介護福祉士とは?仕事内容や資格を取得するメリットなどを解説
2024.06.12
介護福祉士は社会福祉を支える重要な仕事であり、介護分野における国家資格の1つです。
介護に関連する知識や技術を持ち、年に1回実施される国家試験をクリアした人が資格を取得できます。
介護福祉を学ぶ人にとって、介護福祉士の資格取得は目指すべき目標です。
しかし、「介護福祉士の仕事内容がわからない」「資格を取得するメリットがわからない」と感じる方もいるのではないでしょうか。
本記事では、介護福祉士の仕事や資格を取得するメリットなどについて解説します。
資格試験や取得にいたるまでのルートなどについても解説するので、ぜひ参考にしてください。
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目次
【基礎知識】介護福祉士とは?
まずは介護福祉士がどのような仕事なのかを確認しましょう。
介護福祉士は国家資格として扱われるほど重要視される反面、介護士やホームヘルパーとの違いがわかりにくい傾向があります。
本章では、介護福祉士の概要と、ほかの介護職との違いについて解説します。
介護福祉士の概要
介護福祉士は介護サービスを実施するだけでなく、サービス提供責任者を担うこともある立場です。
介護福祉士は「社会福祉士および介護福祉士法」において以下のように定められています。
この法律において「介護福祉士」とは、第四十二条第一項の登録を受け、介護福祉士の名称を用いて、専門的知識および技術をもつて、身体上または精神上の障がいがあることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護(喀痰かくたん吸引その他のその者が日常生活を営むのに必要な行為であつて、医師の指示の下に行われるもの(厚生労働省令で定めるものに限る。以下「喀痰吸引等」という。)を含む。)を行い、並びにその者およびその介護者に対して介護に関する指導を行うこと(以下「介護等」という。)を業とする者をいう。
出典:社会福祉士及び介護福祉士法第二条の2
介護福祉士の仕事は介護スタッフとして直接サービスの提供を行うだけではありません。
利用者向けにサービスの内容を説明したり、介護関連の相談を受けたりするなど、介護福祉士の仕事は多岐に渡ります。
介護福祉士と介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)修了者の違い
介護福祉士が国家資格であるのに対し、介護職員初任者研修は厚生労働省認定の公的資格ではあるものの国家資格ではありません。
また、介護福祉士は介護福祉の専門的な知識を活用し、チームのマネジメントや介護の指導などを行う場合もあります。
実際、介護福祉士を管理職にする介護事業所も珍しくありません。
そのため、介護事業所は無資格者より介護福祉士を好待遇で採用する傾向があります。
介護福祉士資格の取得方法4つ
介護福祉士資格の取得方法はひとつではありません。
大きく分けて、以下のようなルートがあります。
- 福祉系高校ルート
- 実務経験ルート
- 養成施設ルート
- EPAルート
本章では資格の取得方法について、各ルートごとに解説します。
実際に介護福祉士資格を取得する際の参考にしてください。
福祉系高校ルート
福祉系高校ルートとは、福祉系の高校で必要な科目と単位を取得し、国家試験をパスすることで資格を取得するルートです。
福祉系高校ルートを選択した場合、3年以上の履修期間中に介護福祉士養成に必要な53単位を取得します。
2009年以降の入学者であれば、実技試験が免除されるため、筆記試験だけで資格を取得できます。
ただし、2008年以前の入学者の場合、筆記試験と実技試験両方を受けなければなりません。
実務経験ルート
実務経験ルートは、実際に介護事業所で実務経験を積んだ状態で国家試験を受験するルートです。
3年以上+540日以上の実務経験に加え、介護福祉士実務研修を終了していることにより、筆記試験のみで資格の取得を目指せます。
実務経験ルートは、福祉系高校に通っていなかったり、中途採用で介護職に就いたりした人に適したルートです。
昨今は国の推奨もあり、働きながらでも介護福祉士の資格取得に向けた研修を受けられる体制を整えた事業所が増えています。
養成施設ルート
厚生労働大臣が指定した養成施設に通い、社会福祉士資格の受験資格を得る方法が養成施設ルートです。
高校を卒業した人なら2年以上、社会福祉養成施設や保育士養成施設等の出身者・福祉系大学を卒業した人なら1年以上の履修で受験資格を得られます。
なお、2017年から2026年の間に養成施設を卒業した場合、登録申請をすれば5年間は有資格者としてみなされます。
ただし、資格を5年以上有効にするなら、期間内に介護福祉士試験をパスするか、5年間継続して実務経験を積まなければなりません。
EPAルート
EPAルートは経済連携協定ルートとも呼ばれており、外国人が日本の介護事業所で働きながら介護福祉士資格を取得するためのルートです。
ベトナム・フィリピン・インドネシアの3ヶ国が対象となっており、介護事業所で就労・研修を受けて受験資格を取得します。
EPAルートは責任者監督の指導を受けながら、実務を3年以上を経験し、介護技術講習・介護課程・介護課程Ⅲ・実務者試験のいずれかを修了、あるいは履修すれば国家試験の受験資格を得られます。
なお、EPAルートは日本人には使用できない取得方法です。
介護福祉士の資格を取得する4つのメリット
介護福祉士は介護において重要な資格ですが、実際のサービス提供は無資格者でも可能です。
そのため、介護福祉士資格の必要性がよくわからない人もいます。
介護福祉士の資格取得には以下のようなメリットがあります。
- 需要が高く将来性がある
- サービスの品質が上がる
- 給与面で待遇が良い
- キャリアアップを狙いやすい
介護福祉士を目指すなら、あらためて資格を取得するメリットを確認しましょう。
需要が高く将来性がある
昨今は高齢化の進行により、介護のニーズがますます高まっています。
そのため、介護福祉士のような専門的知識を持った人材は需要が高く、業界全体でも重要視されています。
また、介護福祉士は介護サービスの提供だけでなく、現場のマネジメントや同僚の指導など、管理業務に従事する場面も少なくありません。
ニーズが高いうえに幅広い業務を体験できるため、やりがいを感じやすい点も魅力です。
サービスの品質が上がる
介護事業所の立場からすると、介護福祉士はサービスの品質を上げられる重要な人材です。
介護福祉士は、より高度な介護知識や、被介護者の心理・行動の傾向など、専門的なノウハウを身につけています。
介護サービスの品質を向上させるうえでも、介護福祉士は欠かせません。
以前より介護業界は深刻な人手不足に悩まされており、介護サービスの品質や事業所の体制を維持するためにも、優れた人材の確保は急務です。
そのため、介護福祉士を積極的に求める介護事業所は増加傾向にあります。
給与面で待遇が良い
給与面で待遇が良い点も、介護福祉士の魅力です。
かつて、介護福祉士は資格を取得しても資格手当しかもらえないことも少なくありませんでした。
しかし、昨今は人手不足の影響もあり、介護福祉士の給料面を優遇する介護事業所が増えています。
また、特定処遇改善加算の恩恵を受けられる点も強みです。
特定処遇改善加算とは、勤続10年以上の介護福祉士を対象に、8万円以上の賃上げ、あるいは年収440万円以上の処遇改善を行う制度です。
特定処遇改善加算は、主にベテランの介護福祉士向けの制度ですが、無資格の介護士より賃上げの上がり幅が大きい点がメリットです。
キャリアアップを狙いやすい
介護福祉士は、介護業界でのキャリアアップを狙いやすい資格です。
介護福祉士はマネジメントに係る知識も習得するため、介護スタッフだけでなく、サービス提供責任者や施設責任者などになれる可能性が向上します。
また、介護福祉士の資格は、認定介護福祉士やケアマネージャーなどの資格要件を満たせるため、さらなる資格取得を目指せます。
別の介護事業所に転職する際も採用面で有利になるなど、介護福祉士の資格はキャリアアップを目指す人にとって、有益なものです。
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介護福祉士の仕事内容
本章では介護福祉士の仕事内容について解説します。
介護福祉士は介護士やホームヘルパーと同じ業務だけでなく、さまざまな業務に従事します。
身体介護
身体介護は、利用者の身体に直接触れて行う介助サービス全般を指す用語です。
食事介助・入浴介助・排泄介助・移乗や移動の介助・更衣介助など、さまざまな介助サービスが身体介護に該当します。
利用者の日常生活を支援するうえで身体介護は欠かせないものであり、心身の変化を細かく観察しながら適切なケアを提供する必要があります。
生活支援
生活支援は、利用者が日常生活を営むうえで必要な、家事全般を支援する介助サービスです。
生活支援に該当する業務は、掃除・洗濯・皿洗い・買い物・ゴミ出し・薬の受け取り・一般的な調理などです。
介護福祉士の場合、専門的な知見をもとに適切な生活支援を実施します。
なお、生活支援はあくまでも介護を受けている利用者を対象としたサービスです。
利用者の家族やペットなどへの支援は、生活支援の対象になりません。
介護に関するアドバイス
利用者や、その家族などから介護の相談を受け、適切なアドバイスを提供することも介護福祉士の仕事です。
介護福祉士は専門的な知識を活かし、アドバイスを通じて利用者や家族の不安を解消したり、介護方針を決めたりすることも求められます。
そのため、介護の相談窓口に介護福祉士を配置するケースもあります。
介護福祉士が請け負う相談は単発のものに限りません。
時には継続的に相談を受け、利用者や家族の状況を見ながらアドバイスを提供することもあります。
社会活動支援
社会活動支援とは、利用者と社会のつながりを維持するために行われる仕事です。
地域活動への参加支援・就労支援・地域活動の情報提供などが該当します。
社会活動支援は、利用者の孤立を防ぎ、近隣住民や家族との関係を良好にするうえで不可欠なものです。
利用者が介護やリハビリを受ける際のモチベーションを向上させられるきっかけにもなります。
チームマネジメント
介護福祉士は、介護に関する高度な知識を持つ立場であるため、介護事業所によっては介護士のチームを統括・管理する役職に就くことは珍しくありません。
この場合、指導・シフト管理・サービス内容の見直しなど、重要な仕事を任せられます。
また、医師やケアマネージャーなど、別の職種のスタッフと連携する場面でも、介護福祉士は重要な立場です。
他職種との連携がスムーズになるよう、介護福祉士が連絡役を担う場面もあります。
介護福祉士国家試験の概要・合格率
介護福祉士の国家試験は、筆記試験が毎年1月下旬・実務試験が毎年3月下旬に実施されます。
ただし、申し込み期間は毎年8月上旬から9月下旬に設定されているので注意してください。
直近で開催された筆記試験・実技試験の試験科目は、それぞれ以下のように設定されています。
【筆記試験】
- 人間の尊厳と自立
- 人間関係とコミュニケーション
- 社会の理解
- 介護の基本
- コミュニケーション技術
- 生活支援技術
- 介護過程
- こころとからだのしくみ
- 発達と老化の理解
- 認知症の理解
- 障がいの理解
- 医療的ケア
- 総合問題
【実技試験】
介護等に関する専門的な技能
参照:介護福祉士国家試験|公益財団法人社会福祉振興・試験センター
上記はあくまで直近で出題された科目です。
場合によっては出題科目や時間割が変更される可能性があります。
なお、介護福祉士の合格率は過去5年で以下のように推移しています。
第32回 | 第33回 | 第34回 | 第35回 | 第36回 | |
受験者数(人) | 84,032人 | 84,483人 | 83,032人 | 79,151人 | 74,595人 |
合格者数(人) | 58,745人 | 59,975人 | 60,009人 | 66,711人 | 61,747人 |
合格率(%) | 69.9% | 71% | 72.3% | 84.3% | 82.8% |
近年は国家試験の合格率が向上しており、第35回(2023年)・第36回(2024年)は8割を超える合格率を達成しています。
これまでの審議内容から、国は介護スタッフの介護福祉士比率を上げていきたい思惑があると見て取れます。サービス提供体制強化加算の算定要件に、介護職員の総数に対して介護福祉士が占める割合が含まれていたり、新【介護職員等処遇改善加算】の最上位であるⅠの算定に、一定数以上の介護福祉士配置が求められたりしていることからも明らかでしょう。第36回介護福祉士国家試験の合格率は82.8%と、国家資格としては驚異的な合格率であり、ここでも介護福祉士を増やしたい思惑が見て取れます。ただし、誤解を恐れずに申し上げると、残念ながら【介護福祉士=スキルの高い介護職】という構図にはなっていないのが現状です。各法人単位で、スキルや知識を評価するキャリアパス制度を導入する等、継続して学ぶ仕組みづくりが必要不可欠なのです。
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介護福祉士は将来性がある重要な仕事
介護福祉士は介護サービスを提供しつつ、高度な専門知識を活かして他のスタッフを指導したり、利用者にアドバイスを送ったりする重要な仕事です。
そのため、介護福祉士は介護分野で重要な国家資格として扱われています。
近年は介護ニーズの高まりや人手不足の影響もあり、介護福祉士を求める介護事業所が増えてきました。
介護福祉士は需要が高いうえに、給与面で待遇が良く、キャリアアップも狙いやすいなど、資格取得のメリットが多くあります。
昨今の日本において、介護福祉士は社会的に有意義な仕事です。
介護業界に興味がある方は、ぜひ目指してください。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。