看護師の行動計画の書き方|内容や目標設定のポイントなどを解説
2024.08.20
看護において、行動計画はその日にこなすべきタスクを把握し、適切に遂行するうえで欠かせないものです。
特に現場経験が少ない新人看護師や看護実習生は、行動計画を参考にする機会が多いでしょう。
しかし、「行動計画をどのように書けば良いのか…?」と悩む人もいるのではないでしょうか。
実は、行動計画の書き方や目標設定には、いくつかのポイントがあります。
本記事では、看護の行動計画の書き方と目標設定のポイントを解説します。
行動計画の作成方法でお悩みの方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
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目次
【基礎知識】看護における行動計画とは
行動計画とは、患者の看護問題を解決するために、必要なタスクを記載した計画書です。
「日常的にこなすルーティン」や「優先度が高い看護問題」、「解決にあたって設定した目標」などが記載されています。
看護師が効率的にタスクを遂行し、患者に必要な処置を行ううえで行動計画は不可欠です。
なお、行動計画は他の看護師とも共有するため、誰が読んでも内容が把握できるように、客観的な視点で作成しなければなりません。
看護における行動計画の位置付け
看護の行動計画を作成する際は、1日のタスクの流れを記載し、それぞれのタスクに目標を設定します。
看護過程においては、行動計画に記載された各タスクの目標を完了させることが望まれます。
このように、行動計画は看護師にとって1日の指針となるものです。
適切な行動計画を作成し、共有することにより、チーム全体の取り組みが決定されます。
看護の行動計画の作成が難しいと感じる理由
行動計画は重要なものですが、実際に作成するとなると、「難しい」と感じる人も多いでしょう。
行動計画の作成を難しいと感じる理由には、以下のようなものがあります。
- 看護業務の優先順位を決められない
- 計画どおりに進まない
- 計画が終わらない
それぞれの理由について、順番に解説します。
看護業務の優先順位を決められない
行動計画は、1日のタスクの流れを記載するもののため、看護業務の優先順位を決められないと上手く作成できません。
特に、経験が浅い看護実習生や新人看護師は、どのタスクを優先すれば良いかわからないものです。
自分では優先順位が高いと思っても、先輩看護師と考えが違う場面も少なくありません。
適切な優先順位は、現場の動きや先輩看護師の行動から学んでいくことで決定できるようになります。
計画どおりに進まない
看護現場では、計画どおりに物事が進むとは限りません。
患者の容態が急変したり、想定外のタスクが発生したりすることは日常茶飯事です。
そのため、あまりに綿密な行動計画を立てると、計画外の事態が頻発して予定が狂うケースもあります。
もちろん、細かな計画を立てることは重要ですが、実態とそぐわないことがないよう柔軟性を盛り込むことが重要です。
計画が終わらない
1日かけても、行動計画どおりにタスクが終わらないケースは珍しくありません。
看護師はこなすべきタスクが多いため、結局終わらないタスクが残ってしまいがちです。
看護の経験を積めば、自然とタスクをこなすスピードは速まりますが、それでもギリギリになる看護師は少なくありません。
看護師が作成する行動計画の種類
看護師が作成する行動計画の種類は、以下のように大きく分けて2種類あります。
- 看護過程で作成する行動計画
- 看護実習で作成する行動計画
それぞれの行動計画の大まかな書式に違いはありません。
ただし、場面によって扱いが異なる場合があるため、注意しましょう。
看護過程で作成する行動計画
看護過程とは、患者に対し適切な看護やヘルスケアを提供するために計画を立て、実践する一連の行動を意味する用語です。
看護過程には以下の5段階があります。
アセスメント | 患者の問題、あるいは潜在的な問題を解決するために情報収集を行う |
看護診断 | アセスメントで得た情報を基に優先順位を付け、看護問題であるかを確認する |
看護計画 | 看護診断を基に患者とともに行動計画を作成する |
看護介入 | 看護計画を基に看護ケアを実践する |
看護評価 | 看護ケアの結果を評価する |
行動計画の作成は看護計画に該当するものであり、1日の計画を作成することで効率的に看護を実践できるようにします。
行動計画はチーム間で共有し、互いに連携できるようにするのが基本です。
一方で、新人の看護師の場合、看護目標を先に設定し、そこから逆算する形で行動計画を作成するパターンがあります。
看護実習で作成する行動計画
看護実習では、学習計画と行動計画を併記する点が特徴です。
自身の看護目標を見据え、達成までのプロセスを明確に記載するように心がけましょう。
ほとんどの病院では、作成した行動計画を朝の病棟オリエンテーションで発表します。
指導者はもちろん、先輩看護師の前で発表するため、看護実習生にとって緊張する場面です。
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看護における行動計画の書き方
本章では看護の行動計画の書き方について解説します。
行動計画の書き方は以下5つのプロセスに分けられます。
- 1.テンプレートを用意する
- 2.決まっている看護ケアの予定を先に記入する
- 3.時間を調節できる予定を記入する
- 4.合間の時間に実施できる予定を記入する
- 5.根拠を明確にして優先順位を決定する
基本となる書き方を身に付ければ、行動計画のスムーズな作成が可能です。
ぜひ実践する際の参考にしてください。
1.テンプレートを用意する
行動計画を作成するなら、最初にテンプレートを用意しましょう。
患者の氏名・実施する時間・タスクの内容が明確であれば、テンプレートは書きやすいものを選んでも問題ありません。
医療システムから電子カルテを出力してテンプレートにする人もいれば、ネット上にあるテンプレートを利用する人もいます。
また、看護師によっては手書きでテンプレートを作成する人もいるなど、自分に合ったものを選ぶ人が多い傾向があります。
2.決まっている予定を先に記入する
行動計画には、最初に決まっている予定を先に記入しましょう。
実施する時間が決まっているタスクは、優先順位が高いものです。
忘れないようにマーカーなどで強調しておきましょう。
3.時間を調節できる予定を記入する
時間を調節できる予定は、目安の時間に記入しましょう。
「10時~11時」のように大まかな時間帯で記載すれば十分把握できます。
また、無理に予定を詰め込むと、突発的に発生したタスクへの対応がしづらくなるため、スケジュールに余裕を持たせると良いでしょう。
4.合間の時間に実施できる予定を記入する
優先順位が高いタスクを記載してくと、合間の時間が見えてきます。
合間の時間ができたら、その時間に実施できる予定を記入しましょう。
合間の時間に予定を記入しておくと、より効率的にタスクを回せるようになります。
ただし、合間の時間に実施するタスクは、先輩看護師やほかの患者に影響が及ばないものに限定されます。
5.根拠を明確にして優先順位を決定する
行動計画のテンプレートにすべて予定を埋めると、重複するタスクがでてきます。
タスクが重複した場合は、優先順位を決定しましょう。
優先順位は、以下の根拠に基づいて決定します。
- 重症度
- バイタルサインなどで把握できるリスク
- 看護師による配慮の必要性
自身で優先順位を判断できない際は、先輩看護師に相談しましょう。
また、対応しきれないタスクは行動計画を共有した際に、ほかの看護師に依頼してください。
看護師が行動計画を作成する際の5つのポイント
看護師が行動計画を作成する際は、いくつかのポイントを意識する必要があります。
本章では、以下のポイントについて解説します。
- 患者の都合を優先する
- 効率性を重視する
- 先輩看護師にチェックしてもらう
- 終わった予定は消しておく
- 定期的に計画を見直す
いずれのポイントも、有効的な行動計画を立てるうえで不可欠です。
行動計画を作成する前に、必ずチェックしましょう。
患者の都合を優先する
行動計画を作成するうえで、患者の都合は何よりも優先すべき事柄です。
行動計画を終わらせることを優先するあまり、患者へのケアが不十分になると、危機的な状況を招くことになりかねません。
特に、優先順位の決め方がわからないうちは、何よりもまず患者の都合を優先して行動計画を立てましょう。
効率性を重視する
スムーズに完了できる行動計画を目指すうえで、効率性の重視は不可欠です。
先述した書き方で作成すると、時間厳守のタスクとそうでない作業が自然と把握できます。
時間厳守のタスクを軸に、ほかのタスクを振り分ければ、無駄のない行動計画の作成が可能です。
先輩看護師にチェックしてもらう
新人の看護師であれば、作成した行動計画は必ず先輩看護師にチェックしてもらいましょう。
慣れないうちは、自己判断だけで行動計画を作成することは困難です。
遠慮せずに先輩看護師に添削してもらい、行動計画をブラッシュアップしましょう。
なお、先輩看護師にチェックしてもらう際は、作成した行動計画の根拠を伝えましょう。
根拠を伝えれば、自分の判断を尊重したうえで対応してくれるようになります。
終わった予定は消しておく
行動計画に則ってタスクを実践する際は、斜線を引くなど、終わった予定を消しておきましょう。
完了したタスクと未完了のタスクが明確になり、動きやすくなります。
特に、新人の看護師は行動計画にメモを残すことが多いため、進行状況を把握しにくいです。
行動計画への記載は最小限に留め、把握しやすい内容にしましょう。
定期的に計画を見直す
看護過程において、1日の看護評価は今後の看護サービスの質を向上させるうえで欠かせない取り組みです。
行動計画も、定期的に内容を見直し、よりブラッシュアップしましょう。
1日の予定で感じたことやミスなどを確認するのはもちろん、先輩看護師からアドバイスを得ると、有意義な見直しができます。
看護師に限らず、多数の患者・利用者がいる病院や施設では、こうした行動計画は非常に重要です。ある介護施設では1分単位で、入居者の介助(患部の処置、トイレ誘導、移動介助等)をスケジュール化し、その通りに行動することで業務の見える化と他スタッフとの連携を強化しています。また、こういった病院・施設ではナースコールなどで呼ばれる非定時の介助が非常に多いのも特徴に挙げられます。こうした非定時の看護・介助に多くの時間を取られてしまっているのです。このような非定時の介助を如何に減らすか?という観点でも、行動計画は非常に有効です。例えば、非定時介助の多くは排泄にまつわるものが多いので、個々の患者・利用者をアセスメントし、排泄介助を『定時化』し行動計画に組み込むだけで、非定時介助を大幅に減らすことができます。
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書き方やポイントを押さえ、看護に役立つ行動計画を立てよう
看護において、行動計画は効率的にタスクを実践して、適切な看護サービスを提供するうえで重要なものです。
ただし、経験が浅い看護師は行動計画を上手く作成できなかったり、予定どおり終わらせられなかったりするなど、さまざまな悩みの種になりがちです。
より良い行動計画を作成するなら、まずは書き方やポイントを押さえましょう。
行動計画をブラッシュアップできれば、看護師としてのスキルアップにもつながります。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。