ケアプラン(居宅サービス計画書)の文例|第1表や第2表などの書き方を解説

2024.09.18

ケアプランとは、居宅介護支援事業所で作成される書類です。
ケアプランは利用者が受ける介護サービスの基本方針になるものであり、利用者の課題を解決するうえで欠かせません。

しかし、ケアプランは複数の書類で構成されており、それぞれ記載する内容が異なります。
利用者が読むことも踏まえ、ケアマネージャーはわかりやすく記載しなければなりません。

本記事ではケアプランの作成方法や、内容別の文例などについて解説します。
より良いケアプランを作成するポイントについても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

ケアプランとは

ケアプランは利用者が介護サービスを受けたり、介護サービス事業者がより良いサービスを提供したりするうえで不可欠な書類です。

ケアプランに記載される内容は、主に以下のとおりです。

  • 総合的な援助の方針
  • 利用者やその家族の意向
  • 解決すべき課題
  • 提供される介護サービスの内容
  • 介護サービスの計画
  • 会議や相談の記録
  • 利用単位数と費用

解決しなければならない利用者の課題や面談時のやり取りなど、ケアプランに記載する内容は多岐に渡ります。
ケアマネージャーは利用者やその家族はもちろん、サービス事業者などさまざまな関係者から意見を集めなければなりません。

ケアプランの内容は介護サービスの質に直結します。
利用者が課題を解決し、自分らしい生活を送るうえでも、ケアマネージャーは入念にケアプランを作成しなければなりません。

ケアプランの種類

利用者が受けるサービスによって、作成するケアプランは異なります。
代表的なものは以下の3種類です。

  • 居宅サービス計画書
  • 施設サービス計画書
  • 介護予防サービス計画書

本章では、それぞれの特徴について解説します。

居宅サービス計画書

居宅サービス計画書は要介護度1〜5で、自宅で過ごす利用者向けに作成されるケアプランです。
以下のような介護保険サービスを受ける際に、居宅介護支援事業所で作成されます。

サービス名該当する居宅サービス
訪問サービス訪問介護訪問入浴介護訪問看護訪問リハビリテーション居宅療養管理指導
通所サービスデイサービス通所リハビリテーション
短期入所サービス短期入所療養介護短期入所生活介護ショートステイ
その他福祉用具のレンタル・購入介護のための住宅改修特定施設入居者介護

居宅サービス計画書は、自宅に住みながら自分らしい生活を継続することを目的として作成されます。

施設サービス計画書

施設サービス計画書とは、要介護度1〜5で施設サービスを利用する際に作成されるケアプランです。
主に、当該介護施設のケアマネージャーが作成します。

施設サービス計画書を作成する際は、以下の介護保険サービスが対象です。

  • 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
  • 介護老人保健施設
  • 介護療養型医療施設
  • 介護医療院

なお、特別養護老人ホームは他の施設と異なり、要介護3以上の利用者でなければ利用できません。

介護予防サービス計画書

介護予防サービス計画書は、要支援度1~2の利用者が対象であり、介護予防サービス・生活支援サービスを受ける際に必要な書類です。
地域包括支援センターの社会福祉士や主任ケアマネージャーなどが作成します。

介護予防サービス計画書作成の対象となるサービスは以下のとおりです。

サービス名該当する介護予防サービス
訪問サービス介護予防訪問介護介護予防訪問入浴介護介護予防訪問看護介護予防訪問リハビリテーション介護予防居宅療養管理指導
通所サービスデイサービスデイケア
短期入所サービスショートステイ医療型ショートステイ
その他福祉用具のレンタル・購入介護のための住宅改修特定施設入居者介護

介護予防サービス計画書は、要介護を予防することを念頭に作成される書類です。
そのため、身体機能の悪化を防いだり、生活機能を維持したりすることに重点が置かれます。

ケアプランを作成する流れ

本章では、ケアプランを作成する流れ(ケアマネジメントプロセス)について解説します。
なお、本章では居宅サービス計画書を例に、一連の作成手順を紹介します。

プロセス作業の内容
インテーク利用者から受ける最初の相談。介護サービスの希望や課題などを確認する。
アセスメント利用者の自宅を訪問し、状態を把握する。介護状況・健康状態・希望などの情報を収集し、分析する。
原案の作成アセスメントで得た情報を基にケアプランの原案を作成する。介護サービスの内容・利用回数・利用料金・時間などをまとめる。
サービス担当者会議利用者・利用者家族・介護サービス事業者を交えて会議を行う。必要があればケアプランを修正する。
利用者・利用者家族に確認完成したケアプランについて、利用者・利用者家族から同意を得る。
ケアプランの交付完成したケアプランを正式に交付する。
介護サービス事業者との契約介護サービスの提供に妻子、介護サービス事業者と契約を締結する。
サービス提供・介護保険給付の管理介護サービスの提供・介護保険給付の管理を行う。

ケアプランの作成は、上記のプロセスで完了するものではありません。
定期的なモニタリングによって、「ケアプランが適切に提供されているか」「利用者が介護サービスに満足しているか」などを入念にチェックします。

その結果、ケアプランの見直しが必要になった際は、再度アセスメントから作業を行います。
ケアプランは作成・実行するだけでなく、モニタリングによる見直しも重要なプロセスです。

1回きりで作成を終えず、繰り返し改善することでケアプランは初めて完成されます。

ケアプラン(居宅サービス計画書)の作成方法と文例

本章ではケアプランの作成方法と文例について解説します。
居宅サービス計画書の場合、ケアプランは7表で構成されている点が特徴です。

それぞれの表で記載する内容を順番に解説します。

第1表:居宅サービス計画書(1)

出典:居宅サービス計画書標準様式および記載要領|厚生労働省

第1表は、総合的な援助の方針に加え、利用者や家族の意向などを記載します。
アセスメントを通じて利用者や家族から聞き出した情報や課題を具体的に記載しましょう。

「生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果」では、文脈やニュアンスが変わらないよう、会話の内容をそのまま記載することがポイントです。

  第1表の文例

【生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果

利用者「これ以上体力の衰えを防ぎたいし、リハビリも受けたい。家族に迷惑をかけたくないが、できたら家で過ごす時間は残したい。」
長女「無理して施設にする必要はないと思う。ただ仕事もあるのでいつも面倒を見るのは難しい。」

利用者がリハビリテーションを受けること自体は前向き。家族に負担がかからないようしつつ、利用者の生活に影響が出ない方法を模索する。

【総合的な援助の方針】

通所リハビリテーション・デイサービスを活用し、今までの生活を維持しつつ、機能回復や健康維持を目指します。
健康状態に注意しつつ、ご自宅での明るい生活を続けられるようにしましょう。

第2表:居宅サービス計画書(2)

出典:居宅サービス計画書標準様式および記載要領|厚生労働省

第2表は、利用者の生活全般における課題・ニーズをまとめる項目です。
アセスメントで得た情報を基に、優先度が高い課題から記載します。

ただアセスメントで聞き出した内容をまとめるだけでなく、「課題を解決した状態」「課題を解決する目標」まで記載しなければなりません。

記載する際は専門用語や抽象的な表現は避け、わかりやすい内容にしましょう。
また、課題解決のためのサービスを行う頻度・期間も具体的に記載しましょう。

  第2表の文例

【生活全般の解決すべき課題(ニーズ)】

転倒による大腿骨(だいたいこつ)骨折の影響で入浴が難しいが、自分で入浴できる状態になりたい。

【長期目標】

骨折後も自宅で普段どおりに過ごせるようにする。

【短期目標】

介助によって入浴ができるようにする。

【サービス内容】

自宅での入浴介助
立ち上がり・浴室への移動・脱衣・浴槽への移乗までを介助する。

第3表:週間サービス計画表

出典:居宅サービス計画書標準様式および記載要領|厚生労働省

第3表では、第2表で決めた内容を基に1週間の介護サービスを記載します。
利用者が受ける介護サービスや家族から受ける援助に加え、日常的に行っている活動についても記載する点が第3表の特徴です。

さらに週単位以外のサービスも記載しなければなりません。

  第3表の文例

【週単位のスケジュール】

金曜日主な日常生活上の活動
12:00通所介護次男が付き添い昼食・リハビリ・交流
14:00訪問介護家事
16:00お茶・テレビ鑑賞
18:00夕食

【週単位以外のサービス】

週単位以外のサービス定期検診(月2回)

第4表:サービス担当者会議の要点

出典:居宅サービス計画書標準様式および記載要領|厚生労働省

第4表では、サービス担当者会議で話し合われた内容をまとめます。
要点のみをまとめるため、議事録のように詳細まで記載する必要はありません。

会議出席者を記載する際、欠席者がいた場合でも氏名と職種は記載します。
加えて、欠席理由も記載しなければなりませんが、他の書類で確認できる場合は不要です。

また、検討した項目を記載する際は、番号を振って箇条書きにする方法が一般的です。
欠席したサービス担当者がいた際は、あらかじめ項目について意見を伺い、第4表に記載しておきましょう。

ただし、欠席理由と同様に、他の書類で確認できるなら上記の記入は不要です。

  第4表の文例

【検討した項目】

1.トイレに手すりを追加してほしい。

【検討内容】

利用者「歩行に不安があるため、立ち上がりの転倒を防ぐためにトイレの壁に手すりをつけてほしい。」
家族「できれば簡易的に利用できるものが望ましい。」
福祉用具担当者〇〇氏「簡単な工事で装着できる手すりがある。来月分の請求で購入できる。」

カタログで商品を見てもらい、利用者と家族が同意したために購入で対応する。

【結論】

翌週に納品。使用してみたところ、問題なく利用できるとのこと。
来月に介護保険適用で支払う。

【残された課題】

玄関付近・浴室にも手すりを装着できないかを検討。
同型の手すりは装着が難しいため、カタログを見て別のタイプを選別する。

第5表:居宅介護支援経過

出典:居宅サービス計画書標準様式および記載要領|厚生労働省

居宅介護支援経過は、ケアプランを作成する過程を記載する表です。
時系列に沿って、利用者との相談内容や介護サービス事業者との連絡内容などを記載します。

相談・連絡した内容はもちろん、ケアマネージャーの所見や介護サービスの利用状況なども記載しましょう。
記載がわかりづらくなりそうなら、罫線を引いて記録する方法がおすすめです。

なお、第5表は利用者に見せるものではありません。
そのため、利用者本人に知らせてはいけない情報を記載する場合があります。

  第5表の文例

年月日内容
2024/8/31初回電話〇〇さん(利用者)から訪問介護を希望する電話があった。関節リウマチによる腰痛が悪化した影響で、自宅での生活が困難とのこと。夫婦で暮らしているが、夫も老齢のため介護は厳しい。主治医より要介護1の認定を受けている。9月3日に初回訪問の約束をした。
2024/9/3 13:00~初回訪問〇〇さんの自宅へ初回訪問を行う。元気そうだが腰痛の影響により、立ち上がりがつらそうだった。ご主人の××さんも高齢で体力が衰えており、持病の椎間板ヘルニアもあるため、介護は難しいと思われる。次回、××さんにも同席してもらい、アセスメントを行う。
2024/9/5 15:00~アセスメント〇〇さんの自宅にて、××さん立ち合いの元アセスメントを実施。ご夫婦ともに訪問介護の利用については積極的だった。次回は重要事項説明と契約を行う。

第6表:サービス利用票

出典:居宅サービス計画書標準様式および記載要領|厚生労働省

第6表は、週間サービス利用表を基に、利用実績や月間のサービス計画表を記載します。
0時を起点に、介護サービスが提供された時間が早い順に記載しましょう。

第6表では介護サービスを提供した事業者・事業所についても記載しますが、法人名では事業所を記載します。
また、福祉用具の提供があった際は、提供時間帯を記載する必要はありません。

第7表:サービス利用票別表

出典:居宅サービス計画書標準様式および記載要領|厚生労働省

第7表では、第6表の内容を基に、支給限度管理の対象となるすべての介護サービスの単位数と費用を記載します。
もし支給限度を超えていた際は、利用者の意向を踏まえつつ、各事業所と連絡・調整することで単位の割り振りを決定します。

第7票は利用者にとって利用明細のような意味を持つ表です。
給付管理で参照する書類であるため、間違いがないように注意しましょう。

なお、第6表と第7表はいずれも介護保険の対象となる介護サービスのみを記載するものです。
そのため、介護保険対象外のサービスについては記載する必要がありません。

ただし、利用者が費用負担の全体像や、介護サービスを担当する事業者・事業所を把握する際は、介護保険の対象外でも記載することがおすすめです。
給付管理の対象と混同しないように第2表・第3表に記載しましょう。

ケアプラン作成の5つのポイント

ケアプランを作成する際のポイントは、以下のとおりです。

  • 自立支援を念頭に置く
  • 丁寧にアセスメントする
  • 利用者や家族の意向を反映させる
  • 定期的に見直す
  • ケアの頻度やタイミングは慎重に設定する

上記のポイントを意識するだけでも、より良いケアプランを作成できる可能性が高まります。
ぜひ、作成する際の参考にしてください。

自立支援を念頭に置く

ケアプランを作成する最大の目的は利用者の自立支援です。
できないことばかりを記載したり、やる気を削ぐような文言をケアプランに記載したりすると、利用者の自立を阻害する恐れがあります。

そのため、ケアプランを作成する際は、利用者や家族のニーズを聞き出すだけでなく、自立したい気持ちに寄り添いましょう。

丁寧にアセスメントする

利用者や家族の意向をチェックするうえでも、アセスメントは丁寧に行いましょう。
利用者や家族と入念にコミュニケーションを行い、信頼関係を構築すれば、より良いケアプランを作成できます。

介護保険制度や介護サービスの内容に齟齬がないようにすることも重要です。
利用者や家族が適切に理解していなければ、トラブルの原因になりかねません。

また、ケアマネージャーの介護サービスへの理解度によっても、アセスメントの精度は変動します。
理解度によってアセスメントの精度が落ちないように、介護サービス事業者の助言を得るなど、工夫をこらしましょう。

利用者や家族の意向を反映させる

より良いケアプランを作成するには、利用者や家族の意向を反映させなければなりません。

利用者や家族の意向が適切に反映されていないケアプランでは、成果があがらないうえに、不信感を招く恐れがあります。
そのため、アセスメントの過程で利用者や家族の課題やニーズを明確にし、ケアプランに適切に反映するように心がけましょう。

定期的に見直す

ケアプランは交付がゴールではありません。
一定期間ごとにモニタリングを行い、利用者の状態や介護サービスの提供状況をチェックし、必要があれば内容を見直す必要があります。

モニタリングを行う際は、利用者や家族から「介護サービスで課題が解決できているか」「介護サービスが適切に提供されているか」などを確認しましょう。
また、介護サービス事業者にも定期的に連絡を取り、適切にサービスが提供されているかチェックすることも重要です。

なお、利用者や家族がケアプランに満足していても、より良い介護サービスを提供できる余地があるなら積極的に見直しましょう。

ケアマネージャーの業務において、ケアプランの見直しは珍しくありません。
利用者がより良いサービスを受けられるように、徹底してケアプランをブラッシュアップしましょう。

ケアの頻度やタイミングは慎重に設定する

ケアプランに記載するケアの頻度やタイミングは、慎重に設定しましょう。
利用者の事情を反映せずにケアの頻度やタイミングを設定すると、生活に悪影響を及ぼすリスクがあります。

特に認知症を患っていたり、持病の治療を受けていたりする利用者だと、ケアを受ける際に介護スタッフのフォローが必要な場合があります。
ケアの頻度やタイミングは、介護サービス事業者と入念に打ち合わせるだけでなく、利用者本人の事情も踏まえて検討しましょう。

伊谷 俊宜氏
伊谷 俊宜氏

ケアマネが作るケアプランによって、その利用者の未来に大きな影響を与えるという意味でも慎重に作成する必要があり、非常に重要なものであることがわかります。一方でケアマネが陥りがちなのが、『見栄えの良いプラン』ではあるが、実際には利用者の生活が改善されていない(悪化している)状況です。誤解を恐れずにお伝えすると、前述のようなプランよりも、言葉が拙く見栄えのしないケアプランでも、その内容によって利用者のQOLが向上しているとしたら、そうしたプランの方がよほど有益でしょう。公的な帳票であるためどうしても運営指導対策も考える必要はありますが、そこに囚われすぎてしまうと本来のケアプランの目的を失いかねません。ICT等活用し業務効率を徹底的に向上させつつ、利用者を元気にするケアプランを作成していきましょう。

文例を参考に理想的なケアプランを作成しよう

ケアプランは利用者にとって、提供される介護保険サービスの内容や料金を把握するうえで不可欠な書類です。

また、適切に介護保険サービスを提供するために必要な情報が記載されているため、介護サービス事業者にとっても重要です。
ケアプランは全部で7つの表で構成されており、それぞれ記載するポイントが異なります。実際に作成する際は、文例を参考にし、必要な情報を漏れなく記載しましょう。

なお、ケアプランは作成がゴールではありません。
利用者がより良い介護サービスを受けられるように、何度も作り直すこともあります。

利用者や家族の意向を適切に取り入れるためにも、丁寧にアセスメントを行い、理想的なケアプランを作成しましょう。

監修:伊谷 俊宜

介護経営コンサルタント

千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。

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