【医療業界動向コラム】第101回 本年10月以降の医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算の見直しについて答申される。マイナ保険証の利用率に応じて3つの区分に再編。
2024.07.30
令和6年7月17日、厚生労働省にて第592回中央社会保険医療協議会総会が開催された。本年10月からの医療DX推進体制整備加算で未定となっていたマイナ保険証の利用率、医療情報取得加算の今後について諮問され、そのまま答申された。
医療DX推進体制整備加算は、本年10月よりマイナ保険証の利用率が一定水準を超えることが要件として追加されることとなっていた。
今回の中医協では、一定水準を3つのグレードにわけ、従来の医療DX推進体制整備加算を3区分とした。最も高くなる加算1は「十分な実績を有する」ということで従来の8点に3点を加えた11点となっている。さらなる利活用を促すこと、効果を発揮するためにもマイナポータルの情報に基づき患者からの「健康管理の相談に応じる」ことなどが要件に加えられている。加算2は「必要な実績」を評価するものとして10点、加算1と同様に「健康管理の相談に応じる」ことが要件に加えられている。加算3は当初の評価である8点のままだ。利用率についてだが、10-12月と令和7年1月以降の2段階で変わる。10-12月は加算1が15%、加算2は10%、加算3は5%。25年1-3月は加算1が30%、加算2が20%、加算3が10%となる。ところで、この利用率の計算についてだが、10月から1月までは、2カ月前のオンライン資格確認件数をベースに算出した利用率となり、それ以降は3カ月前のレセプト件数をベースに算出した利用率を用いる(当該医療機関の全レセプト枚数におけるマイナ保険証を利用して受診した患者の合計人数の割合)。来年4月以降の利用率については本年末に改めて検討し、改めて設定する方針だ。
なお、この6月からすでに医療DX推進体制整備加算の届出をしている医療機関については、新たに届出をし直す必要はない。
ところで、医療DX推進体制整備加算では、本年度末(令和7年3月末)までに電子処方箋の導入、来年(令和7年)9月末までに電子カルテ情報共有サービスの導入が要件となる。しかしながら、電子処方箋の導入状況は芳しくないこと、電子カルテ情報共有サービスについては来年1月からのモデル事業が開始されたのちの本格稼働(2025年度)とされていることから、来年度以降の算定の継続が不安視されている。そこで、これからの整備・運用状況を十分に確認した上で必要な対応をしていくことが答申書の附帯意見に盛り込まれている。
合わせて、主にマイナ保険証の情報を利用もしくは初診時等の標準的な問診票を活用した適切な情報収集を評価する医療情報取得加算についても見直される。本年12月2日以降は新規での健康保険証の発行は原則としてなくなることから、当該加算自体の廃止も検討されていたが、適切な情報収集が質の高い医療の提供につながるとの声もあることから、本年12月以降はマイナ保険証の利用の有無に関係なく、適切な情報収集と活用を評価するものとして点数を1点に引き下げて存続することとなった。医療DX推進体制整備加算での高い区分ができたことも影響したといえる(図2再掲)。なお、医療機関への再診時はこれまで通り3カ⽉に1回の算定のままだが、薬局(調剤報酬)の場合は6カ月に1回となっていたものを12カ月に1回へと改める。
いずれにせよ、マイナ保険証の利用率を高めることが必須であることに変わりはない。声かけや院内掲示の方法の工夫など取組を改めて見直したい。
山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員
1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。
https://www.hckn.work