ケアプランセンター(居宅介護支援事業所)とは?施設の役割や人員基準を解説
2024.09.18
介護ニーズが高まっている昨今、ケアプランセンターの重要性がますます高まっています。
利用者がより良い介護サービスを受けるうえで、ケアプランセンターの存在は欠かせません。
居宅介護支援事業所とも呼ばれるケアプランセンターですが、ごく少数の人員で運営できる点が特徴です。
しかし、ケアプランセンターの業務内容は多岐に渡るうえに、人員基準など留意すべきルールも多くあります。
本記事では、ケアプランセンターの役割や人員基準などについて解説します。
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目次
【基礎知識】ケアプランセンター(居宅介護支援事業所)とは?
まずは、ケアプランセンターの基礎知識について紹介します。
ケアプランセンターの概要
ケアプランセンターとは、在宅介護の相談窓口がある施設です。
ケアマネージャーが在籍しており、居宅介護支援事業所とも呼ばれます。
なお、厚生労働省において、ケアプランセンターの業務は以下のように定義されています。
「居宅介護支援」とは、居宅の要介護者が居宅サービス等を適切に利用できるよう、心身の状況、置かれている環境、要介護者の希望等を勘案し、居宅サービス計画を作成するとともに、サービス事業者等との連絡調整を行い、介護保険施設等への入所を要する場合は、当該施設等への紹介を行うことをいう
出典:居宅介護支援|厚生労働省
昨今は介護ニーズが高まっていますが、利用者やその家族の力だけで理想的なケアを受けることは簡単ではありません。
介護計画の策定や介護施設の選択には、専門的な知識が求められるためです。
ケアプランセンターは利用者の悩みに応え、ニーズに合ったケアプランを作成するなど、重要な役割を担っています。
近年のケアプランセンターの状況
近年は高齢化の進行もあり、介護ニーズはますます高まっています。
一方で、ケアプランセンターの数が年々減少している点には注意が必要です。
以下の表を見てみましょう。
年 | ケアプランセンターの施設数 |
2015年 | 40,127 |
2016年 | 40,686 |
2017年 | 41,273 |
2018年 | 40,956 |
2019年 | 40,118 |
2020年 | 39,284 |
2021年 | 39,047 |
2022年 | 38,538 |
2017年まではケアプランセンターの施設数は増加していましたが、2018年以降は減少の一途をたどっています。
この背景には、ケアプランセンターの収支差率が影響しています。
上記のグラフのように、ケアプランセンターの収支差率は近年改善されつつあるものの、依然として赤字を計上している施設は多くある状況です。
特にケアマネージャー個人が経営している小規模な施設だと、赤字から脱却できず、そのまま廃業してしまうケースは珍しくありません。
そのため、ケアプランセンターはニーズが高い一方で、施設数の維持が今後の課題とされています。
地域包括支援センターとの違い
ケアプランセンターと似た施設に、地域包括支援センターがあります。
地域包括支援センターも介護に関する相談窓口を設けており、相談者に介護施設の紹介を行う場合があります。
しかし、地域包括支援センターは介護福祉を包括的に扱う施設であり、介護保険を利用したケアプランを作成するケアプランセンターとは役割が異なります。
また、地域包括支援センターは自治体、あるいは自治体から委託された企業が運営しているのに対し、ケアプランセンターは法人が運営しているケースが一般的です。
ケアプランセンターの役割
ケアプランセンターの役割には、以下のようなものがあります。
- ケアプランの作成
- ケアプランに関する相談や説明
- 要介護認定を申請する際の代行
- 利用者の居宅訪問
- 介護事象者・関係者との相談や調整
本章では、それぞれの役割について具体的に解説します。
ケアプランの作成
ケアプランの作成は、ケアプランセンターにおいてもっとも重要な役割の1つです。
ケアプランは「居宅サービス計画書」とも呼ばれ、利用者が受ける介護サービスをまとめた計画書を指します。
ケアプランを作成する際は、ケアマネージャーが利用者にアセスメントを行い、利用するサービスの内容・時間・回数・料金などをまとめます。
さらに、利用者やその家族に説明を行い、各事業者と確認をすれば、ケアプランは完成です。
ケアプランは利用者が受ける介護サービスの基本方針となるものであり、完成後も状況に応じて見直しが行われます。
ケアプランに関する相談や説明
ケアプランに関する相談や説明も、ケアプランセンターの重要な役割です。
利用者やその家族への相談・説明はケアプラン作成と並行して行われ、課題やニーズを聞き出すために実行されます。
なお、ケアプランセンターは、要介護1以上の利用者を対象としています。
要介護認定を申請する際の代行
要介護認定は、介護保険を利用するうえで不可欠なプロセスです。
通常は希望者が窓口で申請しますが、希望者が申請できない、または利用者の家族が代行できない場合であれば、ケアプランセンターによる要介護認定申請の代行も可能です。
また、自治体からの依頼でケアプランセンターが訪問調査を行うケースもあります。
利用者の居宅訪問
利用者の居宅訪問は、ケアプランの最適化や実施状況の確認を行うためのサービスです。
場合によっては、利用者の居宅だけでなく、公的な施設や病院などで面談を行います。
介護事業者・関係者との相談や調整
介護事業者・関係者との相談や調整は、ケアプランの作成にも関連する業務です。
サービスを提供する介護事業者はもちろん、医療機関・自治体・地域包括支援センターなど、さまざまな機関との相談・調整を行います。
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ケアプランセンターの人員基準
他の介護施設と同様に、ケアプランセンターにも人員基準が設けられています。
そのため、ケアプランセンターを開設する際は、必ず基準をクリアしなければなりません。
本章では、ケアプランセンターの人員基準について解説します。
なお、ケアプランの人員基準について詳しく知りたいなら、以下の関連記事をご覧ください。
関連記事:居宅介護支援事業所における人員基準とは?運営基準と合わせて解説
管理者の人員基準
ケアプランセンターの人員基準において、管理者は各事業所に必ず1人配置しなければなりません。
この場合、管理者は専従の主任ケアマネージャー(主任介護支援専門員)でなければなりません。
ただし、主任介護支援専門員の確保が著しく難しい場合は、ケアマネージャー(介護支援専門員)を管理者として配置することが認められています。
また、同一の敷地内であれば、別の事業所の介護支援専門員による兼任も可能です。
参照:指定居宅介護支援等の事業の人員および運営に関する基準|厚生労働省
ケアマネージャーの人員基準
ケアマネージャーの人員基準は以下のとおりです。
- 常勤のケアマネージャーを必ず1人以上配置しなければならない
- 利用者の人数が44人につきケアマネージャーを1人配置する。44人を超える場合は、44人または端数が増えるごとに追加で1人配置しなければならない。
なお、ケアプランデータ連携システムを利用していたり、事務員を配置していたりする場合は、利用者の基準が49人になります。
参照:指定居宅介護支援等の事業の人員および運営に関する基準|厚生労働省
ケアプランセンターの4つの課題
ケアプランセンターの業務では、以下のような課題に直面する場面が多くあります。
- 利用者がケアプランに不満を抱く場合がある
- 利用者の確保が難しい
- 小規模なケアプランセンターは赤字になりやすい
- ケアマネジャーの業務負担の増加
より良い運営を目指すためにも、あらかじめ課題を把握し適切に対処しましょう。
利用者がケアプランに不満を抱く場合がある
利用者がケアプランに不満を抱く場面は珍しくありません。
利用者によっては、介護保険制度や介護サービスを理解しておらず、不満を抱くことがあります。
そのため、ケアマネージャーは提供できるサービスの範囲を丁寧に説明しなければなりません。
もちろん、ケアマネージャーが利用者のニーズを把握できていないままケアプランを作ることは禁物です。
利用者の課題解決に貢献できないケアプランを続けると、ケアプランセンターの信頼を損ないます。
利用者の確保が難しい
ケアプランセンターの収益は利用者の人数によって決まります。
しかし、利用者の確保は決して簡単なことではありません。
人員基準の解説で述べたように、ケアプランセンターはケアマネージャーが担当する利用者の人数が一定数を超えると、逓減制の減算対象となります。
そのため、安直に利用者を増やすとかえって収益が低下する恐れがあります。
事務員の配置などで逓減制の条件は緩和できるものの、利用者を一定以上を集めるならケアマネージャーの増員も同時に考えなければなりません。
つまり、利用者の確保は収益を確保すると同時にケアプランセンター全体の人員調整にも関連する課題です。
利用者を増やす際は、自施設の人員体制に問題がないか必ず確認しましょう。
もし人員の確保が難しい際は、ケアプランデータ連携システムの導入などを検討することもおすすめです。
小規模なケアプランセンターは赤字になりやすい
ケアマネージャーが1人でケアプランセンターを運営しているケースも珍しくありませんが、小規模なケアプランセンターだと、赤字になりやすい傾向があります。
介護報酬改定の影響もあり、以前より収益化しやすくなったものの、利用者を一定以上確保しなければ十分な収益は得られません。
しかし、小規模なケアプランセンターだと、利用者が増加した際にスタッフを増員しづらいため、業務負担の増加や介護報酬の減算を招く恐れがあります。
そのため、業務効率化によって人件費を抑制したり、特定事業所加算などを活用したりするなど、工夫して収益を増やさなければなりません。
なお、ケアプランセンターの収益を増加する方法について知りたければ、以下の記事をご覧ください。
関連記事:居宅介護支援事業所は儲からない?収支や黒字化のポイントなどを解説
ケアマネージャーの業務負担の増加
ケアプランセンターの運営において、ケアマネージャーの業務負担のコントロールは重要な課題です。
ケアマネージャーの業務負担の増加は、残業の常態化、ひいては人件費の高騰につながります。
ケアプランセンターは業務の仕様上、人件費が経費の大半を占めています。
人件費が高騰し続けると、経営状態を圧迫し、収支差率が悪化しかねません。
特にアナログな手法で作業を行っているケアプランセンターでは、業務が煩雑化しやすく、ケアマネージャーの負担を増加させる恐れがあります。
そのため、ケアマネージャーの業務負担を軽減するためにも、ICTの導入による業務の効率化が大切です。
ICTの導入は特定事業所加算の取得や逓減制の緩和にもつながるため、積極的に取り組みましょう。
ケアプランセンターの業務を効率化するには「すぐろくケアマネ」を活用しよう
ケアプランセンターの業務を効率化するなら、弊社「ワイズマン」のすぐろくケアマネをご検討ください。
すぐろくケアマネは、進捗管理・請求業務ができるワイズマンのケアプランセンター向け介護ソフト 「在宅ケアマネジメント支援システムSP」(以下SP)と連携することで、業務効率化を実現するタブレット用記録システムです。なお、SPではサービス計画書の作成、利用者のケアの進捗管理、給付管理表・請求明細書の作成を支援する機能を搭載しています。
すくろくケアマネをSPと連携することにより、利用者情報の電子化、検索・共有などをはじめ、業務の効率化に役立つ機能を利用することができます。
また、隙間時間や外出中の記録を可能にする音声入力や、モニタリングの一括入力など、事務作業を簡略化する機能を備えている点も魅力です。
すぐろくケアマネを活用すれば、業務の効率化はもちろん、人件費の削減も実現しやすくなるでしょう。
多くの事業所が導入した実績もあるので、ぜひお試しください。
ケアマネの有効求人倍率は4.38倍となっており、非常に高い状態が続いています。この要因には①待遇の悪さ、②業務の煩雑さが挙げられるでしょう。①に関してケアマネを取得するルートはいくつかありますが、介護現場を経験し介護福祉士を取得後にケアマネ取得というパターンが王道です。こうした現場出身のケアマネにとって、それまで夜勤などで手当がついていた状況と比較して、場合によっては給与が減少してしまうケースもあります。②は深刻で、ケアマネ業務は『ここまで!』という線がなかなか引きづらく、結果的に雑多な業務を膨大に抱えてしまうケアマネが沢山存在しています。こうした点がケアマネ不人気にも繋がっているのです。①と②の解決策として有効なのは徹底したICT化でしょう。居宅はICT化との相性が非常に良い業界なのです。
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ケアプランセンターの役割を果たすには課題の解決が重要
ケアプランセンターは利用者のケアプランを作成するだけでなく、関係者との連絡・調整や定期面談によるプランの修正など、さまざまな役割を担っている施設です。
利用者にとって有益な介護サービスを受けるうえでも、ケアプランセンターは欠かせません。
しかし、ケアプランセンターは理想的なサービスを提供するうえでも、解決しなければ課題をいくつか抱えています。
より良いサービスを提供するうえでも、課題の解決に向けた施策を積極的に実践しましょう。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。