライディングボードを利用した移乗介助は、慣れるまでは難しく感じる人もいます。
しかし、慣れると要介護者の負担がかなり減るうえに、移乗もスムーズになるので、ぜひ実践してみてください。

スライディングボードの選び方

スライディングボードは形状や素材によって使用感が異なります。
形状や素材はそれぞれ以下のような種類があります。

素材・プラスチック
・樹脂
・防水加工済み など
形状・長方形
・三角形
・ブーメラン型

スライディングボードを選ぶ際は、使用するシチュエーションを想定しましょう。
例えば、屋外で使用する機会が多い場合は、2つ折りにできたり、アコーディオンのように収納できたりする軽量タイプが適しています。

移乗介助する場面を踏まえれば、より使い勝手の良いスライディングボードを選べます。

スライディングシート

スライディングシートは、臀部の下に敷いて摩擦力を軽減させることで、滑って移乗できる器具です。
スライディングボードより軽いこともあり、軽度の移乗介助で利用されますが、よく滑るため要介護者が1人で使用しないよう注意しましょう。

スライディングシートの使い方

スライディングシートの使い方は、要介護者の状態によって変わります。
本章では、軽い介護を行うケースでの使い方を解説します。

  1. スライディングシートを臀部の下に敷いておく
  2. 介護士は横に並び、要介護者が前方に倒れないように移動方向の膝を押さえながら、骨盤に手を当て、移乗をサポートする
  3. 移乗が終わったら上半身を来た方向に向ける

なお、先述したようにスライディングシートは1人でも利用が可能です。
しかし、1人で利用する際も、事故を防ぐために介護士が傍にいるようにしましょう。

また、素材によっては滑りやすいものもあるため、加減を誤ると滑りすぎて事故につながる恐れがあります。
使い慣れていないときには注意しましょう。

スライディングシートの選び方

スライディングシートには、形状・サイズ・素材で以下のような種類があります。

サイズ・大(幅が80~90cm・長さが140~180cm程度)
・中(幅が60~80cm・長さが120cm程度)
・小(正方形で角60~80cm程度)
形状・筒型
・シート型
素材ナイロン・ポリエステルなど

スライディングボードと比べて、スライディングシートは軽量なうえに、折り畳みができるので携帯しやすい点が特徴です。

また、スライディングシートは筒型・シート型によって使い心地が異なります。

筒型はシートが回転する方向に滑らせることで、スムーズな移乗が可能です。
対して、シート型は360度滑らせられるため、要介護者をさまざまな方向に動かしたり、体位変換をしたりしたいときに便利です。

なお、スライディングシートは素材によっては洗濯できるタイプもあるので、清潔に利用できます。

洗濯する際は一般的な家庭用洗濯機を使用しても問題ありません。
ただし、使用されている素材によっては洗濯ネットに入れたり、一部のパーツを外したりする必要があるので、メーカーの説明書を必ずチェックしましょう。

介助ベルト

介助ベルトは、複数の持ち手がついたベルト状の福祉用具です。
要介護者の腰に装着すれば、ズボンを引っ張ったり無理に抱きかかえたりしなくても、移乗介助を楽にできます。

介助ベルトの使い方

介助ベルトは以下の手順で使用します。

  1. 介助ベルトを要介護者の腰回りや胴回りに巻く
  2. 骨盤周りを覆っていることを確認し、長さを調節してから介助ベルトのバックルを固定する
  3. グリップ(持ち手)をしっかり握る
  4. 要介護者に声をかけながら、移乗や立ち上がりを行う

介助ベルトは要介護者の負担にかからない位置に巻き付けることが重要です。
また、ベルトが緩みすぎていないか、締まりすぎていないかも必ず確認しましょう。

なお、2人介助で介助ベルトを使用する際は、以下の手順で使用しましょう。

  1. 介護士の内、一方は要介護者の正面に、もう一方は背後に回る(状況によって配置は変えること)
  2. 要介護者には介助ベルトの持ち手を握ってもらう
  3. 正面の介護士は要介護者の脇の下から肩に手を添えて支える
  4. 背後の介護士は要介護者の背中や腰回りをサポートする
  5. 介助ベルトの持ち手をしっかり掴み、要介護者を移乗する

2人介助を実施する際は、要介護者を含め、互いに声を掛け合いましょう。
状況に応じて声かけをし、適切に誘導することでスムーズに移乗できます。

介助ベルトの選び方

介助ベルトは使用する目的によって、以下のような種類があります。

  • 移乗用
  • 入浴用
  • 歩行用
  • リハビリ用

介助ベルトは使用する場面によって、ベルトの形状や素材が異なります。

また、製品によってサイズが違う点も注意しましょう。
要介護者の体型などを踏まえて、適切なサイズを選ぶことが重要です。

なお、さまざまな体型に対応できるフリーサイズの介助ベルトもあるので、使用する対象が頻繁に変わる際におすすめです。

加えて、機能性にも着目しましょう。
介助ベルトはグリップの数・装着方法・素材の質感などが製品によって異なります。

実際に移乗介助で使うことも踏まえ、使い勝手の良いものを選びましょう。

介護用リフト

介護用リフトは、身体を吊り上げて移乗介助をサポートする福祉用具です。
体重が重い要介護者を移乗させる際に、介護用リフトを利用すれば楽に移乗介助を実現できます。

介護用リフトの使い方

介護用リフトの使い方は以下のとおりです。

  1. 要介護者の身体を横向きにし、広げたスリングシートを身体の下に挟み込む
  2. スリングシートの中央を要介護者の背骨、下部を尾骨の位置に合わせる
  3. スリングシートのしわを伸ばし、要介護者の身体に沿った位置にあるか確認してから仰向けにする
  4. 要介護者の身体の中央にスリングシートが乗っているかを確認し、膝を立てさせて太ももの下にシートを通す
  5. 反対側の足も同様に通してからスリングシートを交差させる
  6. リフトをベッドに対して直角に差し込み、ストラップをハンガーにしっかり取り付ける
  7. リフトで要介護者の上半身を起こし、大腿部のしわを伸ばす
  8. 要介護者を吊り上げたら、腕や肩の位置を調整して圧迫感を軽減する
  9. ブレーキをかけた車いすにゆっくり降ろし、両膝を背中側に押しながら安定した姿勢で座らせる

介護用リフトは利用者がスリングシートの中央に位置している必要があるため、もしズレていた際は最初の手順からやり直す必要があります。
また、移乗中にリフトが傾いたときに備えて、車いすは座る直前まで動かせるようにしておきましょう。

介護用リフトを導入するタイミング

介護用リフトを導入するタイミングは、以下のケースが一般的です。

  • 要介護者の移動が困難になった
  • 介護士の身体的負担が大きくなった
  • より効率的かつ安全な環境での介護が必要になった

特に要介護者が自分でベッドから降りられなくなったり、介護士に腰痛などが発生したりした際は積極的に導入を検討しましょう。
要介護者・介護士の互いの負担が増加している状況では、介護の過程で双方が共倒れする事態になりかねません。

介護用リフトの選び方

介護用リフトは要介護者の状況に合わせて、最適な種類・スリングシートを選びましょう。

介護用リフトは以下のような種類があります。

種類特徴
天井走行リフト天井にレールを固定し、電動または手動で昇降・走行する
床走行式リフトキャスター付きで床面を自由に移動できる
ベッド固定式リフト特定のベッドに固定され、その場で昇降・移乗する
据置式レール型リフト (線レール・面レール)設定された場所でレールを固定し、昇降・移乗する
浴室用リフト浴室に設置して使用する
スタンディングリフト膝の前方への屈曲を抑え、臀部や腋下を支えて持ち上げる

また、要介護者を乗せるスリングシートも種類によって特徴が異なります。
それぞれの種類は以下のとおりです。

種類特徴
脚分離型スリングシート足の部分が分かれているタイプであり、汎用性が高い
シート型スリングシートハンモックタイプのシートであり、股関節の痛みが強い要介護者に適している
ベルト型スリングシート2本のベルトで構成されており、着脱が容易だが、寝たきりだったり移動が困難だったりする要介護者には不向き
ストレッチャー型スリングシート横向きのまま吊り上げられるので、起き上がりができない要介護者に適している
歩行用スリング体幹や太ももをサポートするタイプであり、移乗やリハビリなどで使用される

介護用リフトは設置する場所にも配慮が必要です。
在宅介護の場合、設置スペースが限られているような場所ではリフトの設置が困難な場合があります。

なお、介護用リフトは大型のものになると工事が必要になるうえに、導入費用も高くなるものです
要介護者によっては、費用の負担を懸念して導入をためらうケースも想定されます。

しかし、介護用リフトは要介護2以上であれば、介護保険を利用してレンタルが可能です。
通常ならレンタルするだけでも月々数千円~数万円かかるものでも、1~3割程度の自己負担でレンタルできるので、経済的負担を抑えられます。

ただし、住宅の改修が必要な介護用リフトはレンタルができないので注意しましょう。

斉藤 圭一氏
斉藤 圭一氏

移乗介助は、介護現場で最も事故と腰痛が発生しやすい場面の一つであり、正しい知識と手順を理解しておくことが重要です。特に、要介護者の体調・麻痺の有無・筋力・不安感といった個々の状態に応じた介助方法を選択することが、安全確保と自立支援の双方につながります。本記事ではボディメカニクスの基本原則を丁寧に整理しており、介護者が必要以上の力を使わずに、効率的かつ安定して移乗を行うためのポイントが分かりやすく解説されています。現場では「持ち上げる」介助が依然多く見られますが、これは要介護者の痛みや恐怖心を高めるだけでなく、介護士の腰痛リスクも大きくします。記事で紹介されているように、“重心を近づける・水平移動を意識する・大きな筋肉を使う”といった身体力学に基づく介助は、双方の負担軽減に非常に有効です。また、スライディングボードやシート、介助ベルト、リフトなど、補助用具の活用も安全性向上に欠かせません。本記事を参考に、事故防止と負担軽減を両立した質の高い介護を実践していただきたいと思います。

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介護の移乗介助は無理なく安全に行おう

介護の移乗介助を行う際は、無理なく安全に行うことが大切です。
要介護者はもちろん介護士も無理な体勢をとらずに、安全に移乗介助を行わなければ、転倒や怪我のリスクが高まります。

移乗介助のシチュエーションによって適切な介助方法が異なるため、それぞれケースに応じて要介護者が動きやすい姿勢で、移乗を実施してください。
この記事で紹介した移乗介助の方法や注意点を確認して、安全に移乗を実施しましょう。

監修:斉藤 圭一

主任介護支援専門員、MBA(経営学修士)

神奈川県藤沢市出身。1988年に早稲田大学政治経済学部政治学科を卒業後、第一生命保険相互会社(現・第一生命保険株式会社)に入社。その後、1999年に在宅介護業界大手の株式会社やさしい手へ転職。2007年には立教大学大学院(MBA)を卒業。 以降、高齢者や障がい者向けのさまざまなサービスの立ち上げや運営に携わる。具体的には、訪問介護・居宅介護支援・通所介護・訪問入浴などの在宅サービスや、有料老人ホーム・サービス付き高齢者住宅といった居住系サービス、さらには障がい者向けの生活介護・居宅介護・入所施設の運営を手がける。 また、本社事業部長、有料老人ホーム支配人、介護事業本部長、障害サービス事業部長、経営企画部長など、経営やマネジメントの要職を歴任。現在は、株式会社スターフィッシュを起業し、介護・福祉分野の専門家として活動する傍ら、雑誌や書籍の執筆、講演会なども多数行っている。

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